X(Twitter)でなぜ漫画が広まるのか? 株式会社フーモアが語るソーシャルメディアでウケる漫画コンテンツについて

2017/11/22

昨今、文章だけの投稿ではユーザーからのエンゲージメントが稼げずリーチしづらくなっているSNSの投稿。分かりやすい、かつ楽しめるクリエイティブの価値はますます高まっています。

そんななかで、クリエイターがオリジナルのイラストや漫画を描いてくれるサービスを提供している株式会社フーモアにうかがい、ソーシャルメディア上でウケる漫画コンテンツの秘密について取材してきました。

Interview ソーシャルメディアラボ副編集長 小東真人

    ■目次

  1. プロフィール
  2. スマホ普及で一般化した「縦スクロール」の漫画
  3. オーダーを受けてクリエイターをアサインする体制
  4. ソーシャルメディアにおける漫画コンテンツの魅力
  5. 「スルーされがち」な分野にも相性が良い漫画コンテンツ
  6. 今後の展望

1. プロフィール

芝辻幹也氏:株式会社フーモア 代表取締役

2. スマホ普及で一般化した「縦スクロール」の漫画

小東:はじめに、会社を始められた経緯をうかがってもよろしいでしょうか。

芝辻氏(以下、敬称略):私はもともと漫画家目指していたのですが、道半ばで漫画家になることを諦めたんです。色々紆余曲折あって、こちらの業界でやってきました。自分が漫画を描くのではなくて、漫画を描く人をサポートする側としてやっていこうと思ったんです。

会社を始めようと思った当時はスマートフォンが普及し始めていたので、スマートフォンにあった漫画のスタイルってなんだろうと考えていました。

スマートフォンは縦長ですよね。だから縦スクロールする漫画に当時から注目していました。そこで、私が当時関わっていたメディアで「縦スクロールが来る、縦スクロールだ!」って記事を書いて発信していたんです。今でこそ「縦スクロール」の漫画は当たり前ですが、あの頃は記事がいい意味でも悪い意味でも話題になったんですよ(笑)

そのようにスマートフォンがメディアの一つとしてどういう風に変化していくのか、今もずっと考えています。その過程でソーシャルメディアは外せない要素の一つと思ってソーシャルメディアを活用した漫画のプロモーションに注力してやっています。

3. オーダーを受けてクリエイターをアサインする体制

小東:御社では、具体的にどういったサービスを提供されているんでしょうか。

芝辻:クラウドソーシングのような位置付けですが、クライアント企業から「こういうイラストとかを描いてほしい」というオーダーを頂いたら、弊社内にいるディレクターと外部のクリエイターでチームを組んで、ディレクションをしながらモノを創るという事業をやっています。

具体的にはゲーム向けイラスト、toC向け漫画制作、恋愛ノベルアプリ、女性向け漫画アプリ、プロモーション漫画などさまざまですね。

小東:よく相談が来るクライアント企業の業種はどうでしょうか?

芝辻:ゲーム関連企業が6~7割くらいです。ゲームは運用が入るので、キャラクターをどんどん追加していかなければならないので、イラストを沢山作るんです。

残りの3割~4割がBtoB企業という感じです。クリエイターさんと一緒に漫画を作ったりしているなかで、ただものを作って納品するだけではなくて、企業の課題解決のためにクリエイターさんとプロモーション企画をするようになりました。

4. ソーシャルメディアにおける漫画コンテンツの魅力

SNSで始まった漫画がアニメや単行本に

小東:先ほどの話に戻りますが、「ソーシャルメディアは外せない要素」と感じられたのはなぜでしょうか?

芝辻:SNSでは画像や漫画が結構シェアされていると思います。世界的には珍しい状況なのですが、X(Twitter)は日本では好調ですよね。実はX(Twitter)と漫画の相性はすごくいいんです。

たとえば、この「月曜のたわわ」っていうのはX(Twitter)で生まれた有名な漫画なんです。ちょっとエッチっぽい感じはあるのですが、毎週ものすごくリツイートされています。X(Twitter)での人気が高かった こともあり、実は昨年アニメ化されたんです。

他にもX(Twitter)などのSNSで見られる漫画がアニメになったり単行本になったりしています。X(Twitter)で四コマ連載したものをまとめたサービスを出版社がやっています。弊社でも講談社さんと協力して出版している漫画があります。

このような形でSNS上にコンテンツを出すというものが増えています。Pixivなどイラストコミュニケーションのサービスはありますが、どちらかというとX(Twitter)側に人が流れて来ていたりしています。

伝わりづらい魅力を漫画で伝えた佐賀県の事例

芝辻:そう言った観点で言うと、PRはテキストよりも漫画の方がバズりやすいです。弊社ではエンターテイメントを活用して、異なる理解や価値観を上手く伝えようとする手法のことを「エンターテイメント」と「コミュニケーション」を合わせた造語で「エンタメケーション」と名付けて、企業の課題解決に役立てています。

「エンタメケーション」が上手くいった事例として、佐賀県さんを紹介します。元々佐賀県さんには県の認知度を上げたいという課題がありました。47都道府県の魅力度ランキング で、佐賀は低い順位にいまして、PRにものすごく力を入れているんです。その時の施策をご紹介します。

もちろん佐賀県の魅力はいっぱいあるのですが、なかなかテキストを使っても伝えきれず、当時は試行錯誤されていました。とにかく若者に佐賀を知ってもらいたい、とゲームを使ったり、ネットタレントを使ったりしていました。

そこで弊社が提案したのはクリエイターによる漫画の活用です。二次元的なものが好きな人、特に若者は、やっぱりこういうクリエイターさんをSNSでフォロー しているので、その課題に対して私達が考えたのがこの企画です。

上記のような4コマ漫画が掲載される漫画サイトを制作し、チームに10名ほどSNSで話題のクリエイターを巻き込みました。昨年12月末から1月末までの1か月間で約15万PV、なかでもX(Twitter)による拡散は目標を上回り約5,000RT、約10,000いいねを獲得しました。

5. 「スルーされがち」な分野にも相性が良い漫画コンテンツ

小東:「エンタメケーション」と特に相性の良い分野はありますか?

芝辻:「スルーされがちだけど、人が本来知りたいと感じているもの」はとても相性がいいですね。

たとえば医療の分野。病気を未然に防ぐ未病と言う分野、具体的にはヘルスケア分野が最近注目されていますね。人は病気になったら「やばい!医者に行こう」と普通思いますが、いかに未然に防ぐか、生活習慣病や三大疾患になる前に食事のコントロールや運動、睡眠を取りましょうなど、あらかじめ知っておくべきことはありますよね。そういったものにどうやって興味を持ってもらうかという点に関して、かなり相性がいいと思います。

小東:たしかに「スルーされてしまうけど知りたい分野」ですね。なにか事例はありますか?

芝辻:コンテンツマーケティングの事例ですが、ヘルスケア関連の企業で、年間を通じてやっている企画があります。ライフログを録った方がいいとか、飲みすぎにはこのアプリが良いとか、なかなかそういったことが伝わりづらいのが課題のようでした。

そもそもライフログを管理する、そのサイトで相談する価値を理解してもらうために漫画を活用しました。本当は逆だったんです。「まずはライフログとりましょう」とアプローチしようと思っていたんです。

ただ当たり前ですが、ユーザーはなぜライフログを録るべきかわからないから、録ってくれないですよね。そこで漫画を使って啓蒙しました。そうすると、単純に専門家が監修している健康情報もテキストよりも、「ちょっと読んでみようかな」となるんですね。

6. 今後の展望

小東:最後に、今後御社が提供していきたい商材などがあれば教えてください。

芝辻:これからやっていく話になりますが、セブン銀行さんとWebと実店舗を活用した面白い企画を進めています。口座開設数を増やすための施策のひとつとして、口座のファンになってもらうためにエンタメを使うことになったんです。

一般層受けするものを、というアイデアもありましたが、まずは女性の特に一部の層をターゲットに絞ってイケメンキャラクターを創ることにしました。ピンポイントに刺していくことにしたんです。

自分の好きなキャラクターがプリントアウトされているカードをATMに差すとイケメンがこう音付きで回答するというものです。来年リリース予定です。リアル店舗ともどんどん連動していく予定で、これが上手く行けば男性向けキャラクターなども今後創っていく予定です。

小東:ありがとうございました!

この記事を書いた人:小東真人

ソーシャルメディアラボ編集長。地方や中小ビジネス向けセミナーなどを担当。
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。

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