「インフルエンサーの経済的価値はメディア企業が補完する」——Droptokyo沼澤氏に聞くデジタルメディア企業の役割

2017/07/20

ソーシャルメディアの急成長とともに大手のメディア企業に匹敵する読者・フォロワーを抱えインフルエンサーと呼ばれるようになったモデルやアーティスト、クリエイターとの独自の経済圏を確立する次世代メディア『Droptokyo』を運営する株式会社ウィークデー

前編に続き、同社取締役CFO(最高財務責任者)沼澤 裕太氏にお話を伺い、自身のこれまでの経歴から、これから求められるメディアの役割などを伺いました。

▼前回記事
インフルエンサーは1つのメディアとして接する。Droptokyoに聞くこれからのメディアとインフルエンサーが創る新たな経済圏

    ■目次

  1. 大手IT企業から独立系メディアへ。ソーシャルメディア上で影響力を持つ個人が生み出す新たな経済圏に向き合う仕事とは
  2. 海外の投資判断時に見られる経済的価値と文化的価値の2面性
  3. インフルエンサーの経済的価値はメディア企業が補完する
  4. 独立系メディア企業やインフルエンサーをコンソーシアム化し、分散するノウハウや知見を一箇所に取り纏めていきたい

1. 大手IT企業から独立系メディアへ。
ソーシャルメディア上で影響力を持つ個人が生み出す新たな経済圏に向き合う仕事とは

管:沼澤さんのキャリアについてもお伺いできますでしょうか。ウィークデーに参画されるまでは、楽天に新卒入社、2012年にヤフー株式会社に売却したクロコス、ヤフーでは国際的なM&A業務に携わるなど大手IT企業を中心にキャリアを築いていらっしゃいます。ウィークデーは他業界と比べると閉鎖的とも言える独立系ファッションメディア企業。かなり毛色が違うのかなと思ったのですが。

沼澤氏(以下、敬称略):Eコマースにおける独自のポイント経済圏を築いた楽天から社会人としてのキャリアがスタートし、国内初フェイスブック社の公式認定デベロッパーとなり会社設立間もなくヤフーに売却を果たしたクロコス、インターネットメディアの中でも圧倒的な資本力を誇るヤフーとインターネットの普及とともに独自の経済圏創り出している企業とご縁があったのかもしれません。

現在はソーシャルメディアが台頭し新たなお金の流通の渦の中にいるのインフルエンサーが集う『Droptokyo』を運営するウィークデーの一員として様々な事業展開に取り組んでいます。

今ではインフルエンサーという言葉が先行しますが『Droptokyo』は2007年から10年以上に渡って渋谷や原宿、表参道を中心に独自のスタイルを持ち、東京のストリートシーン・カルチャーをファッションで表現する若者を追い続けているデジタルメディアですので、創刊時にはインフルエンサーなんて言葉はなかったわけです。

そんな彼らが独自の情報発信力だったりで多くの読者・フォロワーを抱え、今ではインフルエンサーとしてブランドからは引っ張りだこになり、自身のSNSに投稿するだけでサラリーマンの平均月収以上の報酬を得るようになりました。

新たなお金の流通が生まれる一方で当事者たちは困惑しているのが現状で、同じく彼らとの相乗効果によってファッション媒体として影響力を持ち年間数百名規模のインフルエンサーへの支払口座、億単位の経済規模になったウィークデーには何か社会的責任があり、ソーシャルメディアの台頭によって生まれる新しい経済圏を先導して築いていく企業だと思っています。

2. 海外の投資判断時に見られる経済的価値と文化的価値の2面性

:沼澤さんはお仕事の関係上、海外によく行かれてらっしゃいますが、日本と海外の違いで特に印象が強い部分はどういったところにあるのでしょうか。

沼澤:今の仕事がファッション関係だからかもしれませんが、ヨーロッパやアジア諸国に訪れることが多くなりました。

特に感じるのは海外の投資判断を担う意思決定者たちは「どれぐらい儲かるのか」という経済的価値と同時に「それによって地域や人がどう変わるか」という文化的価値を2面性を踏まえた意識決定や議論が多く、日本ではどちらか一方について焦点が当たりすぎている印象があります。

メディア界隈においては昨今いくつかのキュレーションメディアが炎上するなど経済的価値を追求しすぎた投資判断を象徴したケースだと思います。

:海外渡航から学んだことをウィークデーの経営やマネジメントに活かされている点はどんなことがありますか。

沼澤:海外のメディア企業にはアナリストがいたり、マーケティング企業には金融系のバックグランドからの転向者が比較的多かったりするんですよね。

「ストーリーテリング」や「かっこよさ」「おもしろさ」などの概念的な考え方が先行するメディアやPR・マーケティングにおいてベースは数字で語られる文化は見習うべき点だと感じています。

弊社には営業専任スタッフというのがいなくて、スタッフの大半がフォトグラファーやエディターのいわばクリエイター集団なのですが、たとえば数字に強いフォトグラファーがいても良いなと思うんです。

クライアントとの会話に介在したり、そとで外部の同業者と飲みに行けばお金周りの肌感覚はついてきますし、SNSの管理画面からすぐに自分が撮って投稿した写真が何人が見ているかとか、何人がLike押してくれたかとか見れちゃうわけなので。

弊社ではユーザーグロースからPL(=損益計算)まで管理職レベルのフォトグラファーやエディターに責任を持たせたりしているので、デジタルネイティブな感覚を持ち数字に強いクリエイター集団が育つ環境になっているかと思います。

一方でクリエイターが数字や売上などの経済的側面ばかり意識するとコンテンツは面白くなくなってしまい創り手本人たちのモチベーションも継続して低下してしまうし、面白さや制作意義などの文化的価値を追求したコンテンツは誰も見ないし収益率が媒体運営コストに見合わなくなってしまうので、メディア事業って突き詰めれば突き詰めるほど矛盾するんですよね。

ただ、そんな矛盾に向き合い続けることが本当の意味で「メディアをやっている」のだと思うんです。

3. インフルエンサーの経済的価値はメディア企業が補完する

▲ウィークデー社の開放的でおしゃれなオフィス

:経済的価値と文化的価値と向き合う話もあったなかで、インフルエンサーの方々をメディアと捉えたとき、彼ら自身この2つの価値はどう捉えていくべきだとお考えでしょうか

沼澤:インフルエンサーはマネジメント組織がついていない限りいち個人なのでメディア企業のようにアナリストや広告営業やエディアターが分業化しているわけではありません。

報酬がもらえるからといって意図しない投稿や関係がなさそうなブランドや情報に関する投稿を続けると読者やフォロワーは瞬く間に離れていきメディアとしての価値がなくなってしまうので、メディア企業が経済的価値を彼らの代わりに補完してあげれば良いと思います。

たとえば「Droptokyoがタイアップ企画で起用したこのインフルエンサーはフォロワーはそこまで多くないが、本人のバックグラウンドやスタイルがブランドが伝えたいメッセージに合っていた。結果的にエンゲージメント率が異常高くCTRが通常の倍だったので、リーチを広告でカバーすることを視野に入れて今後も継続して起用するべき」などブランド側に提案、納得させることが出来ます。

4. 独立系メディア企業やインフルエンサーをコンソーシアム化し、分散するノウハウや知見を一箇所に取り纏めていきたい

:最後に、沼澤さんが今後実現していきたいことを教えて下さい。

沼澤:まずソーシャルメディアを中心に世界中から多くのフォロワーに指示される『Droptokyo』からマスに向けた出版やイベントなどにチャレンジすることで他チャネルでのメディア価値を再確認したいですね。

今年の10月5日に集英社さんから『Droptokyo』の10周年を記念した出版やそれに紐づく多くのインフルエンサーを巻き込んだイベントを予定しているので反響がとても楽しみです。

次に我々のような特定の分野で影響力を持つ独立系デジタルメディア企業やインフルエンサーをコンソーシアム化し、分散するノウハウや知見を一箇所に取り纏めていきたいです。

SNSに多くのフォロワーを持つ分散型メディアや新興デジタルメディアは未だブランドや広告会社の理解を得られずPV指標で買い叩かれていたり、サラリーマンの平均月収を優に超える収入を得ているインフルエンサーの社会的与信は未だに低く、クレジットカードが作れなかったりローンが組めなかったり金融のインフラ側が追いついていないのが現状です。

そんなデジタルメディアやインフルエンサーの経済的価値や文化的価値を再定義し大手出版社や金融機関、エンターテインメント企業などを巻き込むことでSNS時代の新たな経済圏を確立していきたいです。

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