ソーシャルメディアの売上貢献が分かる。マーケティングの全体最適を促す、株式会社サイカ「マゼラン」に注目

2017/12/15

ソーシャルメディアを含め、オンライン・オフライン多種多様な施策がマーケティングにおいて繰り広げられる昨今。その全ての効果を管理し最適化していくハードルは年々上昇しています。

本来予算を割くべき所へ予算を割けているのか、費用対効果があるのかなど、考えなければいけないポイントは数多存在しますが、それを全ての施策で確認し、その相関関係まで出していると膨大な工数がかかってしまう。そういったマーケターの課題解決のため、株式会社サイカはトータルマーケティングシミュレーター『マゼラン』を提供しています。

マゼランを通し、どのようにマーケティング施策を最適化するのか。そしてソーシャルでの役割はどのようなものになっていくのか。代表取締役CEOの平尾氏に話を伺いました。

Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑

    ■目次

  1. プロフィール
  2. 統計分析の知見がマーケティングに活きた
  3. 企業の課題は広告予算の全体最適化ができていないこと
  4. 自社で分析ができていない企業の現状
  5. ソーシャルの強みは波及効果だけではない
  6. 何がCVに繋がるのか、再評価すべきソーシャルの可能性

1.  プロフィール

平尾 喜昭氏:株式会社サイカ 代表取締役CEO

2.  統計分析の知見がマーケティングに活きた

大久保:はじめに、『マゼラン』とはどのようなツールかを簡単にお伺いできますでしょうか。

平尾氏(以下、敬称略):『マゼラン』は、トータルマーケティングシミュレーターです。トータルマーケティングと謳っているように、オンライン・オフライン関わらずあらゆるマーケティングに関わるデータを分析解析ができる。そして、シミュレーターと謳っているように、データを蓄積し単純に分析するだけでなく、未来を予測・推測するシミュレーションを行えるツールです。

実は、弊社は元々マーケティングではなく、統計分析コンサルを行う会社でした。そのなかで統計分析のツールをつくったりシミュレーションツールをつくったりしていたんです。当時はあらゆる業界・業種に対してサービスを提供していましたが、3年弱に渡って統計分析のコンサルを行う中で、クライアントに占めるマーケターの割合が大きくなっていきました

簡単に統計分析をできるツールのユーザーもほぼ広告代理店ないしは事業会社のマーケティング部。統計分析自体は幅広い用途がありますが、そのニーズを一番持っているのはマーケティング領域なのではないか。そう考え、マーケターに特化したツールをつくろうと、2016年9月にリリースしたのがマゼランでした。

3.  企業の課題は広告予算の全体最適化ができないこと

大久保:マゼランはマーケターにとって、どのような課題にアプローチするプロダクトなのでしょうか。

平尾一番大きな課題は、広告予算の全体最適化ができていないというものです。それぞれの施策ごとで部分最適化がされてしまい、それぞれのCPI(Cost per Install)、CPA(Cost per Action)至上主義に陥ってしまっている。CPAばかりが大切にされることで、全体を考えれば大切であるはずの認知系の施策など、コンバージョンに直接的に繋がらない施策は評価を得られず、そこへ予算が回らなくなる。

サッカーに例えると、ゴール前にめちゃくちゃたくさん選手がいて、よくわからないけどボールを蹴って「決めた人が偉い」みたいな状況です。それを総体的にちゃんと評価し、継続的にコンバージョンを出し続けられる環境をつくらなければいけない。そのために個別ではなく全体を最適化するために必要な効果測定をするツールが必要になります。

同社資料より。成果に紐づく媒体の分析や選定は多くの企業で課題に

大久保:全体最適をするために必要となる、コンバージョンに繋がらない施策の評価をするためにマゼランが役立つと。

平尾:はい。間接的にどの程度コンバージョンに繋がっているかを分析し、そこにどの程度の予算を割くべきかちゃんと理解をするために必要になるのがマゼランです。そこで費用対効果や必要な費用が算出できれば予算を抑えやすいですし、データや数字をもとに上長も説得しやすい。そういった解決策を提供しているのです。

同社資料より。オンライン・オフラインを横断した解決策を提案している

4.  自社で分析ができていない企業の現状

大久保:これまではあまり分析をしていなかった企業は、どのように施策のバランスを決めていたのでしょうか。

平尾:会社ごとに都合があるとは思いますが、1つは感覚的なもの。事業部内で受け継がれてきた方法を踏襲しているだけというものです。もう1つは相関関係をベースにある程度分析をして行っているところです。といってもシングルソースの情報を繋げて分析している場合が多いです。その場合人力入力が必要ですし、相関関係を分析するにもかなりの時間を要します。また人力での分析なので1対1での相関を見ているところが多いですね。

大久保:そこにマゼランが入ると、どのように変わってくるのでしょうか。

平尾:大きく2つ解決できるところがあると思っています。マーケティングには2つのPDCAがあります。1つは四半期かけて回すようなメディアプランニング。もう1つは、マンスリー、ウィークリーで回すランニングです。

メディアプランニングのほうでは重要なKPIや施策を選抜する上で役立ちます。各社多種多様な施策をされていますが、施策の数以上にKPIがあり、無論施策の幅も広い。この中で本当に達成しないといけないもの、予算をかけて戦略的に注力しないといけないKPIを選抜するというのがマゼランが行う1つの役割です。

マゼランは施策ごとに貢献度ランキングを算出するので、それぞれのKPI、施策がどれくらい結果に繋がる役割を果たしているかを一目で理解することができるのです。

もう1つはメディアミックスのような考え方で、どの施策とどの施策の相性がいいかを分析することです。そこから、一緒に動かした方がいいものを選抜し、運用すべきタイミングなどを合わせることができます。こちらは、マゼラン上で経路ランキングを出せるので、経路ごとにKPIの達成やコンバージョンに繋がっているものを整理し、相性の良い施策を見ていくことができるようになっています。

5.  ソーシャルの強みは波及効果だけではない

大久保:マーケティング施策全体を見た中で、ソーシャルはどのような役割を果たすものなのでしょうか。

平尾ソーシャルの一番の強さは波及効果にあると思います。感覚で言うとテレビに近いですね。認知、興味、検討、検索、成果といったステップがあるときに、ソーシャルは認知に強く影響を与える認識です。そういう意味でみるとソーシャルはすごく費用対効果がいいんです。テレビCMと同じような効果を圧倒的な低価格で実現できる。

また、必ずしも波及効果や認知向上だけとは言えないんです。「他の活用方法がないか」と言われればそんなことはない。それを明らかにするのが分析の役割です。過去にあった事例では、さまざまな媒体などの成果を分析していく中で、X(Twitter)上の口コミ数が増えることが最終的な売上増に繋がることがわかり、積極的にX(Twitter)の口コミを増やす施策を展開したこともありました。

6.  何がCVに繋がるのか、再評価すべきソーシャルの可能性

大久保:ツールを使うことで可能性の再定義にも繋がっていると言うことですね。

平尾:実際、マゼランをご利用いただいているクライアントの中にも、ソーシャルの役割を再定義したい、再評価したいという狙いでご利用いただいている方もいらっしゃいます。ソーシャルの価値を貢献度、金銭的な価値ベースで見ていく。

すると、CPAが良くないと思っているソーシャルの施策が実際どれほどCV(コンバージョン)へ繋がっているかが一気通貫で見えてくるんです。するとソーシャルをやめた場合これだけコンバージョンが減るというのも分かってきます。

さらにもう1歩踏み込んで見てみるとすれば、ソーシャルにしかない「いいね」や「シェア」の価値をどう計っていくかが面白い。インプレッションには実は意味がなくて、「いいね」を押させることにこそ価値がある場合もある。そこは「いいね」ではなく「シェア」かもしれない。そこまで見えてくるとより精度の高いソーシャル戦略もたてられるでしょう。

大久保:「いいね」や「シェア」がどれほどコンバージョンへ貢献しているかも見えてくると戦略的に狙い方が変わってきますね。

平尾:すると、より戦略的にソーシャルを使えるようになるんです。ソーシャルのコンサルレベルでやられている会社だと、すぐ使えるでしょう。計測できる数値があればPDCAは回ります。そういう意味でソーシャルは良い実験場だと思いますね。