インフルエンサーが企業アカウントを運用?顧客と共創する、インフルエンサーマーケティングの未来

2017/08/23

マーケティング手法の1つとして確立されてきたインフルエンサーマーケティング。そんなインフルエンサーマーケティングの分野で今年6月、インフルエンサーが企業アカウントを運用代行するというユニークなサービス「PRST(プロスト)」がリリースされました。

同サービスを運営するリデル株式会社は、PRSTのほかインフルエンサーと企業をマッチングするプラットフォームの運営も行うインフルエンサーマーケティング分野のプロフェッショナルでした。今回は同社代表の福田氏に両サービスの特徴と、インフルエンサーマーケティングの現在地について伺いました。

Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑

    ■目次

  1. プロフィール
  2. 「人」を中心としたビジネスがインフルエンサーへたどり着いた
  3. インフルエンサーと企業をマッチングする「SPIRIT(スピリット)」
  4. インフルエンサーが企業アカウントを運用代行する「PRST(プロスト)」
  5. 運用で大切なのは「真の顧客目線」
  6. 今後の展望

1. プロフィール

福田晃一氏:リデル株式会社 代表取締役CEO

2. 「人」を中心としたビジネスがインフルエンサーへたどり着いた

福田晃一氏(以下、敬称略):私は前職で、Twin Planetという会社を創業し代表を務めていました 。Twin Planetは芸能プロダクションと広告マーケティングをハイブリットした会社で、鈴木奈々や小森純といったタレントが所属。単なるタレントマネジメントだけでなく、彼女たちのファンに対するマーケティングも行い、タレントのアサインからメディア、PR、流通というマーケティングのすべてを行っていました。

リデルはTwin Planetにおけるデジタル専門の子会社として設立しました。芸能プロダクションという特性上、タレントのヒットによって会社の事業が大きく影響を受けます。そうではなく、エンターテインメントなコンテンツを知的集約型で安定的に売り上げを上げられるビジネスモデルを作りたい。

Twin Planetで行ってきたタレントを中心にマーケティングを行っていくスキルというのを拡大し、人を中心としたマーケティングをデジタルで実施。過去のナレッジや経験を活かしつつ、デジタルシフトしていく。そのために立ち上げたのがリデルでした。

大久保:そこで目をつけたのがインフルエンサーだったのですね。

福田:いまや情報はテレビや雑誌といったマスメディアではなく、ソーシャルメディア、そしてそのなかにいるインフルエンサーが起点になっています。Twin Planetが蓄積してきたナレッジや経験をデジタルの中で活かせるのは「人」。それはインフルエンサーだと考え、イフンルエンサーマーケティング特化する方向にリデルは舵をきりました。

このインフルエンサーマーケティングへ注力するため、私はTwin Planetを売却、子会社だったリデルを個人的に買収し単独でスタートしました。

3. インフルエンサーと企業をマッチングする「SPIRIT(スピリット)」

大久保:プロダクションでの経験を活かし、最初に提供されたのが「SPIRIT(スピリット)」だったのでしょうか?

福田:おっしゃるとおりです。リデルとして最初に提供しはじめたサービスが、インフルエンサーと企業をマッチングするプラットフォーム「SPIRIT」でした。PR案件を受けたいインフルエンサーとインフルエンサーを通してSNSで拡散したい企業をマッチングさせるサービスです。

企業側が求人広告のように案件を登録し、条件にマッチしてやりたいインフルエンサーがいればエントリーしてマッチングするというものです。現在インフルエンサーが約2万人、企業が850社ほど登録しています。

大久保:リデルはプラットフォームの運営だけを担っているのでしょうか?

福田:現状は我々が間に入り、インフルエンサーと企業の双方が良好な関係を築けるよう繋げる役割を担って、より共感してくれる投稿を模索しPDCAを繰り返している。そういうことを企業側はわかっていない。

大久保:職業インフルエンサーという仕事をしている人への理解がまだまだ足りないと?

福田:企業担当者の多くは、その本人、そしてそのアカウントが持つ価値もわかっていない場合がほとんど。インフルエンサーへのPR依頼は、雑誌の編集タイアップと似ています。各々の雑誌がもつ特徴に合わせて編集者、カメラマン、ライター達と商品やサービスを紹介するページを一緒に作り上げていく。雑誌の特徴と商品の特徴をマージさせることによって、その雑誌の読者に興味を持ってもらえる。インフルエンサーは雑誌の編集長と似ている。異なる部分は、アカウントのコンセプト設計のみならず、カメラ撮影も加工もライティングも全て自分で行う。あとはフォロワーと日々向き合うインタラクティブな部分が雑誌とは大きく違う。発行部数(実売数)が5万部の雑誌で編集タイアップをするということは、フォロワーが5万人のインフルエンサーのタイムラインに投稿タイアップするのと同様です。

タイアップで大切になるのは、雑誌でもインフルエンサーのアカウントでも一緒で、世界観を作る編集者やインフルエンサーとクライアントがと共に作ること。つまり共創です。クライアントとインフルエンサーが共創していく文化がまだまだ根付いていないのです。

4. インフルエンサーが企業アカウントを運用代行する「PRST(プロスト)」

大久保:そういう意味では、6月にリリースされたインフルエンサーが企業のソーシャルアカウントを運用するサービス「PRST(プロスト)」はインフルエンサーと企業が共創していくサービスになっていくのでしょうか?

福田:共創を体験していただく機会にはなっていくと思います。PRSTでは、担当するインフルエンサーにもよりますが、コンセプト作りから撮影、加工、ハッシュタグ設計、ライティング、ターゲット分析までのすべてを担当します。リデルはクライアントが作りたいアカウントの方向性をヒアリングし適切なインフルエンサーのアサイン、ディレクションを担当します。リデルとインフルエンサーと企業の担当者の3者がチームとなり、アカウントを運用していく。この点ではまさに共創ですね。

PRSTのサービスが生まれたのは企業の抱える課題が起点でした。現状ソーシャルメディアがユーザとの最初のコンタクトポイントになってきています。ゆえに、企業もソーシャルメディアでコミュニケーションをとる方法を真剣に考えなければいけない。その事実に企業も気づきはじめていながらも、力を入れられない企業がたくさんある。その背景には主に3つの課題が存在しました。

1つ目は担当者がいない。2つ目はどんな投稿をすればいいかわからない。3つ目はアカウントはあるけれど活用までいかない。この3つを解決するためにインフルエンサーを通して何かできないか。そしてもう一つ、インフルエンサーのフォロワー数のみで価値を見出すのではなく、インフルエンサーのソーシャルメディアで共感を作り出すクリエイティブにも価値があること。そこから生まれたのが、ソーシャルメディア運用のノウハウや知見、活用法まで持ち合わせたインフルエンサーが業務を代行するサービスというものでした。

5. 運用で大切なのは「真の顧客目線」

大久保:テストマーケティングで何社か試された際にはかなり良い結果に繋がったとお伺いしました。

福田:わかりやすい事例では、リリースにも掲載しましたSuperGroupies(スーパーグルーピーズ)ですね。同ブランドはアニメイトの子会社が運営する「ファッションにアニメを」というコンセプトのアパレルブランドです。PRSTを入れた結果、3ヶ月の運用でフォロワー数が196%増、月間のいいね数が8200増加しました。プロフィールに記載していたECサイトの売り上げも伸びて、クライアントにも大変喜んでいただけました。

この事例がうまくいった背景には、クライアントが我々を信頼しすべてを委ねて頂けたことがあると考えています。よく運用代行だと「こういう風に撮って欲しい」「これはやってほしくない」といった指示が細かく自由度がない、そういった場合は成功させるのが正直難しい。SuperGroupiesの場合は基本的にお任せいただけたので、インフルエンサーのクリエイティブが数字的にもきれいに伸びたと思っています。

大久保:リクエストが多い場合、どのような問題が起こるのでしょうか?

福田:わかりやすく言えばそういったリクエストには顧客目線がないことが多いんです。ブランド主体の一方的な発信には共感は生まれづらい。逆にインフルエンサーはソーシャル上にいるユーザ、つまり顧客のことをとてもよくわかっていますから、どうしてもそういったリクエストに応えられないことが多い。そこでご理解いただけない場合には数字を伸ばすのも難しくなってしまいます。

※その他事例

6. 今後の展望

大久保:最後に、現状のサービスやインフルエンサーマーケティングなどを踏まえ、今後の目標をお聞かせいただけますか?

福田:直近で言えば、市場を成熟させることが急務だと考えています。ここまででお話ししている企業とインフルエンサー双方のリテラシー向上や、インフルエンサーの教育、それらも大前提ですが、もう1つ早期に挑まなければいけない問題がステルスマーケティング、“ステマ”をどう撲滅するかでしょう。

現状はステマをやらせる企業もたくさんいますし、インフルエンサーもそれを受けている。この慣習は変えていかなければいけない。企業側が#PRをつけたがらないのは、ユーザが「広告だ」と思って引いてしまうと考えているから。ただ先ほどの雑誌の例を再び引用すると「編集タイアップのページ読んで、読者が引く」と言っているのと同じなんですよ。そんなことはない。

なぜ引かないかといえば、編集者と企業が共創して読者になじむように、作り込んでいるから。インフルエンサーも同様で、タイムラインになじむように作りこむからユーザにとってはPRかどうかなんて関係がない。その理解が進まなければいつまでも市場が成熟しない。それは避けなければいけません。

少し長いスパンで言うと、個人の時代を後押しする存在になりたいと考えています。いまやインフルエンサーと呼ばれる人は自分のアカウントに何万人、何十万人ものフォロワーを抱え、リーチする力を持っている。例えば1日1回投稿でも、一ヶ月では数十万、数百万人にもリーチできる。個人が凄まじい影響力を持って企業よりも多くの人にリーチできる時代に変化しつつある。

この変化が進めば個人の価値がどんどん上がっていく。我々はプラットフォームを通してこの変化を後押ししていきたいんです。そのためにSPIRITがありPRSTがある。もちろん、今後もさらに後押ししていけるプラットフォームを提供していきたいと考えています。

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この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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