正社員の1/3がX(Twitter)にアクティブ。ベーシックが全社を巻き込むX(Twitter)活用で、成果を上げるまで

2020/06/04

企業のいわゆる「中の人」によるX(Twitter)運用は珍しくなくなり、BtoB企業によるX(Twitter)活用も急速に増えています。そのなかでも社員を上手く巻き込み、最も効果的にX(Twitter)運用に取り組んでいる企業のひとつが株式会社ベーシックです。

フォロワー数による「X(Twitter)将軍制度」や統一したプロフィール画像による「青壁」など、独自のX(Twitter)施策によって、サービス認知を上げるだけでなく、広報や採用活動においても成果を上げています。

企業がX(Twitter)を活用する意義、そしてどのような社内の取り組みを行えばよいのか、今回は同社のコーポレート責任者である角田氏と、同社内でX(Twitter)運用のアドバイスを行っている甲斐氏にお話を伺いました。

Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 小東真人(@gxsoc_kohigashi)
Text / 大木一真(@ooki_kazuma)

    ■目次

  1. プロフィール
  2. 採用と知名度の課題感。若手の一声でX(Twitter)運用をスタート
  3. プロフィールに固定ツイート、エゴサまで。X(Twitter)の基本をまず押さえた
  4. 「X(Twitter)将軍制度」の全社発表や商材の口コミを見える化し、やる気アップ
  5. ベーシックと言えば「青壁」。社員のアイコンから会社の一体感を演出
  6. サービス認知や売上、広報、採用にも効果があった
  7. 最後に:スタートアップや中小規模のフェーズの企業はX(Twitter)を活用すべき

1. プロフィール

株式会社ベーシック 執行役員
経営企画部長・経理部長
角田 剛史氏(@takeshisumida_

SaaS事業部formrunグループ プロダクトオーナー
甲斐 雅之氏(@Kai_MSYK

2. 採用と知名度の課題感。若手の一声でX(Twitter)運用をスタート

ー社員の方々によるX(Twitter)運用は、どのようなきっかけから始まったのでしょうか。

角田 剛史氏(以下、敬称略):採用に困っていたことがきっかけでした。弊社の社名があまり知られておらず、求職者の母数も少ないし、エージェントさんの紹介で面接にきてもらってもミスマッチが生まれるという状況が続いていました。そこでリファラル採用に取り組んだのですが、社員が知人・友人に声をかけても「ベーシックってどこ?」という反応が返ってきてしまい……。

そもそも社名を世の中に出していかねばと感じていた時、チームの若手が経営会議で「X(Twitter)を活用しましょう。まず役員からX(Twitter)を始めてください」と提案してきたんです。これが2019年の4月頃のことで、当時BtoB業界でも有名な人がX(Twitter)を少しずつ始めていました。

その一方で、弊社の役員でX(Twitter)をやっていたのは社長だけ、しかもそんなに力を入れていませんでした。社員でもX(Twitter)に詳しかったのは甲斐くらい。X(Twitter)が採用に繋がるかどうかも半信半疑で、その若手からの提案も「一生懸命提案してくれたし、とりあえずやってみるか」という温度感でした。

ー若手からの提案から、次はどのようなアクションに移ったのでしょうか。

角田:役員がそれぞれX(Twitter)でアカウントを開設したり、休眠アカウントを復活させるところからでしたね。役員の中でも私が広報を見ているので、X(Twitter)活用施策の責任者となり、役員がしっかりつぶやいたか、フォロ増えているかを毎週チェックしていました。

ただ、私自身も初心者でX(Twitter)をよく理解できていなかったので、数字を追っていくと同時に、各役員のX(Twitter)運用における「軸」を決めましたたとえば社長は「組織」「マーケティング」のジャンルについて、人事の役員であれば「人事」「採用」のことについて、

私はコーポレートを管掌しているので「経営企画」「広報」のこと、という形です。これにより、少人数ではありますが、会社としてある程度ツイートの内容の幅を持たせ、何がX(Twitter)上で刺さるのかのPDCAが回せるようにしました。

そのあたりの運用のコツや、プロフィールの内容、リツイートのお作法まで、社内でX(Twitter)に最も詳しかった甲斐から、かなり基本的なところから教えてもらうところからはじめました(笑)。

3. プロフィールに固定ツイート、エゴサまで。X(Twitter)の基本をまず押さえた

ー役員の方のX(Twitter)運用にあたり、甲斐さんはどのようなアドバイスをされたのでしょうか。

甲斐 雅之氏(以下、敬称略):まずは基本的なところを押さえるよう、プロフィールと固定ツイートについてアドバイスしました。

  • プロフィール…とにかく文字数を全部埋めること。たとえば、これまでの経歴や前職、現在の肩書き、趣味など。
  • 固定ツイート…自分が書いた自己紹介noteの記事や、取材されたメディアの記事を固定する。

日々の運用に関しては、エゴサーチの方法を特にしっかり伝えました。記事のURLを検索すれば、その記事に関するリツイートが見つかるので、そのリツイートに対してしっかりアクションをすること、また、話題になっている投稿を検索すると、その投稿への引用リツイートで見つけられるので、そこにもアクションするようアドバイスしましたね。

特に自分のツイートに対する引用リツイートは積極的にリツイートしたほうがよいとも伝えました。「そんなにリツイートしたらうるさくないか」とも言われたのですが、Facebookと違い、X(Twitter)はどんどん流れていくので問題ないというSNSとしての基本的な特徴含めて伝えていました。

4. 「X(Twitter)将軍制度」の全社発表や商材の口コミを見える化し、やる気アップ

ー役員でのX(Twitter)運用が始まり、その後はどのように進行したのでしょうか。

角田:結果的に役員の中で決めた目標を達成できたのは自分だけでした。自分もやっとX(Twitter)を理解できてきたというタイミングでしたが、次のステップとして全社を巻き込んでいくことにしました。

役員だけで運用しても社内に変化はなかったので、社員の誰かが突出して引っ張らないと、誰もついてこないなと思ったんです。役員がX(Twitter)をはじめて3ヶ月後、2019年の夏頃のことでした。

弊社では4半期ごとに全社会議をやっており、各部署の活動を報告しています。ちょうど良いタイミングだったので、その場でX(Twitter)運用の話を全社に向けて発表しました。それ以降、4半期毎に社内のX(Twitter)進捗を報告することにし、各個人のフォロワー数やX(Twitter)上でのベーシックに対する好意的な投稿を共有していきました。

また、フォロワー数の発表にはちょっとした仕掛けをしました。当時社内でも流行っていた漫画「キングダム」になぞらえて、フォロワー数ごとに「千人将」「三千人将」「五千人将」とランク付けしたのです。

その上で、社員をある意味鼓舞するために「甲斐が見ている、将軍の景色を皆で見ないか」と最初に言ったんですよ(笑)。それ以降、四半期ごとにこの「将軍制度」で社員のフォロワー数を発表しています。その結果、いい具合に競争心を煽るような形になり、X(Twitter)を始める社員が徐々に増えていったのです。

▲当時使われていた全体会議の資料

甲斐:また、その頃はUGCの活用にも力を入れました。弊社に関するX(Twitter)上の口コミは、「SocialDog(ソーシャルドック)」を活用して社内Slackで拾えるように仕組み化したんです。これによって、X(Twitter)をやっていない社員も「これだけの口コミがX(Twitter)で生まれているんだ」と実感できるようになったのです。

▲自社サービスのX(Twitter)上の口コミを、社員みんなが見ている様子

やっぱり、自分たちのサービスや会社について良いと言ってもらえるのは間違いなく嬉しいもの。そこから新しいコミュニケーションが生まれ、社外の同じ職種の人とも社員が繋がるようになりました。

5. ベーシックと言えば「青壁」。社員のアイコンから会社の一体感を演出

ー組織的にX(Twitter)運用を行うため、最も効果があった施策があれば教えてください。

角田:いわゆる「青壁」の施策ですね。弊社社員のX(Twitter)アイコンはオフィス内にある「青壁」を背景にして撮影した写真を使用しています。X(Twitter)のアカウントは個人で別々ですが、この「青壁」の写真を皆が使うことによって、一体感を醸し出すことに成功しています。

▲「青壁」の前で撮影した写真をアイコンに使うベーシックのメンバーたち

これは特に強制した訳ではなく、社内のムーブメントが巻き起こり広がりました。社内報でこの「青壁」がネタとして取り上げられたことで、「じゃあ私も青壁にしよう」というブームが生まれたんです。

甲斐:ちなみにこの写真は、新しく社員が入社した際に人事が必ず撮影している社内の社員紹介用のものです。メディアに出ることのない普通の人にとって、自分のちゃんとした写真を撮ってもらう機会は、実はすごく少ない。入社初日という記念日に良い写真を撮ってもらうと、その写真をSNSに使いたくなる気持ちになり、特段催促することなく、自然と使ってもらえるケースが多かったです。

あとX(Twitter)では特にBtoB関係だと、その企業の社員アカウントをまとめてフォローしたい」という人も少なからずいますから、統一感のるプロフィール画像はそういう人に向けて分かりやすいですね。

ー社内にここまで発信者が増えると、たとえば炎上で会社のブランドを傷つくのが怖い企業さんもいると思います。リスクヘッジについては、どのようにされていますか。

角田:社員がつぶやく内容については特に強制しておらず、禁止事項もありません。というのも、統一ルールはある程度作りつつも、最終的には自由に楽しんでつぶやかないと続かないからです。

メディア掲載やプレスリリース、社員の登壇情報といった投稿ネタは社内で提供していますが、ツイートするかどうかは個人に任せ、かなり柔軟性を持たせた統一ルールになっています。

その一方で、プロフィール画像に「青壁」を使っていたり、社名をプロフィールに入れていることによって、過激な投稿をしないよう、自制は効いている気がしていますね。

甲斐:社内でお互いにちゃんとつぶやく内容に問題がないかと確認しあうことはありますね。X(Twitter)についてお互いに意見をし合う社内Slackがあるので、そこで「この投稿は大丈夫なのか」「著作権に問題はないか」と確認し合うことで、社内のSNSリテラシーが高まっていると感じます。

6. サービス認知や売上、広報、採用にも効果があった

ー全社を巻き込んだTwitte運用で、どのような成果があったのでしょうか。

角田:きっかけは採用目的でしたが、結果的に大きく3つの影響が出ました。

①サービス認知/売り上げ

角田:フォーム制作サービスである「formrun」では、フォロワーが実際にお客さんになることが非常に多いです。

▲甲斐氏のX(Twitter)フォロワーの中から、実際にお客様になった方のツイート

フォロワーの中で何社も有料化してくれていますし、BtoB業界でインフルエンサーである方々が紹介してくれることにより自然と拡散されています。

②広報

角田:これまでの広報活動でタッチできなかった媒体さんから声がかかるようになりました。弊社でイベントマーケティングを担当している河村も、X(Twitter)を始めてすぐにメディア取材がきましたね。

X(Twitter)からつながって、マーケター同士のオフ会や知見交換も行われるようにもなっています。

③採用広報

角田:当初も目的であった採用についても影響はあります。直接連絡して採用面談にくる求職者が増加、そして意外なことに出戻り社員が増えました。

一回退職したものの、かつて一緒に働いていた弊社社員の生き生きしたX(Twitter)を見て、「あれ?ベーシック変わった?」と感じたそうです。

7. 最後に:スタートアップや中小規模のフェーズの企業はX(Twitter)を活用すべき

ー会社としてX(Twitter)を活用し始めて1年が経ちますが、この成果をどう感じていますか。

角田:当初は影響があるかどうか、半信半疑でした。でも、今では社員の1/3(33/100人)がX(Twitter)にアクティブで、そのうち約半分(16/33)が1000フォロワー以上のアカウントです。当初目指していた採用はもちろん、広報でも圧倒的に露出が増えましたし、売り上げにもつながっているので、本当にやってよかったなと。

ただし以前noteにも書きましたが日本の会社全てにおすすめできる」わけではありません。もちろん炎上リスクもありますし、何万人規模の会社にいたら、そもそもの知名度や普段の広報活動の方がはるかにインパクトは大きいので、X(Twitter)でアピールしたところであまり意味がありません。

ただ、スタートアップや中小企業といったフェーズでは、ビジネスとしてX(Twitter)をやることに大きな意義があると思います。ハマる企業にとっては、炎上リスクや運用コストを考えても、X(Twitter)をやることのメリットの方が絶対に大きいはずです。

ーありがとうございました!