番宣だけでは時代遅れ? ソーシャルメディアで話題をつくるテレビ番組のX(Twitter)活用術

2018/03/14

近年のスマートフォンの普及により、テレビの視聴時間がじりじりと少なくなってきています。博報堂DYメディアパートナーズの調査によると、2006年と比較して、若者世代を中心に東京地区のテレビの視聴時間が2006年と比較して24.5分減少しています。対して近年視聴時間が増加傾向にあるのが携帯電話/スマートフォンで、2006年より2017年の視聴時間が79分も増加しています。

出典:博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 「メディア定点調査2017」

http://mekanken.com/mediasurveys/

そのような状況の中、テレビ局は視聴のきっかけをつくるべく、ソーシャルメディアを活用して話題を醸成する必要性が高まってきています。そこで今回はX(Twitter)上で盛り上がったテレビ番組の事例をピックアップ、その考察をして、ソーシャル上で話題になる要因を分析しました。

    ■目次

  1. 火曜ドラマ『カルテット』|TBSテレビ
  2. 日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ』|TBSテレビ
  3. 水曜日のダウンタウン|TBSテレビ
  4. けものフレンズ|テレビ東京
  5. まとめ

1. 火曜ドラマ『カルテット』|TBSテレビ

「みぞみぞする」

作中の登場人物によって、「みぞみぞする」という言葉がなんども使用されています。それをX(Twitter)上で使うユーザーが現れ、ハッシュタグにもなっています。

「みぞみぞする」とは感情の機微を表現する意味合いがあるようですが、はっきりとした定義は確認できませんでした。大枠の共通認識の中でユーザーがそれぞれの解釈で使用しているようです。

 

 

作中の時間軸のズレがX(Twitter)上で話題に

また、ドラマの6話の中で登場人物の一人が使っていた携帯電話の時間から、作中の時間軸のズレが生まれている事が発覚し、X(Twitter)で指摘や考察を進めるユーザーが現れました。

 

 

それがX(Twitter)上で拡散され、事態を重く見た公式アカウントがX(Twitter)上で謝罪する事態になりました。この一連の流れがWebメディアにも掲載され、X(Twitter)の枠を越えた大きな話題になりました。

話題にするには、説明しすぎないことが重要

「みぞみぞする」がユーザーに愛され、使用される様になった背景には「シンプル」で「汎用性が高い」事が考えられます。ネット上のコミュニケーションの中で、ユーザーもついつい使ってしまうフレーズを決め打ちすることがカギになりそうです。

また明確ではない定義で解釈の余地があるものは、ユーザーにとって汎用性が高く使用しやすくなるのもポイントです。

2. 日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ』|TBSテレビ

トレンド欄に乗らないハッシュタグ

番組制作サイドの指定したハッシュタグがユーザーの要望を受けて変更になった事例もあります。番組制作サイドの指定したハッシュタグがユーザーの要望を受けて変更になった事例もあります。

当初、番組制作サイドは「999tbs」といった数字が先頭に来るハッシュタグの利用を呼び掛けていました。しかしそうしたハッシュタグでは過去シリーズの放送時もトレンド欄に載らなかったこともあり、変更を訴えるユーザーの声が公式アカウントに寄せられました。

 

 

ユーザーからの意見を踏まえ、公式アカウントがユーザー投票形式で新しいハッシュタグの応募をすることになりました。

 

 

最終的に1位と2位のハッシュタグが使用されています

ユーザーと近い距離感で一緒に盛り上げる

またどのような番組の公式アカウントにも、ツッコミが入ることがあるでしょう。そこで真摯に向き合い、対応しコミュニケーションを取ることでユーザーの間でも意見をしっかり反映してくれていると認識が生まれます。

そのようにしてユーザー間で「みんなで番組を盛り上げたい」という気持ちが強くなっていくのではないでしょうか。ユーザーとコミュニケーションを取りやすいX(Twitter)は、ユーザー達と積極的にコンテンツを盛り上げるのにはうってつけですね。

3. 水曜日のダウンタウン|TBSテレビ

クロちゃんの行動を24時間体制でツイート

人気お笑い芸人「安田大サーカス」のクロちゃんを題材に、番組制作サイドがクロちゃんをいじるX(Twitter)アカウントを複数作った事例も存在します。

まず初めに「リアルクロちゃん」というアカウントを番組が作り、クロちゃんの行動をこっそりツイートするイタズラのような企画です。

 

 

それから数か月後、次に「フューチャークロちゃん」というアカウントも登場しました。こちらはクロちゃんの行動予言をおこない、スタッフが予言通りの行動をクロちゃんの水面下で実現させるといった企画でした。

「フューチャークロちゃん」の運用時には、放送前から一部のユーザーの間で「水曜日のダウンタウンの企画では?」と疑うツイートも見られ、クロちゃん本人も放送をリアルタイムで視聴し、その感想をX(Twitter)で実況しています。

またアカウントの存在を知らなかったユーザーが放送中にアカウントを確認していた様子も確認できます。

 

 

 

 

TVコンテンツはオンエア中だけで完結しない時代に

この企画から考察できる点が二つあります。

一つ目が、「番組放送前にX(Twitter)上で話題を醸成することで、視聴のきっかけを作ることができる」という点です。番宣といった形でメディアに番組のコンテンツを露出させる以外にも、SNS上でユーザー間での自然な拡散を利用し、コンテンツの宣伝ができる可能性を提示しました。

二つ目が、「X(Twitter)を利用した企画作りで視聴者の番組への没入間を高めることができる」という点です。オンエア中に完結する一方的なテレビコンテンツでは味わえない、自分も番組の一部に参加しているような、新しい形で番組を楽しめるようになっています。

4. けものフレンズ|テレビ東京

「IQを溶かす」と言われるシンプルなセリフ

作中でキャラクターが発言する、「すごーい」や「たーのしー」といったシンプルだけど耳に残る名セリフがネット上で流行、真似するユーザーが今でも多数見られます。

 

 

また「あなたは○○なフレンズなんだね!」といった、そもそも作中で使用されていないセリフも流行する現象も見られました。

作中の伏線を考察する「考察班」

一見ホンワカとした世界観のこの作品ですが、エンディングに実在の遊園地をモチーフにしたと思われる廃墟が登場するなど、作中の節々に伏線が散りばめられています。

そうした背景から、次第にX(Twitter)上で発見した伏線やその考察を発信する「考察班」と呼ばれるユーザーが話題になりました。

 

 

 

 

ネットスラング化したセリフと説明されない伏線がバズの起爆剤に

「みぞみぞする」と同様に、こちらも汎用性の高いセリフがネット上のコミュニケーションに上手くはまった事例と言えるでしょう。ネットスラングとして拡散していく内、作品を見ていない層にもヒットしたのが人気になった理由だと考えられます。

通常どのコンテンツにも考察をするユーザーは一定数いますが、考察をするユーザーそのものが話題になったのは、作品内で説明されない様々なネタが散りばめられていたからではないでしょうか。そうして「考察班」という一つのコミュニティが形成されたのではないかと考えられます。

5. まとめ

今回X(Twitter)上で話題になった事例をまとめると、いくつか共通点が浮かび上がってきました。

シンプルで汎用性の高いセリフ

「すごーい」や「みぞみぞする」といったコミュニケーションに使いやすいセリフは、そうでないセリフと比べて比較的拡散しやすいと考えられます。

視聴者独自の解釈・考察ができる余地を残す

番組コンテンツ内に視聴者がそれぞれ解釈できる余地を残すことで、けものフレンズの「考察班」のようにX(Twitter)上で自分なりの考えを発信したり、ユーザ間で話題になる下地を作ることができます。

X(Twitter)上で制作サイドとユーザーの距離感が近くなっている

X(Twitter)上で番組サイトとユーザーとのコミュニケーションが取ることで、ユーザーと一緒に番組を盛り上げることができますね。また水曜日のダウンタウンの例のように、X(Twitter)上で企画を進めることで、より番組の没入間を高めることができます。

こうしたポイントは、人々がX(Twitter)上で共通のテーマで盛り上がろうとする心理が影響していると考えられます。

コンテンツをX(Twitter)上で話題にするには、コンテンツからアカウント運用まで、そういったインタレストグラフの土台作りをすることが重要なのではないでしょうか。

この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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