ソーシャルメディアラボ初代編集長・井出一誠に聞く、起ち上げの理由とこれからのメディアのあり方

2015/07/09

■【特別編集】初代編集長・井出に、2代目編集長・末広がインタビュー!

少し長くなりますが、当ブログについて話をさせてください。

ガイアックス ソーシャルメディアラボがスタートしたのは2010年8月。もうかれこれ5年近く運用していることになります。Facebookが日本にやってきたのが2008年5月。実名制のSNSが日本で流行るのか懐疑的だったムードも薄れ、浸透し始めた頃ですね。それに沿うように、本来のコミュニケーションツールとしてだけでなく、企業がマーケティングに活用できないか模索し始めた時期でもあります。

ご存じない読者もいらっしゃるかと思いますのでご紹介しておくと、当ブログをガイアックスにてリリースしたのは、現在株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)でキュレーションプラットフォーム拡大構想『DeNAパレット』に参画している旅行キュレーションプラットフォーム『Find Travel』運営者の井出一誠さんです。ソーシャルメディアの流行に先見の明があった井出さんが起こしたソーシャルメディアラボは、BtoB向けのソーシャルメディア専門ブログとして確固たる地位を築きました。

井出さんの後を継いだ末広が2013年4月から2代目編集長の座につき、その後もソーシャルメディアラボはPVを伸ばし続けることができました。しかしその末広も、本記事をもって引退することとなります。

3代目編集長も決まっており、ラボは今後も続いていきますが、今回は一旦の節目を記念して、初代編集長・井出さんに2代目編集長・末広が行なったインタビューを公開させていただきました。現在は大きなプラットフォームの構築に携わっている井出さんが、当時どんな思いでソーシャルメディアラボを起こしたのか。そして現在のソーシャルメディアをどう見ているのかなど、詳しく聞かせていただきました!

(執筆・編集:渕上・末広)

    ■目次

  1. 初代編集長・井出さんに聞く、ソーシャルメディアラボを起ち上げたきっかけ
  2. ソーシャルメディアからスタートアップ支援、そして旅行へとメディアのテーマをいった理由
  3. キュレーションプラットフォームに参画した井出のメディア論
  4. Find travelに学ぶライティングテクニック
  5. ソーシャルメディアの可能性を見出した井出さんは、今のソーシャルメディアをどいる
  6. 最後に:もしあのままソーシャルメディアラボを続けていたら・・・?

初代編集長・井出さんに聞く、ソーシャルメディアラボを起ち上げたきっかけ


2代目編集長・末広:

本日はよろしくお願いします。まずはさっそくですが、あらためてソーシャルメディアラボを起ち上げようと思ったきっかけを教えていただけますか?


初代編集長・井出:

僕がソーシャルメディアラボを起ち上げたのは2010年の8月頃だったと思いますが、当時はソーシャルメディアを使ったビジネスの流れが来はじめていたと記憶しています。IT企業であるガイアックスを成長させるためには、このトレンドを追いかける必要があるなと思ったのがきっかけですね。

いろんなソーシャルメディアがありますが、当時最も話題を呼んでいたのはFacebookでした。なので起ち上げ当初はFacebookの記事を多く作っていました。ソーシャルメディアの隆盛を見て、最も時代にマッチしているものを取り上げるようにしていました。

ソーシャルメディアラボの目的は、ガイアックス自体のブランディングとプレゼンスの向上です。メディア自体で売上を稼ぐことは考えていなかったので、いかに問い合わせを頂けるような記事を書いて間接的に売上につなげるかが重要でしたね。

あと、どうせメディアをつくるなら第一想起を獲得したいと考えていました。つまり、ソーシャルメディアというテーマならラボブログを見ればわかる、ここで相談すれば解決する、ということが認識されている状態ですね。クライアントから「よくブログ見ていますよ」と言ってもらえるようになれば、PVがどうとかではなく、価値があると考えていいのではないでしょうか。

なのでソーシャルメディアラボは半分は問い合わせを頂くこと、もう半分はガイアックスのメディアとしてのブランディングですね。といってもブランディングは肌感でしかありませんが。

ソーシャルメディアからスタートアップ支援、そして旅行へとメディアのテーマを変えていった理由


末広:

なるほど。想起率という意味で言えば、「ソーシャルメディア」というワードで検索した際に上位表示されている現状を踏まえると、ある程度ブランディングはできていると言えるかもしれませんね。井出さんはガイアックスを離れた後、Find job Startupを起ち上げられました。その後現在のFind Travelへと進んでいくわけですが、そういった方向に舵を切った理由は何だったのでしょうか?


井出:

いくつか理由はあったのですが、自分でメディアやサービスをやってみたいという気持が強かったことが大きいですね。ソーシャルメディアラボを起ち上げた当初に比べ、ソーシャルメディア活用の盛り上がりも一段落し、そろそろ違うものに携わりたかったというのもあります。メディアを運営していく中でトレンドに合わせた軌道修正が必要になってくると思うのですが、スタートアップ界隈が盛り上がりを見せていたこともありFind job Startupを起ち上げました。


末広:

そうだったのですね。ちなみに初代編集長の井出さんから見て、今のラボはいかがでしょう?良い方向に向かっているでしょうか・・・。アドバイスがあればお願いしたいと思います。


井出:

ソーシャルメディアラボの記事は今でも更新されたらPocketに保存して、いつも勉強させてもらっています。僕が運営していた頃は、やはりFacebookやX(Twitter)などの大きなソーシャルメディアに関することをよく書いていましたが、今はソーシャルメディア全般を幅広く取り扱っているみたいですね。クライアントがソーシャルメディアの何について知りたがっているかにマッチしているのであれば、その方向性でいいんじゃないでしょうか。

でも、例えばガイアックスはInstagramについて詳しいとクライアントに認知されたとしても、今のところはBtoBが難しいソーシャルメディアですからお金の貰いどころがないですよね。大事なのはガイアックスの企業価値を上げられる記事が書けているかどうかでしょう。厳しいようですが、それができない記事は趣味になってしまいますね。


末広:

なろほど・・・仰るとおりだと思います。

キュレーションプラットフォームに参画した井出のメディア論


末広:

ところで、井出さんの運営しているFind TravelがDeNAパレットに参画する形で買収されたことが話題になりましたね。キュレーションプラットフォームと井出さんのメディア思想には、何かマッチするところがあったのでしょうか?


井出:

僕はメディアを運営することに限らず、「生活を便利にすることをやりたい」という根本的な考え方を持っています。ライフスタイルの一部になるような、自分が見るときにすら参考にできるような、生活に根付いたメディアをつくりたいという思いでこれまでやってきました。

Find Travelを起ち上げたのは、自分が旅行したいと思ったときに参考にできるいいメディアが見つからなかったことがきっかけで始めました。PVも伸びて成長していく実感はあったのですが、ひとりひとりのユーザーにとって、数多くあるライフスタイルの内、「旅行」というコンテンツは日常的な接点が少ないんですよね。年に1回しか旅行にいかないユーザーも沢山いますし。

なので、ライフスタイルを横展開できればいいなと考えていたのですが、DeNAパレットというキュレーションプラットフォーム構想は、ライフスタイルメディアが多く顔を揃えていますよね。ファッションや食事、住まいなどの幅広いライフスタイルのひとつとしてFind Travelがあれば、他のメディアからの動線でFind Travelに流れてくるユーザーもいるでしょう。とにかくユーザーとの接点を持つのは難しいので、今回の参画は僕の考え方にマッチしていたんです。

ガイアックスは五反田にオフィスがあると思いますが、五反田周辺の記事もFind Travelにいっぱいあるのでぜひ見てみてください(笑) 

五反田に行ったらぜひ食べてほしい!五反田の美味しいグルメ25選

ガイアックスにいた時には行ってなかったようなランチとか観光スポットがいっぱい掲載されていて、個人的にも行ってみたくなりました。

井出さん流の「メディアの育て方」


末広:

DeNAパレットに参画することで、より多くのユーザーに読んでもらえ、それによって生活が便利になるのであればその方がいいということなんですね。今後ももちろんFind Travelを育てていかなければならないかと思いますが、DeNAに声をかけてもらえるほどのメディアを創りあげた井出さんの「メディアの育て方」について教えていただけますか?持論などがあればお伺いしたいと思います。


井出:

まずは勝ち筋を見つけることですね。それとメディアはユーザーが読んだ後に行動してくれなければダメだと考えています。アクションを促すような良い記事を書くのはもちろんとして、読んでくれるユーザーが「このテーマの記事を読みたい」と思ったときの頭の中を想像できるようになる必要があると思います。もしこの記事を読むとしたらこの順番で知りたいだろう、と予測していかなければならないですね。

僕の中で、「知らないことでもここまでやればトップレベルに行ける!」という肌感覚のようなものがあります。だからもし想像した上でヒットしなかったとしたら、やりこみのレベルが足りないという感覚があります。良いコンテンツをつくれば必ずヒットを生みだせるわけではありませんが、ヒットを生みだすためには良いコンテンツで必要です。

Find travelに学ぶライティングテクニック


末広:

良いコンテンツをつくることは良いメディアであるための必要条件であると思いますが、良いコンテンツにするために、井出さんが普段意識しているライティングテクニックを教えていただけますか?


井出:

抽象的にはなってしまいますが、読んでくれるユーザーの頭の中を論理的に想像することは重要です。先程も言いましたが、読者の頭の中を論理的に想像しながら、「どういう順番で情報を伝えたら一番理解してもらえるか」を意識しています。

ライティングテクニックについてですが、僕は誰かに文章を習ったことはなくて。自己流で文章の書き方は勉強しましたし、他のメディアを見て、どういった文章が好まれているのか、どう書けば記事がバズるのか、読みやすい記事と読みにくい記事の特徴など、独学でかなり調べました。基本的に、世の中には面倒くさがりな人って多いと思うんです。僕もそうなんですが。だから読みにくい文章はダメですね、読んでもらえません。長い文章もあまり好かれないと思います。

ソーシャルメディアに記事を流すときと、メディアに掲載する記事はもちろん書き分けしています。ソーシャルメディアだと、読んだ瞬間にシェアしたいというアクションを誘発するような文章にしなければなりません。メディアの記事よりもシンプルに編集する必要がありますね


末広:

ユーザーの目線で客観的に記事を見る意識は必要ですね。読者の「知りたい順番」というのは僕も常に意識しながら書いています。やっぱり重要ですよね。

ソーシャルメディアの可能性を見出した井出さんは、今のソーシャルメディアをどう見ているか


末広:

それでは最後の質問ですが、ソーシャルメディアラボ初代編集長の井出さんから見て、今後ソーシャルメディアはどうなっていくと考えていますか?また、DeNAパレットに代表されるキュレーションサービスが日本で人気ですが、こういったサービスが普及したこれからの世の中はどうなっていくと思うでしょうか?


井出:

これから『分散型メディア』は増えていくとは思います。FacebookやX(Twitter)などのソーシャルメディアがとてつもない規模のユーザーを抱えている現状で、もうユーザーを自分のメディアだけで囲い込もうとするのだけがメディアのあり方ではない、という話もあります。キュレーションメディアもたくさん有力なものが増えてきましたし、ユーザーは今どこのウェブサイトのどのコンテンツを読んでいるのか意識していないことも多いと思います。

おそらくそういったメディアの収入源はコンテンツ内に広告を内包するネイティブアドだと思いますが、こうしたビジネスモデルであれば分散型メディアの方が効率はいいんじゃないでしょうか。

最後に:もしあのままソーシャルメディアラボを続けていたら・・・?


末広:

分散型メディアは今後メディアを運営していく上での重要なキーワードになってきそうですね。井出さん、本日はインタビューにお応えいただきありがとうございます。今後の活躍を期待しています!

・・・ちなみに、もし井出さんがソーシャルメディアラボを今も運営されていたとしたら、何を書いていたと思いますか!?


井出:

僕はトレンドを予測して方向性を変えているだろうと思うので、今ならソーシャルメディアを活用したマーケティング全般や、toBのクライアント向けにソーシャルメディア以外のことも書いている気がします。重要なのは「ガイアックスの顧客は誰か?その顧客に何を伝えたいか?」なので、それを忠実に追いかけていると思いますよ。


末広:

なるほど、ありがとうございました!


以上、『ソーシャルメディアラボ初代編集長・井出一誠に聞く、起ち上げの理由とこれからのメディアのあり方』でした。

おまけ:末広よりご挨拶

井出さんの後を継いでから約2年と数ヶ月、これまで私の記事をたくさん読んでいただき、本当にありがとうございました。

引き継いだ当初から井出さんの偉大さは身に沁みて感じていたので、とにかく「井出さんが築いてきたものを壊したくない」という一心で、ここまで突っ走ってきました。

取材の中で井出さんも仰っていましたが、私も記事を書くときは、常に読者の皆さんの頭の中を想像することを意識しています。むしろ、それしか意識していないと言えるかもしれません。大げさな言い方になりますが、本気で読者の皆さん一人ひとりのことを想像しながら、「この文章は読んでくれた人全員に伝わるだろうか?」と悩んでいました。

その甲斐あったかどうかはわかりませんが、当ブログはPVも伸ばすことができ、今もたくさんの方にご愛顧いただいているので、井出さんから私に受け継がれたラボの信念の一つとして、この考え方はやっぱり間違ってはいなかったのかな、と今回のインタビューを終えて感じています。

あらためまして、読者の皆様一人ひとりに心からの感謝を申し上げます。

・・・と、なにやらおセンチな感じになっていますが、今回は私が去るだけで、当ブログは今後も良質な記事をバンバン更新し続けてまいりますので、引き続き、『ガイアックスソーシャルメディア ラボ』をどうぞよろしくお願いいたします!

この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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