明日から使える! ソーシャルリスニングのやり方「時系列情報調査」を解説

2021/08/13


前回はソーシャルリスニング(SNSなどの口コミ分析)の概要を紹介
しました。今回はソーシャルリスニングで得られる示唆ついてイメージしてもらえるよう「時系列情報調査」を取り上げていきます。

この調査方法を理解することで、どのような分析を行えば良いのかが具体的に分かり、日々のSNS運用やマーケティング活動に役立つ示唆が得やすくなります(*本記事の分析対象媒体はX(Twitter)上の口コミデータです)。

    ■目次

  1. そもそもX(Twitter)で得られるデータの特徴
  2. 時系列情報調査の概要とその手
  3. まとめ

そもそもX(Twitter)で得られるデータの特徴

  • データの主体がテキストデータである
  • いいねやリツイートなど口コミを拡散する機能がある
  • アクティブアカウント数が多く、多様なユーザーからの声を収集できる
  • 秒単位の時系列データを取得できる

 
X(Twitter)ではユーザーが発信する情報の多くがテキストデータであるため、消費者のぽろっと出る本音や嗜好を収集できる可能性が高く、企業のマーケティング目的で調査・分析する媒体として適しています。

時系列情報調査の概要とその手法

ソーシャルメディアで見られる消費者の口コミ分析するメリットは、時系列を辿って調査できる点です。時系列情報調査とは、例えば、特定ブランド名の口コミを時系列で並べた時に、特定の季節に口コミが出やすい、特定の商品について口コミが多い、バズが起きた要因はどの口コミだったのか、という示唆が見つかる手法です。

時系列情報調査の切り口は大きく分けて、下記3つの切り口があります。

  1. 口コミ数が多い日の口コミを分析する
  2. RT数が多い日の口コミを分析する
  3. ユーザー起点で起きたバズを分析する

 
本記事では、実際のアウトプット例も交えて、これらの切り口でどのような示唆が得られるかを解説します。

手法1:口コミ数が多い日の口コミを分析する

まず、もっともオーソドックスな口コミ数が多い日の投稿の分析を扱います。

以下の図は2020年度の「スターバックス」に関するX(Twitter)上の口コミ数の推移です。緑色の線はポジティブな口コミ、赤色の線はネガティブな口コミをそれぞれ表しています。

図に示した①のタイミングではネガティブな口コミがポジティブな口コミを唯一上回り、②のタイミングではポジティブな口コミが増加し、③のタイミングでもっとも大きくポジティブな口コミの波が発生していることが分かります。

各タイミングで頻出している単語をワードクラウドにより可視化すると、「①コロナ禍の影響で営業を休止していたスターバックスが②営業再開し、③再開後初の新作フレーバーが非常にうれしかった」という消費者心理が見えてきます。

このように、時系列を追って話題を解釈することで、特定の商品/ブランドに対する消費者の印象や話題の文脈が掴めます。また、こうした情報を有効活用して商品の訴求改善やSNSアカウントの運用改善に役立つ示唆が得られる可能性があります。

手法2:RT数が多い日の口コミを分析する

次にRT数が多い日の口コミを分析します。

以下の図は先ほどと同様に、2020年度のX(Twitter)上でのスターバックスの口コミについたリツイート数の推移を表しています。推移を見ると、年間を通じて特定の話題が偶然バズっているわけではなく、消費者のなかで何回も多くのリツイートが行われていることが見て取れます。

次に、多くのリツイートを獲得している投稿を複数観察することでバズりやすい投稿の共通点を探ります。

その結果、スターバックスのバズは「①新作商品」「②注文方法や対応」「③偶然のバズ」の3種類で構成されている法則性が見えてきます。このように、リツイートが多い日の投稿を分析することで、消費者のなかでどういった話題が共感を呼び、反響がいいのか示唆を得られ、商品の訴求改善やSNSアカウント運用改善に役立てられます。

手法3:ユーザー起点のバズを分析する

最後に、ユーザー起点のバズを分析します。以下の図は2020年度の「アイス」に関する口コミのリツイート数の推移を表しています(企業起点のキャンペーンや懸賞などの投稿は除外しています)。

分析対象機関において比較的大きな波が発生しているタイミングの口コミを中心に口コミを調査すると、図で示している2月頃の口コミが、以下のような特定のワードが極端に目立つワードクラウドになっているとわかりました。

そこで2月周辺の時期、「バターアイス」が話題になり始めたタイミングを調査すると、ある投稿がきっかけでバターアイスの話題になり、さまざまな切り口で広がっていくのが分かりました(下図)。結果的に、バターアイスは近所のコンビニで買えない人が出るほど、大いに盛り上がりました。

また、これらのUGCを定性的に調査することで、下記情報も浮き彫りになりました。

  • 「かじるバター」という味が想像しやすい商品名、パッケージデザインであること
  • 情報を受け取った人がコンビニなどで身近に手に入れることができること
  • 140kcalが商品名で想起するよりも、実際は低カロリーで、罪悪感の少ない商品と思われていること
  • 他者の役に立ちたい・有益な情報を届けたいといった心理が働くこと

このように特定カテゴリの商品において、過去に起きたバズの発生要因が調査できます。また、こうした情報をSNSにおける投稿コンテンツに生かすことで、消費者の間でより話題化させられる可能性が高まります。

まとめ

今回はソーシャルリスニングを通じて得られる示唆について、消費者の口コミを時系列を辿る調査「時系列情報調査」を解説しました。

次回はソーシャルメディア上で、自社商品・サービスがどのような評価を受けているかを分析する「評判分析」に関する情報をお届けします。

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この記事を書いた人:澁谷海渡

アニメとラーメンをこよなく愛するデータサイエンティスト。学生時代は主にデータマイニング技術に関する研究を行なっている研究室に在籍し、類似数式検索技術に関する研究に従事。ガイアックスに新卒入社後は、データ収集基盤の構築や社内システム開発を行うエンジニアとして活動。現在はソーシャルメディアマーケティング事業部で主にソーシャルリスニングの研究などのデータ分析業務に従事。