日本でX(Twitter)を普及させた第一人者が語る、X(Twitter)のこれまでの10年と今後
2024/01/09
2006年にX(Twitter)がリリースされ今年で10年。現在では全世界で月間アクティブユーザー数が3億1000万人、日本では3500万人を誇る、世界でも代表的なSNSの1つにまで成長しました。 2008年にX(Twitter)に投資し、その日本展開を支援したのがデジタルガレージグループでした。今回は、2011年8月のX(Twitter)日本法人への運用移管まで日本でX(Twitter)普及に尽力したデジタルガレージグループの佐々木様に取材させていただきました。 text / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑
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- 目次
- プロフィール
- 日本に馴染むと予想していたX(Twitter)
- リアルタイムメディアは技術ではなく“人間性の勝利”
- 当初から想定していたX(Twitter)での情報収集
- 日本と海外におけるX(Twitter)の使われ方の違い
- 企業のX(Twitter)利用の歴史
- 今後のX(Twitter)に期待すること
プロフィール
佐々木 智也氏 株式会社デジタルガレージ 上級執行役員 株式会社DGインキュベーション 取締役 1995年より広告代理業務に携わり2001年より新聞社のネットビジネス開拓及び次世代ビジネスを推進。 2005年に株式会社デジタルガレージ入社。デジタルガレージグループの戦略事業に携わる。海外サービスの日本ローカライズや、パートナー企業とのジョイントベンチャー事業等を移進。 2008年上級執行役員就任。X(Twitter)との資本業務提携により日本展開を主導。 2012年デジタルガレージグループ投資子会社のDGインキュベーション取締役就任。
日本に馴染むと予想していたX(Twitter)
大久保:2008年当時、どういった経緯でX(Twitter)に興味を持たれたのでしょうか? 佐々木氏:当時は、これからブログに派生した様々なツールが出てくるだろうと思っていて、Facebookなど片っ端から新しいサービスに登録していました。その中にX(Twitter)もあり、日本に馴染みやすそうなサービスだなと思っていました。 大久保:X(Twitter)のどのような点が日本に馴染みやすいと思ったのでしょうか? 佐々木氏:まず匿名制だということ。そして制限がなく好きなことを自由に投稿できる点です。また日本語版をローンチした時に、海外メディアが「俳句の国にX(Twitter)上陸」、といった見出しの記事を書いていて、5・7・5の日本の文化にマッチしてブレイクするんじゃないかと思いました。 振り返ってみると「Tweet」の訳し方もよかったと思います。そもそもTweetとは「さえずる」「さえずり」という意味なのですが、弊社スタッフが「つぶやく」と訳したんです。そんなキャッチーなフレーズがあったから日本人にも馴染み、普及に繋がったと考えています。
リアルタイムメディアは技術ではなく“人間性の勝利”
大久保:2008年当時の日本では「mixi」や「モバゲー」といったSNSが流行っていましたが、その中でえはどんな立ち位置になると考えていましたか? 佐々木氏:全く別ものだと思っていました。140字という制限がありますし。それと他のものに比べて圧倒的に1次情報が広がるのが早いので、新しい可能性があると思いました。 例えばハドソン川に飛行機が墜落した事故があったのですが、それに関する情報は他のニュースメディアやテレビ局よりX(Twitter)が断然早かったのです。
X(Twitter)で広がった事故の写真 (引用:http://techcrunch.com/2009/01/15/plane-crashes-in-hudson-first-pictures-on-flickr-tumblr-twitpic/)
これがきっかけでX(Twitter)は他のメディアに並ぶ情報ツールだと認知され始めました。 また当時よく覚えているのは、渋谷で火災が起きた時すぐにX(Twitter)に情報が上がり、リアルタイムで情報収集できたことです。デジタルガレージのオフィスがまだ富ヶ谷の時で、「これすごいな」ってチームで話していました。
大久保:そのハドソン川の事故がX(Twitter)認知の大きなきっかけだったんですね。 佐々木氏:当初 X(Twitter)を説明するときには、「X(Twitter)は技術が飛び抜けているわけでなく、“人間性の勝利”だ」という風に伝えていました。今となっては当たり前ですが、X(Twitter)はリアルタイムのメディアで、ユーザーが善意で情報を上げて成り立っているので。
当初から想定していたX(Twitter)での情報収集
大久保:初期のユーザー獲得のために、どのようX(Twitter)を広めていったのでしょうか? 佐々木氏:今の若者たちが、「今何が起こっているのかを調べるには検索よりもX(Twitter)が早い」(※参照)と言う人が増えてきたと思うんですが、これはまさに僕らが普及させるときに「X(Twitter)の使い方」として伝えていたものなんです。当初からそのような使われ方がされるとイメージして、「自分ではツイートしなくていいですよ。今何が起こっているのかを調べるにはX(Twitter)です」と説明していました。 ※参照:若者はX(Twitter)やInstagramで「検索」している 大久保:当初から今の使われ方を説明していたんですね! 佐々木氏:はい、この前GENKINGさんの記事が出た時は、まさに当初から説明していたことだったので、「ああ、ここまできたか」と感慨深かったです。
日本と海外におけるX(Twitter)の使われ方の違い
大久保:ここまでX(Twitter)が普及した日本において、独自の使われ方はあるんでしょうか? 佐々木氏:ユーザー層が幅広くなって、複数アカウントで人格を分けて使っているのは増えてきていると思います。また海外は実名で登録している方が多いですが、日本ではやはり匿名アカウントが多いです。 大久保:逆に海外で特徴的な使われ方はありますか? 佐々木氏:強いて言うなら、ホテルとかレストランとかにチェックインしてツイートすると、「ありがとう」ってお店側からリプライがくる点ですかね。やりすぎるとちょっと鬱陶しく感じますけど、アメリカのレストランなどは普通にやってる気がします。 あとは日本以上に使い分けがうまいと思います。X(Twitter)を拡散用という位置づけにして、自分のメディアへ誘導するツールにするというような。具体的には裏話のようなものをX(Twitter)上でツイートして、メディアに誘導するようなやり方です。
企業のX(Twitter)利用の歴史
大久保:次に企業のX(Twitter)利用に関してお伺いしたいのですが 佐々木氏:最初は企業にアカウントを作ってもらって、運営してもらうというところから始まりました。あと世界で日本だけ、バナー広告をやっていました。またこのバナー広告の反響がすごかったです。良くも悪くも。バナーが出ると、そのクリエイティブに対して「なんだこのバナーは!」とか、バナー内のタレントさんに対してのコメントとか……。でも悪い反響が来たとしても、それは見られている証拠なので逆にクライアントさんに喜んでいただいて嬉しくなっていました。
X(Twitter)バナー広告のイメージ図 (引用:http://www.fringe81.com/pressrelease/pressrelease20091014.html)
大久保:バナー広告を企業に提案する際はどのような訴求だったのですか 佐々木氏:「リアルタイムの反応がすぐにタイムラインで見られる」、「クリエイティブとユーザーのアクションが連動できるからイベントなどに最適」、なんて言っていました。後者だと、例えばバナーをクリックしてページを開くと、X(Twitter)に絡めたキャンペーンをやっているなどです。こういうものが独自に発達していったのは日本だけなんじゃないですかね。 大久保:企業が自社アカウントを作って投稿するというのは自然な流れで生まれたんですか? 佐々木氏:それはバナー広告と逆で、アメリカの方で活発でした。私達はその事例をもとに啓蒙する展開でした。まずX(Twitter)で自社のサービスについてツイートして、次はそれに関してユーザーがどう語っているか検索してもらう。最初は傾聴するところから始めるということですね。
今後のX(Twitter)に期待すること
大久保:最後に今後のX(Twitter)に期待することを教えてください。 佐々木氏: X(Twitter)だけでなくLINEやFacebook、テキストでのコミュニケーションツールは今後AIやbotが導入されて、ますます便利になっていくと思います。X(Twitter)はアメリカで先行してコマースの施策などをやっていますが、日本でも広告だけでなくもっと便利な使い方が進化するんじゃないかなと期待しています。
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この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部