LINEで保険料の見積もり件数が1.5倍に! チャットボット活用の最前線、ライフネット生命保険株式会社に聞いてみた

2017/12/13

インターネットを活用することで人件費や店舗費を抑え、お手頃な保険料で生命保険を提供しているライフネット生命保険株式会社。実はLINEアカウントも積極的に活用しており、12月現在で友だち数が37万を超えています。

オペレーターによる保険相談からチャットボットによる保険の見積り、さらにはグループトーク機能による1対多の相談サービスなど、LINEの先進的な活用について取材してきました!

Interview/ ソーシャルメディアラボ副編集長 小東真人

    ■目次

  1. プロフィール
  2. LINEアカウント活用の背景
  3. 自動応答と有人対応の両立まで
  4. グループトーク機能を導入
  5. 今後の展望

1.プロフィール

関口暁彦 氏:ライフネット生命保険株式会社 営業本部マーケティング部

森根光春 氏:ライフネット生命保険株式会社 営業本部マーケティング部

2. LINEアカウント活用の背景

小東:そもそもLINEアカウントを始めた経緯をうかがってもいいでしょうか。

関口氏(以下、敬称略):もともと弊社は電話オペレーターによる保険相談機能をお客さまに提供していました。外部機関から6年連続で3つ星の評価をいただくほど質は高いのですが、利用者層とターゲット層のズレが課題でした。電話相談の利用者の年齢層は40代以上が62%で、20代~30代の若年層の利用が少なかったんです。

LINEアカウントにおけるターゲット層をペルソナで考えた時に、育児や家事で忙しい人たちが該当しました。でも、彼らにゆっくり保険の話を聞いてもらうのは難しい。紙で郵送物を送っても、毎日が忙しくてなかなか見てもらえないですし。

そこでマーケット調査をしてみたところ、今後、生活者が希望するチャネルはメッセージアプリ、Webチャットということがわかりました。さらにそれを若年層に絞ると希望度がもっと高くなったんです。

小東:既存チャネルでは年齢層にズレがあったんですね。コスト削減や効率化は目的ではなかったんですか?

森根氏(以下、敬称略):純粋な経費削減、コスト削減の効率化という視点ではほとんど見ていませんでした。あくまでチャネル開発の一環です。若い方と新しく出会うためにLINEが必要という考えから始めています。

3. 自動応答と有人対応の両立まで

関口:弊社はLINEを2016年7月に開設したのですが、運用の大きな節目が2回あり、それぞれフェーズ1(2016年7月)、フェーズ2(2017年1月)と呼んでいます。

まずフェーズ1についてお話します。

フェーズ1:LINEにカスタマサポートを用意

 

最初にフェーズ1では、LINE上にカスタマーセンターを用意してチャットができる環境を目指しました。リッチメニューの「保険相談」を押して、保険プランナーに繋げられるようにしたんです。

結果として、LINEでは20~30代の利用者が全体の8割にのぼりました。サービスの利用時間は通勤時間や昼休憩、夕食後が多い。隙間時間を使って、保険プランナーとやり取りされているお客さまが多い印象です。実際にご利用されたお客様からは、「LINEで保険相談できるのは簡単で、画期的」との声もいただいています。

ただ、保険プランナーによる有人対応が必要なので24時間のフル対応は難しい。そこで、いつでも対応できる環境を提供するためチャットボットを用意しました。それがフェーズ2です。

フェーズ2:24時間対応を目指して自動化を進める

関口:フェーズ2では「ほけん診断」や「保険料見積り」など機能を追加して自動化を図りました。チャットボットでトークスクリプトを作り、「子どもの教育費に備えたい」や「がんの治療費に備えたい」などの選択肢を押してもらいながら順番進んでいただくと、その人のニーズを汲んだ保険商品を提供できる機能です。

診断結果後は、Web上の見積りや商品情報ページに移動するだけでなく、保険プランナーとの有人相談に移行することも可能です。結果として、自動応答と有人対応のハイブリット、2段構えが可能になりました。これによりユーザーの意向を高められ、KPIのひとつにしている保険料の見積り数が1.5倍に増加しました。

グループトーク機能導入へ

森根:そこから、保険相談のサービスをさらに広げる手段として「グループトーク機能」の導入を進めました。

グループトーク機能は、若い方のなかでも特に、忙しくて保険ショップなどに出向いて保険相談にいけない共働き層がターゲットになります。ご夫婦一緒で相談したいけど時間が合わないといったニーズに応えるため、オンラインで複数人一緒に相談できる窓口を作りたいと以前から考えていました。

4. グループトーク機能を導入

記録が残るため時間差でも相談内容が見られる

森根:この機能は、2017年9月からスタートしました。LINE上で「ほけん相談」ボタンから「グループで相談する」を選択し、一緒に相談を受けたい人を招待すれば、グループでの保険相談が受けられる仕組みです。

小東:どういったところがお客様に喜ばれていますか?

森根:メッセージの記録をすべて残せることはとくにご好評いただいています。細かいニュアンスもその場にいて一緒に説明を受けたら、より話もスムーズになりますよね。実際の保険の営業でも、最後に「奥さんを連れてきてください」ということが結構あります。でも、グループトークなら保険プランナーとのチャット履歴を後からでも追っていけるので、情報共有の手間がなくて済むんです。

たとえば旦那さんが働いていて、昼休憩で聞いてみようかなという場合、奥さんは子育て中で、子供の面倒を見ていて一息ついた時に、LINEの履歴を見て、やり取りを見返したりできます。時間をずらして会話も可能です。保険プランナーもその履歴を見られるので、スムーズに入れますしね。

電話対応スタッフを少しずつLINEチャット部隊に

小東:グループトーク導入以前にも当てはまりますが、保険相談をするオペレーターの体制構築はいかがでしたか?

森根:体制構築していた当初は大変でしたが、弊社にはもともと電話対応スタッフがいてベースはできていたので、電話からチャットにほぼ移行するだけで済みました。電話対応スタッフのおもな業務は保険に関するコンサルティングなので、アセットは大きく変わらないからです。

また少しずつPDCAを回せたことも良かったと思います。フェーズ1の時は1対1、フェーズ2の時は1対多というように、時間をかけて順を追ってオペレーターの業務を広げていけたのが良かったと思います。

課題はユーザーに認知されていないこと

関口:ただ、一方で改善余地もあります。グループトーク機能は世間に認知されていないこともあり、分かりづらく、ユーザーの誘導や遷移をもっとスムーズにできないかと思っています。

現在は静止画の案内を数枚入れているのですが、それを動画のチュートリアルにしようと検討しています。また、こうして取材をして頂いて、世の中へ発信していただけることはとても助かります(笑)

5. 今後の展望

小東:最後に、今後やっていきたいことを教えてください。

関口:保険に対して徐々に意向が高まっているユーザーをさらに後押しするようなコンテンツを、より活発に配信していく予定です。たとえば、今は外部のファイナンシャルプランナーさんとタイアップして、「先生教えて!3分ほけん講座」という記事を10本立てで作り、それを特定のユーザーにセグメント配信をしています。

森根:スマホで読みやすい縦スクロール記事なのですが、それを読み進めたら、どのように保険を選べば良いのか学べる形式になっています。

小東:各ユーザーの購買意向に合わせたコンテンツをLINEで流しているんですね。

森根:はい。弊社の場合、Webサイトに自らにアクセスして来てくださる人は、ある程度保険に迫られていて具体的に保険検討している人が多いのですが、LINE上では保険をまだ具体的に検討されていないユーザーも多くいます。LINEアカウントは、そういう潜在層のユーザーさんたちを主にお相手したいですね。

小東:そうなんですね、ありがとうございました!

この記事を書いた人:小東真人

ソーシャルメディアラボ編集長。地方や中小ビジネス向けセミナーなどを担当。
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。

Twitterアカウントはこちら。