SNSの口コミ分析で注意すべき「見る専門」ユーザーについて【書き起こし】
2020/09/09
どうも、ガイアックスの重枝です。今日のテーマは「見る専」ユーザーについてです。ソーシャルリスニングは投稿された口コミをベタに見ているだけでは、ユーザーの心理は絶対にわかりません。
特に日本のSNSの場合、口コミを分析するときには、「見るだけ専門」ユーザーの気持ちを考察する必要があります。今回はそのコツについてお話しします。
※本記事は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルで配信した内容を書き起こしてまとめたものです。
1. 口コミは積極的に発信する人の発言が多い
見る専ユーザーとは?
日本のソーシャルメディアは「見る専」の人がほとんどです。見る専とは、自分では投稿せず見ているだけの人を指します。
積極的に投稿する人はほんの1~2割で、そのほかの人たちはほぼ見ているだけ。つまり、我々がソーシャルメディアで集める口コミは積極的に発信する人の発言が多いといえます。
データで分かる、積極的に情報を発信する人の割合
こちらの「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」というデータを見てみましょう。2018年の研究結果ですが、Facebook・X(Twitter)・Instagramという媒体ごとに情報を発信する人の割合を見ていきます。
例えばFacebookでは実際に使っているユーザーの中のおよそ14%、X(Twitter)では20%、Instagramでは13%が積極的に情報を発信しています(70代のユーザーを除いたうち「自ら情報発信や発言を積極的に行っている」「自ら情報発信や発言することよりも他人の書き込みや発言等を閲覧することの方が多い」と回答した人の割合)。
つまり、FacebookとInstagramでは約9割、X(Twitter)では約8割が、ほぼ見るだけだということ。Instagramの現在のユーザー数はアカウントベースで3,300万ユーザー、X(Twitter)は4,500万ユーザー、Facebookは2,600万人といわれますが、そのうちのほとんどは口コミなどを含め自ら投稿をしない人だということです。
見ているだけの人ばかりなら投稿を集めて分析しても意味がないのでは、と思うかもしれません。しかしこの投稿にはからくりがあり、そこを読み解く必要があります。そうすると見ているだけの人の気持ちを分析できます。
2. 口コミを読み解く方法
「ほかの人の意見が気になる」という日本人の傾向
ヨーロッパ各国やアメリカはこの見る専の人はうんと減りますが、日本の場合は見る専の人が多いです。では、自分は投稿しないのになぜソーシャルメディアを使っているのでしょうか。
それは自分で意見は言わないがほかの人がどう思っているか気になる、という傾向があるからです。ゆえに自分が共感した投稿にいいねなどをします。
より共感を集めている投稿にフォーカスする
読み解く方法としては、「口コミ数」を調べると同時にその口コミの中でもより共感を集めている投稿、いいねやリツイートをたくさんもらっている投稿にフォーカスすることが重要です。
Instagramであればハッシュタグで検索して人気投稿を見てみましょう。よくエンゲージメントされている投稿がトップに出てきます。それらの投稿に何が入っているかに注目しましょう。
よくエンゲージメントされている投稿はユーザーが何かしら反応・共感し、保存しているから人気を集めている。つまり人気を集めている投稿=見る専の人たちの気分や好みを表しているといえます。
このように口コミを読み解くには、人気投稿にフォーカスし世論を導き出す工夫が求められます。
件数ベースとアカウントベースを分けて考える
例えばあるブランドに関するInstagram投稿を集めたことがありました。たくさん集まったものの、じつはその投稿の9割が投稿数上位3%のアカウントから発信されていました。
要するにそのブランドに関する口コミは大量に出回っているが、そのうちの8~9割はそのブランドに関する投稿をしている人たちの数%で行われているのです。
Instagramは特にこういう例が多いのですが、そのブランドに対する口コミが件数ベースで何件出ているかということと、アカウントベースで何件出ているかということは分けて考える必要があります。
積極的にたくさん投稿する人たちについては、そのアカウントの投稿が十分なエンゲージメントを集めているかどうかを見ていかなければいけません。大ファンだがあまり共感を呼んでいない人がやたら投稿していることもあれば、十分にエンゲージメントを集めている人が投稿していることもあります。
しっかりとエンゲージメントを集めている人が投稿していることをさらに読み解いていくと、エンゲージメントをもらえるから投稿することも見えてきます。つまり、見る専の人たちが多く共感しているから上位3%のユーザーがどんどん投稿する=世論を代表していることにもなる。こういう少し複雑な読み解きをしていかなければなりません。
3. 表に公開されないコミュニケーションを読み解く方法
ダークソーシャルを読み解くことが重要
日本のユーザーは「見る専」がほとんどですが、LINEの場合は積極的に投稿するというユーザーは多いです。
これはダークソーシャル(表に公開しないコミュニケーション)といい、こういったコミュニケーションはソーシャルメディアとしてもSNSとしても積極的に使う傾向があります。
本音は表に公開しないが自分の知り合いベースでコミュニケーションしていく。ゆえにダークソーシャルを追い、どういうコミュニケーションがされているか読み解くことが重要です。では、どのように読み解いていけばいいのでしょうか。
Instagramの場合
Instagramは読み解きやすく、インサイトでシェア機能を表す「紙飛行機マーク」の数字を見ていきます。マークには何件シェアされていると書かれています。これは投稿をDMでやり取りしているということです。
タイムラインに引用してリグラムしているわけではなく、自分の知り合いや友人にこれいいよねと送っている。シェアが多いということはいいねが少なくても共感されている可能性があります。
いいねもされないようなコンテンツですが、じつは意外にシェアや保存は多いということがあります。シェアや保存の割合が多いものは、ダークソーシャルに乗りやすいのです。
データには乗らないが、LINEやInstagramのDM、Facebookのメッセンジャーなど隠された経路のコミュニケーションに乗っており、そこで情報伝播し人々にいい影響を与えていると考えられます。こういうところも口コミ分析として見ていく必要があります。
4. まとめ
基本的にオープンなソーシャルメディアは見る専だらけですが、「見ている人の視線がどこにあるか」を分析していけば、その見る専の人の気持ちも分析できます。さらにInstagramはシェアや保存を見ていけば、いいねはしないがじつは共感していることも分かってきます。
本日は見る専だらけのソーシャルメディアにおいて、ソーシャルリスニングやユーザー行動を分析する際のコツについてお話ししました。少々マニアックな話ですが、深読みしていくとソーシャルメディアはいろいろ分かりおもしろいです。
5. 最後に
本記事の内容は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルでも配信しています。
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この記事を書いた人:重枝義樹