ウェブ広告の常識を変える「ネイティブ広告」とは?6種類のネイティブ広告解説とステマにならない使い方。
2014/08/11
ネイティブ広告はウェブ広告の救世主となるか?
ネット広告の躍進の裏で、沈む主要4媒体
■まずはこちらの画像をご覧ください。
こちらは毎年電通が発表している「日本の広告費」というデータの一部です(単位は億円)。
2005年~2013年の8年間で、新聞や雑誌はほぼ半分に落ちています。唯一成長を続けているのはネット広告だけですが、既存の媒体と違って広告枠に制限のないネット広告はいくらでも配信することが可能なため、需要と供給のバランスが取れず、製作単価は落ち続けています。
そんな中、これまでのインターネット広告とは違う形の「ネイティブ広告」が、救世主となるべく現れました。インターネットの普及に伴い、広告のありかたに変化が訪れていると考えられますね。そこで今回は、このネイティブ広告とは何なのかについて解説してみようと思います。
■目次
ウェブ広告の常識を変える≪ネイティブ広告≫とは?
1. 広告の常識を変えるネイティブ広告とは?
2. ネイティブ広告の6つの種類
3. ネイティブ広告・6つの評価軸
4. ネイティブ広告の明示性について
5. なぜネイティブ広告が生まれたのか?
6. ネイティブ広告の未来
7. ネイティブ広告に騙されたと感じるか?
1. 広告の常識を変えるネイティブ広告とは?
定義
まず、そもそもネイティブ広告とはどういった広告なのかの定義を説明したいところですが、実は普遍的に合意された定義はまだ存在していません。
そのためハッキリ「こういうものである」と言い切れないのですが、ひとまず現在一般的に解釈されている捉え方を提示しておきます。
ネイティブ広告とは?
「ネイティブ広告」とは、記事と広告を自然に溶け込ませ、ユーザーにストレスを与えず情報を届ける広告のこと。
ネイティブとは「自然」を意味しています。要するに、メディアを閲覧しているユーザーが「これ広告じゃないの?」という違和感を抱かせないように視認させるタイプの広告を、ネイティブ広告と呼ぶと理解してください。
現在ネイティブ広告には、6種類のタイプと6つの評価軸が定められています。次項で具体的に解説していきましょう!
※なお、解説にはこちらのスライドシェアを参考にさせていただきました。
2. ネイティブ広告の6つの種類
インフィード型
もっともポピュラーなタイプのネイティブ広告がこのインフィード型。
通常のメディアとソーシャルメディアに分けて、実例を出してみましょう。
メディア:GIZMODE(ギズモード)
メディア:BuzzFeed(バズフィード)
ソーシャルメディア:Facebook
ソーシャルメディア:X(Twitter)
どのネイティブ広告もメディア内の通常コンテンツと同じ軸に存在し、まるでそのメディアのコンテンツであるかのように配置されているのが特徴です。同じ軸とはいえ「広告」「プロモーション」「PR」などと記載することで、これは広告なんですよとアピールはしていますね。
しかし、モノによっては注意しないと見逃してしまい、コンテンツと間違ってクリックしてしまうこともしばしば。ソーシャルメディアの場合は即商品購入ページに飛ばされたりすることもありますが、遷移先が読み物としてちゃんと作られているものも多く、一概に広告だからといって不快感を持つわけでもなさそうです。
ぺイドサーチ型
これはリスティング広告といった方が伝わりやすいかもしれません。検索結果に連動して自動的に表示されるタイプの広告ですね。
Yahoo!
日常的に検索エンジンを使用する方なら頻繁に目にするんじゃないでしょうか。一見通常の検索結果のように見えますが、小さく「広告」であったり「スポンサード」と記載されていますね。
レコメンドウィジェット型
Outbrain
ブログパーツに埋め込まれる形で配信される形式のネイティブ広告。通常コンテンツのフィードではなく、あくまでウィジェット内にあるのが特徴ですね。とはいえ表示領域としてはフィード内と大差ないので、通常コンテンツと違和感無く並んでいるように見えます。
プロモートリスティング型
食べログ
検索エンジンに表示されるリスティング広告に近い形式のネイティブ広告。サイト内の検索結果に応じてシームレスに表示されるようデザインされています。表示内容もサイト上で提供される商品やサービスと同じような見た目であるため、一見違いはないように見えますね。
ネイティブ要素を持つインアド型(IABスタンダード))
Above the Law
デザインに親和性はなく、サイトコンテンツの内容と親和性が高いのが特徴のネイティブ広告。通常コンテンツとは切り離された広告枠に表示されるため、GoogleAdsenseの表示形式に近いとされています。
カスタム型(その他)
LINE スポンサードスタンプ
上記のどれにも属さず、そのメディア固有もしくはプラットフォームに対する依存度が高いため、グループ分けが困難なものを指します。
上記のLINEスポンサードスタンプの他に、日本上陸間近のSpotifyカスタムプレイリストや、Tumblrがこれに該当すると言われていますが、これらが厳密にネイティブ広告であるかは議論が分かれます。
3. ネイティブ広告・6つの評価軸
さて、ここからは広告主やメディア運営者向けの専門的な内容になります。
広告主は以下の6つのポイントを検討しながら、配信されるネイティブ広告を選択および評価する必要があります。
※あくまで広告主の目的に合っているかどうかを判断するためのフレームワークで、その広告が「ネイティブ広告であるか」どうかを判断するものではありません。
形式
・広告の掲載される形態がメディア本体の記事と同じデザインとなっているか。(デザインの親和性)
機能
・ネイティブ広告は、設置されるページの他の要素と同じように機能するか。(コンテンツ・機能の親和性)
統合
・ネイティブ広告は周りのコンテンツと同じように挙動するか。(リンクをクリックしたときの挙動など)
バイイングとターゲティング
・ネイティブ広告の掲載位置は、特定のページ、セクション、サイトになっているか。
計測指標
・解析はクリック、コンバージョンだけでなく、エンゲージメント(シェア、閲覧時間など)という観点で計測されているか。
明示性
・広告であることが明記されていて、ユーザにわかりやすく伝わるか。
4. ネイティブ広告の明示性について
最も重要なのが「明示性」について。
「広告」とは、いかなるタイプであってもそれが広告であることを明示する必要があり、ユーザーに認識されなければなりません。仮にネイティブ広告が従来のプロモーションメッセージを持たないものであっても、広告であるならば明示が必要です。うわべだけを装った似非ネイティブ広告はステルスマーケティングになりかねません。
ネイティブ広告がステマにならないためには
以前に芸能人が自身のブログでステマ行為をして問題になったことがあります。これは、何らかの企業や組織などから報酬を得ていることを明示せず、一般利用者であることを装ってその企業や組織の製品に高い評価の宣伝をしたことが問題になったわけですが、この場合メディア運営者側はこの行為に関わっていないため責任は問われないでしょう。
しかしネイティブ広告の場合は、広告主やそのメディア自身が広告を製作します。
つまり、「PR」や「広告」と謳わずにネイティブ広告を配信するステマ行為は、自分の首を絞めることに他ならないんですね。それだけに製作には慎重にならざるを得ませんし、自浄作用が働くのがネイティブ広告という媒体なのかもしれません。
5. なぜネイティブ広告が生まれたのか?
コンテンツと広告の線引き
本来「広告」と「記事・情報・コンテンツ」は異なる場所にあり、組織も異なっているというのが基本構造でした。
新聞や雑誌で例えるとわかりやすいかと思いますが、記事コンテンツは出版社が製作していますが、広告は別の会社から依頼されていますよね(自社広告など例外はあります)。
これは本来紙であってもネットであっても関係なく、「広告は広告である」ことが一目でわかる体裁になっているものです。しかしネイティブ広告は、基本的にフィードやコンテンツと同じフォーマットで提供されるため、モノによっては読者が容易に見分けることができなくなってるんですね。
従来の広告のありかたを覆す形の「ネイティブ広告」は、なぜ生まれたのでしょうか?
ネイティブ広告を掲載するメディア、広告を制作する広告主ともに、ネイティブ広告を利用する理由があります。それぞれの立場に立って考えてみましょう。
スマホ時代の広告のありかた・メディア編
みなさんはネットサーフィンをしていて、バナー広告をうっとうしく思いませんか?私は正直ウザいと思っています。
そう、基本的に広告は読者にとってありがたいものではありません。ブラウザやアプリによってはアドブロック機能が用意されており、そもそも広告を表示させないように設定している人も多いんじゃないでしょうか?
メディア存続のために広告収入が必要?
広告を載せる価値があるからそのメディアに広告が掲載されるわけであって、宣伝効果がなければどこもそのメディアに広告を載せようとは思いません。広告収入に頼る以上、より読者に受け入れられる広告手法を取り入れなければ存続できないんですね。ネイティブ広告はそういった意味で頼みの綱となる可能性を秘めています。
※広告収入に一切頼らないメディアとして有名な「ほぼ日刊イトイ新聞」。こちらは存続のために必要な収入をすべて「物販」で賄っている稀有なサイトです。
広告もスマホやタブレットでの閲覧を見据えなければならない
現在はパソコンからではなく、スマートフォンやタブレットから閲覧している人が増えてきています。特にスマートフォンのサイトでは表示画面が小さくなるため、広告を置けるスペースに限界があります。
しかしネイティブ広告は、タイプによっては一般的な広告枠ではなくフィードやタイムライン上に表示されるため、スマホから閲覧する際にも広告効果を発揮しやすいんですね。
広告の種類を選択するに当たり、「何の媒体から見られているか」も重要になってくるでしょう。
スマホ時代の広告のありかた・広告主編
広告を読者がクリックしてくれない、そもそも見てすらいないという状況は、当然ながら広告を制作する側にとっても由々しき問題です。広告主が販売しているブランドや商品をすでに知っている人は、検索エンジンを利用したリスティング広告や自社サイトを訪問してくれた人に対するリターゲッティング広告が、販促の役目を担ってくれます。
しかし、ブランドや商品を「知らない」段階の人を振り向かせることはできません。知ってもらうために、興味を持ってもらうために広告を配信しているわけですから。それを見てもらえていないというのは致命的なわけですね。
そこで有用なのが「ネイティブ広告」。記事コンテンツに限りなく近い形で配信されるネイティブ広告は、自社の製品やブランドを知ってもらうために読者がスムーズに入り込める可能性を残しているでしょう。
6. ネイティブ広告の未来
よりネイティブ(自然)な広告となるには
もはや広告主や企業・メディアが、一方的に押し付けるように伝える手法の広告は機能しなくなってきています。少しの手間と情報リテラシーがあれば、読者は自分で有用な情報やコンテンツ・ブランドについて集めることができますし、無理に画面に表示させるだけのウェブ広告は誰も見ていません。何ならアドブロックされます。
それが加速するこれからの時代、「読者にとって有益な記事広告を企業や広告主・メディア側がつくる」というコンテンツマーケティングが非常に重要になってくることが考えられます。
※コンテンツマーケティングについては、こちらのスライドシェアがわかりやすくてオススメです。
7. ネイティブ広告に騙されたと感じるか?
最後に、ネイティブ広告に関して興味深い調査結果がありますのでご紹介します。
ジャストシステムによるスマホ広告印象調査
これはスマートフォンを普段利用している10~60歳代の男女1297人に対し、理想的な広告のサイズや「ネイティブ広告」などの広告手法について聞いたものです。65.5%(849人)の人がネイティブ広告そのものを知らないという結果がすべてを物語っていますね。まだ定義すら決まっていない広告概念だけに、致し方ない面はありますが。
ユーザーがネイティブに接することのできる広告づくりへ
さらに、ネイティブ広告をクリックしたことのある448人に対して「騙された気分になるか」を聞いた結果、46.9%が「あてはまる」、30.4%が「ややあてはまる」と回答したそうです。つまり合計77.3%がネイティブ広告に関して否定的な印象をもっていることがわかります。
広告主やメディア側が助け舟のようにすがりつくネイティブ広告は、一転ユーザー側の大多数が騙された気分になっているという現状があります。コンテンツと従来の広告の境目をなくした「ネイティブ広告」が今後根付いていくには、ユーザー心理に基づく広告記事を制作しなければならないでしょう。
「読者にとって有益な記事広告を企業や広告主・メディア側がつくる」というコンテンツマーケティングを重視し、いかにユーザー目線に立てるかが、今後ネイティブ広告が受け入れられるかどうかの判断軸になるのではないでしょうか。
(執筆/渕上 聖也)
以上、『ウェブ広告の常識を変える「ネイティブ広告」とは?6種類のネイティブ広告解説とステマにならない使い方』でした。
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この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部