UGCの2次利用でECの購入率が上がる?!家の中の工夫を共有できる特化型CGM 「RoomClip」が語るUGCの価値

2017/04/28

インターネットやSNSの発展によってかつて無いほど消費者の影響力が強くなっている今、UGC(User Generated Content:ユーザーによって作成されたコンテンツ)の価値が非常に高まっています。企業の広告が嫌われ、ブロガーやYouTuberの商品レビューが人気を集めているのが顕著な例と言えるでしょう。

しかし消費者に動いてもらう、コンテンツを作って投稿してもらうというのは簡単なことではありません。そこで今回お話を伺ったのが、「RoomClip」を運営するTunnel株式会社さんです。

RoomClipは、「家の中」の創意工夫やこだわりを投稿できる、住まいと暮らしの実例写真共有サービス。特定ジャンルに特化したCGMとしてユーザー数を伸ばしており、月間ユーザー数250万人、投稿された写真は200万枚と、非常に活発なコミュニティになっています。

ユーザーにコンテンツを投稿してもらうために実際に行ってきた工夫や、企業にとってのUGCの価値についてお話いただきます。

Interview / ソーシャルメディアラボ副編集長 小東真人
text / 青木麻里那

    ■目次

  1. 住空間の記録を蓄積する場所「RoomClip」を立ち上げたきっかけ
  2. コミュニティ運営のポイント:どうやってユーザーを「後押し」するか
  3. CGMだから提供できる新たな価値
  4. 今後の展望:住まいの悩みが生まれたとき、最初に来てもらえる場所に

1. プロフィール

高重正彦 氏:Tunnel株式会社 代表取締役 社長

岩元優也 氏:Tunnel株式会社 コミュニティ部門 RoomClip mag編集部

2. 住空間の記録を蓄積する場所「RoomClip」を立ち上げたきっかけ

小東:まずRoomClipというサービスについて、立ち上げのきっかけやどのようなサービスなのかを教えてください。

高重氏(以下、敬称略):RoomClipはインテリアの実例や暮らしの中の工夫を共有する、ユーザー投稿型のサービスです。

RoomClip:http://roomclip.jp/

立ち上げのきっかけとして大きかったのは、福島県いわき市の実家を引き払った経験です。当時すでに東京に住んでいたので正直「別にいいかな」と思っていたのですが、実際なくなってみると想像以上に喪失感があったんです。

家の中は長い時間を費やす場所。よりよく暮らすために工夫したり、思い入れをもっていたりしますが、そういうものを意識的に残していくことってあまりないですよね。そしてその場所がなくなったら、人に伝えることもできなくなってしまう。それが寂しいというか、もったいないと感じたんです。

衣食住のなかでも住空間はもっともクローズドで、なかなか他人の家を見ることもありません。でもそれぞれの家のこだわりや工夫を、情報としてインターネット上に蓄積できたらすごくいいんじゃないかなと思って、サービスの立ち上げに至りました。

まずは自分が愛着を持って大事にしてきた住空間を記録に残していく。それが蓄積されることで、家の中のことで課題を持っている人にとっての解決策を可視化する、そんなサービスにしようとここまでやってきて、徐々にできてきたかなというところです。

3. コミュニティ運営のポイント:どうやってユーザーを「後押し」するか

投稿者は何が価値かわからない!テーマ出しで投稿を活性化

小東:こういったコミュニティサイトは、投稿を集めるのがすごく苦戦する部分ですよね。立ち上げ時から今までどういった工夫をされてきたのでしょうか?

高重:キーワードは「後押し」です。日々の住生活をより良くすること、そしてそれを発信することを応援、後押しする。根底にある思想はこれですね。
具体的にやっていることとしては大きく2つあります。ひとつは「お題を出すこと」、もうひとつは投稿者に敬意を示すというか、「評価されている」と感じてもらうことです。

お伝えしたとおり、投稿してくれる一般のユーザーさんはどこに価値があるのかを自覚していません。そこで大事な役割を担うのが「お題」です。「ハロウィンの飾り付けどうする?」とか「トイレの収納、どんな工夫してる?」というように具体的に聞かれると、ユーザーさんも何を投稿すればいいのかわかりやすくなります。

投稿イベントのような形式で、年間で2~300本ぐらいは運営側からお題を出していますね。

投稿が評価される経験をユーザーさんに提供する

岩元氏(以下、敬称略):投稿に敬意を示すというのでいうと、分かりやすいのはいいね!やコメントです。RoomClipは本当にインテリアの参考にしたくて使ってくれている人が多いので、コメントが多いのはひとつ大きな価値になっています。
ただそれだけではなくて、運営側からも価値のある投稿を発掘するようにしています。

小東:運営側からとは、どういうことでしょう?

岩元:投稿をピックアップしてオウンドメディアの記事にしたり、書籍化の際に採用したりしています。
オウンドメディアであるRoomClip magは、投稿者のためにやっている部分もかなり大きくて。弊社側でテーマをもってまとめることで、あらためて「この投稿ってこういう価値があるよね」というのを伝えています。

RoomClip mag:http://roomclip.jp/mag/

ほかにも出版社さんからお声がけいただいて雑誌を出しているんですが、じつは基本的にユーザーさんが投稿したものをそのまま掲載しています。

書籍化はRoomClipの認知向上などマーケティング的な価値ももちろん高いです。でも一番はユーザーさんに喜んでいただく、「日々の工夫が価値あるものとして雑誌に載るんだよ」という体験を提供する、という意味が大きいです。

自信満々じゃなくても投稿できる! Instagramとは違う居心地の良さ

岩元:既存のSNSはリアルな繋がりや活動の延長にあるものが多いですよね。つまり有名人や著名人なら取りとめもない写真でも多くのいいねが集まるけど、いちユーザーが価値ある投稿をしても注目されにくい。

その点RoomClipでは、「誰が投稿したか」ではなく「何を投稿したか」で評価される文化を創っています。
「人気ユーザーランキング」のように誰かを特別扱いもしないですし、ユーザーさんもリアルに使える情報を求めているので本当に役に立つ投稿にはしっかりとコメントがつく。編集部も価値のある投稿をピックアップして記事として発信している。

だから自信満々じゃない普通の人でも投稿できるんです。Instagramで人気が高いモデルルームのような非現実的なおしゃれインテリアよりも、生活感を上手く隠している実用的で見た目もいいインテリアが評価されるんです。

小東:普通の人の価値ある投稿を、しっかりと評価する土壌があるんですね。

4. CGMだから提供できる新たな価値

ターゲットメディアとしての価値だけじゃない!UGCの収集と2次利用の重要性

小東:記事広告の提供を本格的に開始されるというのを、プレスリリースで拝見しました。現状はどういった広告商品を提供されているのでしょうか?

参考:日本最大の住まいと暮らしのSNS「RoomClip」、分散型メディアを活用した記事広告の販売を開始:時事ドットコム

高重:いわゆる記事広告もご好評をいただいています。インテリア好きなユーザーをしっかり囲えているので、ターゲットが明確なメディアとして活用いただけていますね。

あと多くの企業さんからご支持いただいているのは、UGCを集める機能です。ユーザーさんから投稿写真を集めてそれらを2次活用するというのはRoomClipでしかできないので、価値を感じていただいています。

たとえば住宅設備や家電のメーカーさんって、自社の商品がお客様の家のなかでどのように使われているかあまり知らなかったりするんです。広告用の写真もそれっぽくおしゃれに撮ってはいるけど、リアリティがあまりない。
でもRoomClipで投稿を集めると、生活の中でどんな風に役立っているのかが明確に見えてきます。そうすると販促方法や広告クリエイティブがすごく洗練されるんですよね。

インテリア用品のメーカーさんなら、投稿写真をそのままECサイトに使う場合もあります。ECサイトにとって事例写真やレビューはものすごく重要。でも最近はレビューの信頼性がゆらいでいて、良いレビューを集めるのが難しくなっています。

その点RoomClipの投稿って、すごくリアルでリッチなコンテンツになるんです。実際RoomClipの投稿を活用したECサイトさんでCVRが高まったこともあります。

ユーザーさんに商品を使った投稿をしてもらってRoomClip内で露出するのももちろん価値があるんですが、自社のチャネルで2次活用できるところが一番の価値になっていると感じます。

小東:SNS広告でもUGCを使うと成果が高まったりすることが多くあります。UGCの活用は、多くの企業にとって重要になってきそうですね。

UGCをフル活用している事例

小東:実際にUGCをRoomClipで集めて2次利用しているクライアントの事例を教えていただけますか?

高重:では株式会社山善様の「おうちすっきりボックス」に関するお取り組みをご紹介します。まずRoomClipのユーザーさんに商品をモニターしてもらって投稿を集め、そこから記事広告を作成、さらに山善様の楽天モール内のページにもご活用いただきました。

記事広告:http://roomclip.jp/mag/archives/43697
楽天内商品ページ:http://item.rakuten.co.jp/e-kurashi/26215

高重:ユーザーさんにモニターしてもらうことで、より消費者目線で使いやすい商品開発ができたり、完成後の商品の使い方の幅を広げられたりと、非常にいいお取り組みになりました。

小東:確かにユーザーさんによって使い方や使う場所が違うので見ていて面白いですし、自分が買った場合の想像も膨らませやすいですね!これは商品の販促効果も高そうです。

4. 今後の展望

住まいの悩みが生まれたとき、最初に来てもらえる場所に

小東:最後に、RoomClipの今後の展望を教えてください。

高重:投稿者さんを大事にして現状のいい部分をキープしつつ、ユーザー数を増やしていきたいと思っています。

サービスとして目指しているのは、住生活の悩みを解消できる場所、悩みを持った時に最初に来てもらえる場所になることです。

模様替えやDIY、収納など、住まいに関する悩みは色々あるし、世の中にすでにたくさんの情報がある。でも今まで発信されていた情報って、実践するにはハードルが高いものも多かったと思います。

ユーザーさんが求めているのは、日々の生活を少し良くする、自分の気持ちを豊かにするちょっとしたノウハウ。そういった想いや課題に応えられる場所になりたいですね。

そのために今まではユーザーさんに投稿してもらう、投稿する人に幸せになってもらうことに比較的注力してきたんですが、もちろん見ているだけの人もたくさんいます。その人たちにとっての見つけやすさ、探しやすさも強化していく予定です。

具体的には、過去の検索履歴のデータなどから「どのようなキーワードで検索すると満足度が高いのか」や「検索後にどういったページにたどり着けると欲しい情報が見つかるのか」が少しずつわかるようになってきています。

そういったデータをもとに、欲しい情報にたどり着くための手助けもしていきたいですね。

小東:ありがとうございました!