はたして本当にSNSでブランディングはできるのか?
2016/05/10
NTTコム リサーチが行った「第7回 企業におけるソーシャルメディア活用」に関する調査結果によると、X(Twitter)・Facebookともに「企業全体のブランディング」に活用している企業が約5割に上ることがわかり、また約4分の1の企業が「特定製品やサービスのブランディング」に活用していると答えています。
とはいえ、なんとなくSNSを運用していているものの、ブランディングに貢献しているという実感は得られていないという企業の方も、多いのではないでしょうか?
そこで今回は、SNSを活用して本当にブランディングができるものなのか、あらためて検証してみたいと思います。
- ■目次
- そもそもブランディングとは何か?
- 従来のブランディング手法とSNSを活用したブランディングとの違いとは?
- SNSをブランディング目的で運用する際の注意点
- ブランディングに適したコンテンツとは?
- まとめ
1.そもそもブランディングとは何か?
ブランディングという言葉を辞書で調べてみると、〔原義は「焼き印を入れること」の意〕
経営・販売上の戦略として,ブランドの構築や管理を行うこと。会社・商品・サービスなどについて,他と明確に差別化できる個性(イメージ・信頼感・高級感など)をつくりあげる。(大辞林 第三版)とあります。
つまり、「知名度」「信頼度」「ブランドロイヤリティ」といった“ブランド・エクイティ(ブランドが保有する資産)”を高めるために行う、すべての活動がブランディングと言えるのです。
ブランドと言っても、シャネルやルイ・ヴィトンのようなハイエンドの高級ブティックだけに限った話では、もちろんありません。ユニクロやH&Mのように、低価格帯の商品を販売していたとしても、立派なブランドなのです。
博報堂ブランドデザインでは、ブランドを「社会にとって有意義な、魅力ある個性=らしさ」だと定義しています。あなたの企業“らしさ”を「知ってもらい、わかってもらい、もっと好きになってもらう」ための取り組みだと言えば、ブランディングが身近に感じられるのではないでしょうか。
2.従来のブランディング手法とSNSを活用したブランディングとの違いとは?
かつてブランドが高級品だと考えられていた所以は、ブランディングをするための手法に多額の資金が必要だったからです。インターネットが普及する前は、多額の広告費を出してマスメディアに広告を出稿したり、マスメディア関係者を集めたプレスパーティーを開いて新商品発売の告知をしたり、銀座や表参道の一等地に出店するという行為そのものでステータスを表現したりするなど、資金を投入せずに消費者へブランドメッセージを届けることは困難でした。
しかし、インターネットやスマートフォンが普及し、さらにはFacebookやX(Twitter)といったSNSが普及したことで、ブランディングできる場が広がり、企業は多額の資金を投じずとも、消費者との接点を持てるようになりました。
一方で、SNSによって消費者が発言力を持った今、ブランドは企業がコントロールして作り上げるものではなく、一人ひとりのステイクホルダーによって作り上げられるようになったという点には、注意を払わなければなりません。いくら企業側がブランディングのためにきれいごとを並べ立てても、それが実態とともなっていなければ、消費者によって「この企業は嘘をついている」と見抜かれ、ネガティブなイメージが拡散される危険もはらんでいるのです。
3.SNSをブランディング目的で運用する際の注意点
では実際に消費者がSNSを通じて、企業からのブランドメッセージをどのように受け取っているか、シーン別に検証しながら、企業がSNSでブランディングする際の注意点を見てみましょう。(便宜的に今回はFacebookとX(Twitter)に限って解説します。)
■自分の好きなブランドのFacebookページに「いいね!」をしたりX(Twitter)アカウントをフォローする場合
このパターンでは、企業側がダイレクトに消費者へメッセージを届けることができます。「いいね!」やフォローは消費者が能動的に行うことですから、すでにブランドに対してポジティブなイメージを持っていることが多いでしょう。知れば知るほど好きになってもらえるかどうかは、投稿するコンテンツやコミュニケーション次第。好きだった人に裏切られたときの傷は大きくなりがちですから、期待を裏切らないための最低限の配慮は欠かさないようにすることが大切です。
■キャンペーンに参加する代償としてFacebookページに「いいね!」をしたりX(Twitter)アカウントをフォローする場合
SNSをブランディング目的だけでなく、同時にキャンペーン利用することも珍しくはありませんが、言うまでもなく消費者のモチベーションはキャンペーンへの参加であり、企業からの情報を受け取ることではないということを、改めて認識しておかなければなりません。そうでないと、「せっかく見てくれる人が一気に増えたのだから」と張り切って投稿頻度を増やして嫌われたり、勝手にファンと想定したコミュニケーションをとって興醒めされたりといった、決してブランディングにとって良くない行動をとってしまいかねませんので、温度感には十分に注意しましょう。
■Facebookでつながっている友達やX(Twitter)でフォローしている人が拡散する情報を受け取る場合
日常的にSNSを活用している方なら肌感覚でわかると思いますが、誰かがFacebookで「いいね!」・シェア・コメントをした情報を見たり、X(Twitter)でRTしたときに、初めて情報を目にすることがあるはずです。それは企業がコーポレートサイトや自社のSNSで発信した情報かもしれませんし、どこかのメディアで取り上げられた記事のリンクかもしれません。また、その際、情報をそのままダイレクトで拡散している場合もあれば、友達やフォローしている人の主観が入ったコメント付きで拡散している場合もあるでしょう。要するに、コントロールは不可能ですし、すべてを把握することもできません。企業ができることといえば、普段から正しい行いをしておくとか、広報活動における危機管理をしっかりしておくといった基本を抑えることが求められます。
4.ブランディングに適したコンテンツとは?
次に、企業が伝えたいブランドメッセージを拡散してもらうには、どのようなコンテンツが適しているのか、消費者の視点から考えてみます。
■ユーザーが拡散したくなる5つの動機
・感動を伝えて共有したい
・自分の趣味嗜好を表現したい
・自分の役に立った/誰かの役に立ちそうな情報を知らせたい
・善い人・賢い人・物知りな人etc.理想の自分を見せたい
・(こんなに面白い情報を自分は知っているのだと)自慢したい
これらの動機に当てはまる投稿で、多くのアクションを集めている企業の例を2つご紹介しましょう。
「よなよなエール」をはじめとするクラフトビールの製造・販売をしているヤッホーブルーイング社。新商品の発売を告知するための投稿に600件以上の「いいね!」や40件以上のシェアが付いています。単なる新商品発表にここまで多くの反応があるのは、「よなよなエール」やヤッホーブルーイング社にブランド力があるからこそ。この投稿が5つの動機に当てはまっていることも、お分りいただけるのではないでしょうか。
ベビー用品や子供服の老舗ブランド「Familiar」のデニムバッグは、本来のお稽古バッグとしてだけでなく、“ファミリアバッグ”の愛称で、神戸の私立女子校に通う女子中高生から愛されてきたロングセラー商品。
そのバッグのトリビアを紹介したこちらの投稿には、1115件の「いいね!」に加え、コメントやシェアも多く付いています。Facebookページ自体の「いいね!」が9429人なので、驚異のエンゲージメント率の高さだと言えるでしょう。
5.まとめ
いかがでしたか?コンテンツを作る人は「拡散=バズ」だと安易に考えてしまいがちですが、ブランディングのためにバズを狙うのは、得策ではありません。バズを狙わずとも、ファンの感情に寄り添い、ブランドの“らしさ”を伝える努力を地道に続けることで、SNSをブランディングに活用することは十分に可能です。
今回ご紹介した内容はSNSに投稿するコンテンツだけでなく、オウンドメディアにも転用できる考え方ですので、ぜひ参考にしてみてください。