「チャットボット=全自動化」ではない! 企業もユーザーも幸せになるチャットボットの活用方法とは?

2017/01/18

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チャットボットの現状と活用方法を解説するセミナーが2016年11月30日に開催されました。本記事では同セミナーのレポートを前編と後編に分けてお届けします。まず前編は、チャットサポートサービス「hitobo」を提供するアディッシュ株式会社の池谷氏による講演「チャットボットサービス設計のコツ」をご紹介します。
※後編はこちら

    ■目次

  • プロフィール
  • ユーザーと企業、双方に大きなメリットあり? チャット導入のメリット・デメリット
  • チャットボットは何ができるの? その可能性と技術レベルの限界地点
  • チャットボットを機能させる「Bot主導型コミュニケーション」
  • 丁寧なコミュニケーション設計が大事。気負わずできる部分から取り入れよう

プロフィール

池谷 昌大氏:アディッシュ株式会社 取締役

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ユーザーと企業、双方に大きなメリットあり? チャット導入のメリット・デメリット

すでにチャットを取り入れている企業事例

池谷氏(以下敬称略):みなさんも感じているとは思いますが、チャット形式のコミュニケーションはすでに多くの企業で取り入れられています。たとえば本日ご登壇いただくペコッターさん(※後編のレポートでご紹介)はチャットベースのサービスです。

ほかにもLOHACOでは「マナミさん」というチャットボットが問い合わせに対応していたり、Facebook Messengerで物件を紹介してくれるBot「ヘヤジイ」というサービスがあったり、かなり色々な場面で使われるようになってきています。

特にLINEをプラットフォームとして、チャットボットがたくさんでてきている状況もあります。リクルートのパン田一郎ローソンのLINEアカウントが代表的な事例です。実務的な活用方法ですと、ヤマト運輸日本郵便が配送状況の確認や再配達依頼をLINEのチャットでできるようにしています。

メディアとしてのチャットのメリット・デメリット

池谷:チャットを取り入れることは、ユーザーと企業双方に大きなメリットがあります。

まずユーザー側のメリットですが、チャットのインターフェースに慣れているので簡単、気軽に使えるということ、返信が早いぶん用事が早く済むことなどが挙げられます。

企業側のメリットとしては、ユーザーの質問や問い合せに迅速に対応できるのでユーザーの満足が向上しやすいというのが一番大きいでしょう。それ以外にも顧客対応の効率化や、個別データの蓄積、繋がりの維持などがメリットとしてあります。

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問い合わせ窓口としてのチャットのメリット・デメリット

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池谷:次に電話、メールと比較した場合のチャット窓口について考えてみましょう。

チャット窓口は電話とメールの中間に属するような窓口です。電話と違い、複数ユーザーに同時に対応できるという長所がある一方で、メールと違ってリアルタイムな対応が求められます。迅速に対応するのに、文字だけで感情面まで読み取る必要があるので、スキルのあるスタッフが必要です。

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ただしチャットの短所の部分は、チャットボットで補完できる場合もあります。Botを使えば時間に縛られず同時に対応でき、24時間対応も可能です。スタッフを置くリソースも節約できます。

チャットボットは何ができるの? その可能性と技術レベルの限界地点

池谷:次に気になるのは「チャットボットで何ができるの?」という部分ですよね。

チャットボットを使ってチャット対応を自動化する際、以下の2つの方法のどちらか、もしくは両方が使われます。

  1. 機械学習
  2. ルールベース

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実際、ビジネス用のチャットボットのほとんどは、「ルールベース」で作られています。

チャットボットに対して「機械学習で勝手に賢くなる、自動化できる」というイメージを持っている方は多いですが、「ユーザーの必要とする回答をうまく行うために、何をどう学べばよいか」までを自動化するのはまだまだ当分の間は難しい部分があります。

注目すべきは「ルール化できる部分にはいくらでも対応できる」という点。この能力を活かすのが、現時点におけるチャットボットの事業活用の肝になります。

チャットボットを機能させる「Bot主導型コミュニケーション」

自社のプロセスの中でBot化できる部分を探すことが重要

池谷:意外とできることが少ないように感じられるかもしれませんが、有人対応を組み合わせることでBot化の範囲を増やすことができます。Bot対応できない部分を人が対応すると、対話ログを溜めやすい。そのログをもとにルールを作れるので、電話やメール窓口よりも顧客とのやり取りの蓄積を効率化のための改善へと繋げやすくなります。

機械学習がむずかしいならやめよう、全てを自動化できないならやめよう、と判断するのではなく、「チャットボットで対応しやすい領域」、「改善を繰り返すことで事業へのインパクトが大きい領域」、かつ「ユーザーがチャット対応を期待している領域」が重なる部分を見つけ出して取り入れていくのが重要です。

ユーザーの期待内容を調整しBot対応の満足度を高める

池谷:ではチャットボットを最大限機能させるためにはどうしたらいいのでしょうか?

その答えが「Bot主導型コミュニケーション」です。(チャット画面内の)ボタンや機能紹介によって対応範囲を明示的にすることで、ユーザーの期待内容を調整でき、Botのコミュニケーションをより心地よく感じてもらえます。

ボタンであれば事前にルール作りができるので、的確な対応がしやすくなります。ほかにも、「こちらはサポート窓口です。何でも聞いてくださいね」ではなく「こちらは●●商品の選び方のコツをお伝えします。以下の主な質問を選んでみてくださいね」というように、こちらからの呼びかけの時点で絞り込むというのもポイントになります。

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このように、コミュニケーションをBotが先導することで、ユーザーのストレスも少なく、企業側がチャット窓口での解決を提供したい内容へも誘導しやすくできるということです。

丁寧なコミュニケーション設計が大事。気負わずできる部分から取り入れよう

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池谷:最後にまとめとして、チャットとの向き合い方について2つのポイントを伝えたいと思います。

まず、チャットの導入という部分について。チャットやチャットボットに対して過度に期待するのも、ネガティブの捉えすぎるのもダメだと思います。Botは魔法のツールではないことを理解し、チャットボットの強い面を思い切り生かせる活用シーンを考えるのが重要です。

次にチャットの活用という部分について。ユーザーの満足は、技術的に何ができるかよりも、心地よいコミュニケーション設計にかかっています。有人対応と自動化を組み合わせて継続的に発展させていく姿勢で取り組んでいただければと思います。