キーワードは「自己実現」!ソーシャルメディアを活用して『マーケティング4.0』を成功させた企業事例
2015/06/08
ソーシャルメディアは元々コミュニケーションツールとして生まれましたが、今では企業も、コミュニティを築いた上でプロモーションに活用するのが当たり前になりました。つまり、ソーシャルメディアを使ったマーケティングについても考えていかなければなりません。
昨年2014年9月、日本で開催されたマーケティングのイベント『ワールドマーケティングサミットジャパン』にて、マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラー教授が新しいマーケティングの概念【マーケティング4.0】を提唱されたのはご存知でしょうか?
マーケティング4.0とは「自己実現(self actualization)」を意味するそうですが、実はこの概念が提唱される前から、ソーシャルメディアを使ってマーケティング4.0を実践している企業が存在するのです!
概念的な話となると難しく考えがちですが、本記事で紹介する企業の実例を見れば「ああ、そういうことか!」と納得できると思います。いずれ日本でも導入せざるをえないこの概念、今のうちに学んでおきましょう!
■目次
1.マーケティング4.0とは?
2.マーケティング4.0をすでに実践している企業事例
3.自己実現を訴求しやすい業態
マーケティング4.0とは?
具体的な事例を出す前に、マーケティングの概念がどのように進化し、現在はどうなっているかを解説しておきたいと思います。「そんな知ってるよ!という方は次の項目へスキップしてくださいね。
マーケティング1.0・・・製品中心
モノをつくる側、売る側による製品中心志向。いかに良いモノをつくるかが重要だった時代(戦前・戦後)に普及したマーケティング手法で、機能的な価値がどれほど優れているかが問われました。
マーケティング2.0・・・消費者志向
マーケティングの概念は、つくる側から消費者側へと移ります。大体1970年以降、消費者にとって必要なモノはある程度すでに手にしている状態であったことから、いかに消費者の心を満足させるかがマーケティングには必要でした。モノにはこれまでの機能的価値に加え、感情的な価値が必要となります。
マーケティング3.0・・・価値主導
今現在、日本はこの段階にいます。製品→消費者と進んできたマーケティングの対象は、価値主導へと変化します。そのモノの性能がどうかよりも、どういったマインド・ビジョンでモノがつくられたのか、どういった社会貢献ができるのかを問われることになるのですね。
マーケティング4.0・・・自己実現
そのモノやサービスを利用した結果、どのような自分になれるのかを提案しなければなりません。例えばダイエット商品を売り出すにあたり、マーケティング3.0で必要なのは「理想の体型に近づける」という効果のアピールです。
しかしこれからは、理想の体型に近づいた結果、何を実現できるのかまで提案していく必要があるのです。ダイエットの例で言うならば、「その結果、周囲の人たちから憧れの眼差しで見られたり、自分に自信が持てることで能動的な自分になれる」といったところでしょうか。
この概念のポイントは、理想の体型に近づくために必要なのは、必ずしもそのダイエット商材でなくてもいいというところです。もし顧客がそのダイエット商材に興味がなかったとしても、「周囲の人たちから憧れの眼差しで見られたり、自分に自信が持てることで能動的な自分になれる」という目的のためなら、企業は運動訴求をするとか、精神面から自分に自信を持たせるなど別のアプローチが可能になりますよね。
ここまで意識を深めることで、企業は本当に強いモノやサービスを生み出していくことができるのだと考えられます。
なお、これはマズローの欲求5段階説で言うところの最上段「自己実現欲求」を満たすことと同意です。
マーケティング4.0をすでに実践している企業事例
マーケティングの概念がどのように進化してきたか、ご理解いただけたかと思います。
それでは最新のマーケティング4.0を、コトラーが提唱する前から実践していた企業事例をご紹介していきましょう。先進的な概念を日本企業が導入するまではタイムラグがあるもので、やはり海外企業の事例が多くなってしまいますが、それぞれの考え方には学べるところが少なからずあるかと思います。ぜひ取り入れてみてください!
NIKE
ソーシャルメディア黎明期より積極的に活用を試みてきたスポーツブランドのナイキ。
例えば『JUST DO IT.SHOTキャンペーン』では、自分が頑張って取り組んだり挑戦した瞬間を切り取った写真に「JUST DO IT.スタンプ」を押して、FacebookやX(Twitter)に拡散することができました。そして共有・投稿された写真の一部はナイキジャパン公式の「JUST DO IT.ムービー」に採用されるという、ユーザーを巻き込んだコンテンツとなったのですね。
他にも『Nike+ Running』というアプリでは、自分のランについてのアクティビティをソーシャルメディアなどで共有することができます。これはナイキというブランドに自己実現の価値があるからこそ、広く利用されていると考えられないでしょうか。
ナイキは世界のトップアスリートたちに自社の製品を使ってもらうことで、顧客に「ナイキ製品は名だたるアスリートが使う素晴らしいモノなんだ!」という価値観を抱かせます。ナイキの製品を使うことで「自分はあのアスリートのようにカッコよくて強い人間に近づけるんだ」という自己実現に貢献することになるんですね。
これはまさにマーケティング4.0の手法ではないでしょうか。
レッドブル
「レッドブル、翼をさずける」というキャッチコピーはあまりにも有名です。レッドブルはいわゆるエナジードリンクですが、決して喉の渇きを潤すためのものではありません。理想の自分になるための飲み物なんですね。
レッドブルはFacebookやX(Twitter)、Google+、Instagram、YouTube、Pinterestと様々なソーシャルメディアを使いながらも、積極的にレッドブルという商品の宣伝を行ないません。アスリートを使ったハイセンスな動画制作や、ゲーム・音楽といったイベントのサポートを務め、商品となるレッドブルはそれぞれのコンテンツのオマケ程度にしか使わないのですね。
例えば以下の動画にレッドブルはどれだけ登場しているでしょうか?
あの缶体はほとんど登場していないにも関わらず、レッドブルの印象は強く残ります。優れたテクニックやパフォーマンスを魅せるアーティストやアスリートをサポートすることで、そのイメージとレッドブルが結びつき、いつしかレッドブルを飲むことが自身のあるべき姿になっていくのでしょう。
何かと製品そのものをプロモーションしがちなソーシャルメディアですが、レッドブルの迂遠なブランディングは宣伝を嫌うソーシャルメディアユーザーと親和性が高いのかもしれませんね。
スノーピーク
スノーピークがつくるアウトドア製品の質の高さには定評がありますが、顧客には「スノーピーク製品でなければイヤだ」というほど熱狂的なファンが多いことでも有名です。スノーピーク製品を愛する顧客は、自分たちのことをスノーピーカーと称します。愛してやまないがゆえにそう名乗るわけですが、これはもはや「製品が好きだから」というレベルの話ではなく、スノーピーク製品を使っている自分が理想の姿であるからとか考えるべきでしょう。
Facebookでも投稿に入ったクレームやコメントにひとつひとつ対応したり、投稿者の名前を呼んだりと積極的なコミュニケーションが垣間見られます。ユーザーに愛されていることがよくわかりますね。
自己実現を訴求しやすい業態
自己実現が問われるとなると、これまでのマーケティング概念のようなモノ主体ではなかなか宣伝しにくかったコンプレックス系の商材はイメージ訴求がしやすくなると考えられます。
最初の方で紹介したダイエットの事例もそうですが、「◯◯を使った結果、実現する理想の自分」を謳うのにコンプレックス解消は持ってこいと言えるかもしれません。同様にフィットネスや転職・結婚などもイメージを想起させやすいですね。
コンプレックス産業とソーシャルメディアはあまり相性が良くなかっただけに、マーケティング4.0が普及することで新たな販路が開拓できるようになるかもしれません。「自己実現」というテーマで自社商品は何をうったえかけることができるか。一度考えてみてはいかがでしょうか。
以上、『キーワードは「自己実現」!ソーシャルメディアを活用して『マーケティング4.0』を成功させた企業事例』でした。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部