インバウンド関係者必見! 中国第2位のSNS「WeChat」を徹底解剖
2015/09/25
先日、大丸松坂屋が導入したことで話題になっている中国最大のSNS「WeChat」。しかし、「名前は聞いたことあるけど活用方法かわからない……」という方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな方でもWeChatがある程度わかるよう、1からご紹介していきます。
■WeChatとは
WeChatとは、中国でユーザー数が2番目に多いメッセージングアプリです。
2011年11月に中国最大の通信ソフト開発会社Tencent(騰訊)が提供を始めたもので、中国名を「微信(ウェイシン)」といいます。
中国国内で利用者数が1番多いSNSアプリは、同社の開発したQQであり、利用者数はほぼ同率になっています。このQQを改善した形で開発されたのがWeChatになります。
Tencentの発表によると現在の登録ユーザー数は11億人、月間アクティブユーザーが6億人と、メッセージアプリ市場ではFacebook Messenger、WhatsApp、そしてほぼ同率の同社アプリQQに次いで世界第4位の規模となっています(2015年8月)。
これほどユーザー数の多いメッセージングアプリですが、日本での使用率はまだ6%と、あまり普及していません。
■ユーザー分析
WeChatを運営するTencentのレポートでは、詳しいユーザー分析が公開されています。
まず、男女比ですが、男性が64.3%で女性が35.7%と、女性に比べ男性が2倍弱多くなっています。
次にユーザーの年齢分布です。
年齢層別では18〜25歳の割合が1番多く、45.4%を占めています。次に多いのは26〜35歳までで、こちらは40.8%を占めており、この2つの層で全体の86.2%と大半を占めていることがわかります。その次に多い層は36〜50歳ですが、その割合は10%に満たない9.5%に留まっています。
続いては職業分布です。
会社員が31.9%と3分の1弱を占めて一番多い割合になっており、個人もしくはフリーランスが28.2%、学生が18.7%、事業団体(先生、医者など)の職員が10.4%と続いています。
最後に、ユーザーは1日に何回WeChatを利用するかがまとめてあります。
1番多いのは5〜10回で20.9%を占めており、5回以下が17.4%、10〜20回が17.0%、50回以上が16.5%、20〜30回が11.3%となります。
1日に10回以上使用する人が55.2%と過半数であることと、毎日使うわけではないというのが6.5%しかいないということから、アクティブユーザー率の高さがうかがえます。
■WeChatの機能
無料通話やビデオ通話、音声メッセージや写真送付などメッセージングアプリとしては、コミュニケーションアプリであるLINEと近しい機能が搭載されています。
LINEにない機能としては、「ライブチャット」という複数人で同時にビデオ通話する機能、「モーメンツ」というFacebookのように自分と友達の投稿が表示される機能があります。
またWeChatには、友人の中で近くにいる人と離れている距離を検索できる「近くにいる人」の機能が搭載されています。
■企業アカウント
WeChatにおいて日本企業が利用することのできるサービスは、「公式アカウントの作成」「WeChat Payment」「広告配信」の3つがあります。
1、公式アカウントの作成
WeChatでは、企業の公式アカウントを無料で作ることができます。公式アカウントに登録するとメッセージなどを送信することができ、またモーメンツへの投稿も可能になります。
2、WeChat Payment
WeChat Paymentとは、WeChatの利用者向けに提供されている決済サービスです。基本的には訪日中国人が日本で買い物をした際に利用できる決済方法と想定されて導入されました。
顧客は店頭での決済時にスマートフォンのWeChatアプリを立ち上げ、アプリ内でQRコードを表示します。店舗側の操作は、あらかじめ決済用アプリの入ったiPadのカメラ機能でQRコードを読み取り、支払いを確定するだけでよく、QRコードの表示から支払いまでは数秒で完了します。
また決済後に企業の公式アカウントをフォローするよう促すこともできるため、利用客が帰国した後も店舗情報やクーポンを配信して再来店に繋げることもできます。
これは、2015年7月10日、WeChatが日本市場へ参戦する際に本格的に導入すると発表されたシステムであり、7月時点では、ジュエリーを製造販売しているサダマツのドゥミエール ビジュソフィア イオンモール沖縄ライカム店、コロワイドMDが運営する居酒屋・甘太郎 新宿歌舞伎町店への試験導入が決まっており、また大丸6店舗と松坂屋2店舗への導入も決定しています。
日本での展開にあたってはネットスターズが代理店となり、同社子会社のウィ・ジャパンが導入店舗へのO2Oサービスを推進する予定です。
3、広告
広告商品WeChat Momentsの一般広告主向け販売が開始し、広告サービスページが開設され、企業はモーメンツ上で広告を配信することができます。
現在は中国企業の他にも、コカ・コーラ社やKFCコーポレーションなどのグローバル企業も登録しています。
■公式アカウント作成方法
公式アカウントは無料で作成することができますが、300元(約5300円)でテンセント社から公式承認を受けることができます。これは、偽アカウントを防止するためにつくられた制度です。そのため、無料申請時よりも求められる情報と資料は多くなります。
無料アカウントの作成に必要な書類は以下の通りです。
・企業基本情報(名称、住所、郵便番号など)
・営業許可証基本情報(許可番号、設立日時、経営範囲など)
・営業許可書のスキャンデータ
・組織番号(法人設立時に交付)
・管理者の基本情報(氏名、電話番号、身分証明書番号など)
・管理者の身分証明書スキャンデータ
・管理者への運営委託書(所定のフォーマットで会社の捺印が必要)スキャンデータ
※企業情報や営業許可などの情報は中国現地法人でないと申請できません公式アカウントの種類
また、公式アカウントには「服務号(fuwuhao)」と「訂閲号(dingyuehao)」の2種類があります。
二者択一になっており、公式アカウント申請の際に必ずどちらか選ばなければなりません。一度選んだら途中変更不可なので両者の違いをきちんと理解したうえで選択する必要があります。
1、服務号(サービスアカウント)
「服務」は直訳すると「サービス」。顧客ロイヤリティの向上、VIP顧客の囲い込みなど、主にCRMを目的として利用されています。
既に数百万人の会員を抱える銀行や航空会社での利用が多く、条件を満たせば決済機能も使えることから大手小売企業での活用例もみられます。
▼機能
①1か月に4通フォロワー向けてメッセージ送信可能
②フォロワーのチャットリストに通常の友人と並列でアイコン表示される(訂閲号より目立つ)
③デフォルトで自定義菜単(常設コンテンツメニュー)が使える
④公式承認が下りた場合、財付通(テンセントの決済サービス)が使用できる
2、訂閲号(サブスクリプションアカウント)
「訂閲」は直訳すると定期購読。つまり、定期配信されるメルマガのようなもので、フォロワー向けに定期コンテンツを配信する自社メディアとして利用されています。
一方的な情報発信にならないように、フォロワーにとって有益なコンテンツを作成し続けるのがマーケティング上の鍵と言えるでしょう。
▼機能
1日1通フォロワー向けてメッセージ送信可能
フォロワーのチャットリスト内の訂閲号フォルダ内に他の訂閲号アカウントと並列表示される(服務号より1階層深い)
① 公式承認が下りた場合、自定義菜単(常設コンテンツメニュー)が使える
②「常設コンテンツメニュー」は下記の赤枠部分で、配信メッセージとは別に自社アカウント画面下部に設置できます。
こちらはAPIが公開されており、常設コンテンツメニューをカスタマイズして各社個性を出しやすくなっています。
■活用例
実際にサービスアカウントやサブサブスクリプションアカウントにて、どういった企業活用がなされているのか紹介していきます。
▼サブスクリプションアカウント(聚美優品/化粧品のサンプリングメディア)
定期的に新商品お試し情報を告知し、アンケートに答え、自分の友人にシェアしたら商品がもらえるという仕組みになっています。
メディアとして新商品情報の告知と同時に、商品情報の拡散、口コミ情報の拡散によってフォロワーを増やすことに成功しました。
▼サービスアカウント(維也納ホテル/広東省のホテルチェーン)
GPSを用い、付近のホテルを検索、空室情報を検索できます。APIを利用し、自社サイトの予約機能とWechatを連携させているので、予約から決済までをWeChat上で完結できます。
▼サービスアカウント(小米手機/携帯メーカー)
テンセントの決済サービス「財付通」と連携しており、WeChat上で予約・購入が可能になっています。
昨年11月には1台1,999元の小米(シャオミ)3(※携帯電話)をWeChatのみで15万台限定販売しました。具体的な内容としては、予約者には5元のクーポン、抽選で毎日5台小米3をプレゼントなどのキャンペーンを打った結果、見事15万台を数日で売り切ることに成功しました。
■最後に
日本であまり浸透していないため、あまり馴染みのないメッセージサービスWeChatですが、決済システムを日本へ本格導入するなど、日本の対中国インバウンド市場へ本格的に参入してきています。
外貨を稼ぐ日本企業が増える中、同アプリがどのように活用されるのか、要注目です。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部