商品の特性を生かす!「カラフルジョイ」キャンペーンに学ぶ、UGC創出のイロハ
2018/10/12
昨年辺りからInstagramを中心としたSNSで、ディスペンサーに入った赤や青、黄色、緑といった色が2層になったカラフルな液体をご覧になったことはありませんでしょうか。これはP&G社の「JOY」を使ってつくられたもので、見た目の美しさからインスタ映えします。製造販売元であるP&G社が「カラフルジョイ」としてキャンペーンを開始すると、認知が広がり、投稿も一気に増加しています。そこで今回はSNSを通じて商品を話題にしてもらうために必要なこと、ポイントについてご紹介します。
- ■目次
- SNSをきっかけとしたユーザーの購買行動
- そもそも「カラフルジョイ」とは
- 実際にカラフルジョイを実践してみた。
- 企業として、UGCを作ってもらうには何をすればよいのか?
- まとめ
1.SNSをきっかけとしたユーザーの購買行動
従来、広告によって認知を広げ、消費者の欲求をかきたてることで購買してもらうことが主流であった、ユーザーの購買行動。
しかし現在では、X(Twitter)やInstagramといったSNS投稿による拡散が認知のきっかけになることが増え、購買行動のプロセスが変化してきています。これにより、広告に大きな予算を割けない中小企業であっても、アイデア次第で広告並みに認知を広げることも可能になっています。
広告代理店でソーシャル部門の立ち上げ経験をもち、X(Twitter)のマーケター界隈で特に有名なjigen_1さん(@Kloutter)が、ユーザーの購買行動を「ULSSAS」というフレームワークで解説しています。
- User Generated Contents(ユーザーが制作、生成したコンテンツ)
- LIKE(ユーザーがSNS上で行う「いいね!」や「シェア」)
- Search1(X(Twitter)、Instagramなど)
- Search2(Google、Yahoo!など)
- Action(商品やサービスの購入)
- Spread(承認欲求を乗せた拡散)
このフレームワークからもわかるように、SNSで認知を広げるためには最初のUGC、つまり、いかにユーザーに自社の商品・サービスを投稿してもらえるようにするかが、もっとも重要であるといえます。
参照サイト:
本当のインフルエンサーとは、自分の投稿をリツイートしてくれる人|ビッグデータを扱うjigen_1さんの語るTwitterオーガニック論とは?
2.そもそも「カラフルジョイ」とは
今回、取り上げるP&Gのカラフルジョイ。ここではまず具体的にカラフルジョイがどういったものなのかについてご説明します。
カラフルジョイとは、中の色が見える透明な詰め替えボトル(ディスペンサー)にW除菌ジョイと透明ボトルのジョイを注ぎ、2層にするものです。W除菌ジョイと透明ボトルのジョイは、W除菌ジョイのほうが比重が大きいことから下に沈むため、綺麗に2層にわかれるようになっています。
P&Gでは、カラフルジョイの作り方を説明した特設サイトを開設。さらにInstagram上にアカウント(pg_colorful_joy)を作成し、2種類のジョイでオリジナルボトルをつくり、Instagramに「カラフルジョイ」、「PG」のハッシュタグ付きで投稿するとプレゼントが当たるキャンペーンを開始しました(投稿は2018年10月8日まで)。
参照サイト:
https://www.instagram.com/pg_colorful_joy/
キャンペーンが始まってからのユーザーたちの反応を調べてみた
キャンペーン開始後、Instagram上にどういった投稿がされているのか、いくつか投稿事例をご紹介します。
このように背景に工夫したもの、並び方を変えて何枚も投稿したもののほか、動画、画像を使ってカラージョイの作成方法を紹介したものも多く、これを見たユーザーが参考にしてまた投稿するといった良い循環が生まれています。
またこのキャンペーンでは、Instagramに投稿することがルールですが、X(Twitter)にも多くのカラフルジョイが投稿されています。
どうしても作りたかったの…
洗い物作業をアゲルのよ…#カラフルジョイ https://t.co/5wVMQaAzCh pic.twitter.com/Z3nKdLOH4f— Kou_SingDance (@neg_gnignis) 2018年9月21日
カラフルジョイ作って見ました!
可愛い❤息子もスイカ色だ!と感動してた(笑)#カラフルジョイ pic.twitter.com/98NYpXn9fc— しーちゃん (@hikaakimama) 2018年9月26日
このようにキャンペーンとは関係なく、もしくはキャンペーンを知りながらも、キャンペーンのプレゼント対象ではないX(Twitter)にも多数の投稿が寄せられています。
このことからもカラフルジョイがネット上で話題となっていることをうかがい知ることができます。
3.カラフルジョイを実践してみた
ラボ編集部でもジョイを購入し、実際にカラフルジョイのボトルを作成してみました。
最低限用意が必要なのは、以下の三点です。
- 空の詰替え用ボトル
- 透明ボトルのジョイ
- W除菌のジョイ
早速P&Gが提供するカラフルジョイキャンペーン用のInstagramのアカウントを確認してみます。
Instagramの写真の並べ方を最大限利用したユーザーの目を引くレイアウトになっています。左下の「作り方」と書いてある投稿を確認すると、キャプションで作り方を確認できました。
ユーザーにとっては注意しなければいけませんが、緑のパッケージのジョイボタニカルは中身が透明なので、カラフルジョイには活用出来ませんでした。
説明に従えば、簡単にカラフルなジョイのボトルが作成できました。食器洗いにも問題なく使用できそうです。一度ボトルとジョイを購入してしまえば手軽に作れるので、キッチンをおしゃれにしたい方は実践したくなるのではないでしょうか。
4.企業として、UGCを作ってもらうには何をすればよいのか?
多くの人にとってSNSが日常的なものになったことで、これまでは予算の都合で大きな広告を打つことができなかった企業の商品、サービスがSNSを通して認知を広げていくことも珍しくなくなっています。
しかし基本的にはSNSで認知が広がっていくのはすでに名が知れている企業、メーカーの商品・サービスです。まだ多くの人に知られていない中小企業が、何もしないでユーザーが勝手に商品、サービスをコンテンツとしてSNSに投稿するということは、まずないと考えていいでしょう。
では、どうすればUGCを生み出すことができるのでしょうか?
UCGには「自然発生型」と「盛り上げ型」の2パターンがある
そもそも、商品やサービスがSNS上でコンテンツとして投稿され認知を広めていくには、企業の意図とは別にユーザーが投稿することで自然と広まっていく「自然発生型」と、企業が率先して行う「盛り上げ型」との大きく2通りあります。
明治ザ・チョコレートのケース
自然と広がっていく方法の事例として、最近では明治ザ・チョコレートがあります。
明治ザ・チョコレートは、2014年9月に発売されたチョコレートです。これまでにないシンプルでクラシカルなパッケージから、ユーザーがお札入れ、スマホケース、ティッシュケースに代用したものや、余白にイラストを描いたものなどが次々とX(Twitter)に投稿され、大きな話題となりました。
カラフルジョイのケース
今回ご紹介したカラフルジョイは、キャンペーンとして企業が主催して行っているため、方法としては「盛り上げ型」となります。
基本的にSNSで大きく認知を広がるときは、ユーザーから自然発生的にコンテンツが投稿されていく方法のほうが一般的です。しかしカラフルジョイに関しては、企業が作り方やおすすめの配色を紹介したことで、盛り上がったケースだといえます。
カラフルジョイはなぜUGCを生み出せたのか
まずは、今回の「カラフルジョイ」からわかる、UGCを生み出すポイントを確認しましょう。
- 作り方が簡単で誰でも手軽にできた
- おすすめの配色を紹介しつつもユーザーに工夫できる余地を残した
- パッケージの「洗剤感」が少なくオシャレでSNS映えした
- LPやInstagramのアカウントを作成し、作成の手軽さを訴求した
以上のポイントが今回、ユーザー間で「カラフルジョイ」が話題になったと考えられる理由です。
UGCを生み出すヒント
では企業として、自社の商品やサービスがSNS上にコンテンツとして投稿されるためには、どういった工夫が必要でしょう。
そのポイントとしては、次のようなものがあります。
商品やサービスの余白を作る
例えば、明治ザ・チョコレートでは、パッケージがクラシカルでシンプルであったことから、ユーザーがほかの使い道を考えたり、自分なりのイラスト、装飾をしたりする余地がありました。
そしてカラフルジョイでも、自分なりの色の組み合わせや、それを入れるディスペンサーを工夫するといった余地がありました。
つまり、商品、サービスだけで完結するのではなく、それに一つアイデアを付け足す余地を残すことで、ユーザーは競ってSNSに投稿したくなります。これは冒頭でご紹介した新しいユーザーの購買行動フレームワーク「ULSSAS」の最後にあるSpread(承認欲求を乗せた拡散)です。自分オリジナルのものをつくれば、それを投稿することで自分の承認欲求が満たされます。これを上手く活用することで、ユーザーへ投稿を促します。
「SNS映え」が手軽に作れるようにする
もうひとつの方法が「SNS映え」です。これも明治ザ・チョコレート、カラフルジョイ共にSNS映えするオシャレで綺麗なコンテンツが簡単につくれます。しかもそれがどちらも数百円で可能です。SNS映えさせるためには、何と何を絡めれば投稿されるようになるのかを考えるのも重要なポイントです。
UGCの発信を手軽にできる方法をユーザーに知らせる
明治ザ・チョコレートの場合、単にパッケージに手を加えるだけでオリジナルなものをつくることができます。これが自然発生的に投稿が増えた最大の理由でもあります。これに対しカラフルジョイの場合、作り方がわかれば簡単ではあるものの、投稿されたものを見ると一見難しそうなイメージがあります。
そこでP&Gはカラフルジョイの特設サイトを開設し、洗剤2つと透明なディスペンサーがあり、洗剤を入れる順番さえ間違えなければ誰でも簡単につくれることを動画や画像を使って説明しました。更にInstagramのアカウントを目を引くように写真のレイアウトを工夫して設置しました。
これにより簡単につくれることを知った多くのユーザーが一気に投稿を始め、急速に広がっていくきっかけになっています。さらに「#カラフルジョイ」、「#PG」といったハッシュタグを設定し、ユーザーで共有できるようにしたことも、投稿が増えた要因のひとつです。
5.まとめ
企業がマーケティングやコミュニケーションを目的としてSNSを活用することが当たり前となった今、単に商品、サービスを紹介するだけではなかなか拡散されることはありません。
今回ご紹介したカラフルジョイは、作り方やおすすめの配色を紹介し、さらにユーザーが工夫できる余地を残す形でキャンペーンを開始したことが、大きな話題につながりました。このように、ただユーザーの投稿を待つのではなく、自らが積極的に投稿しやすい環境をつくり、告知していくことが、SNS上で拡散されるための最大のポイントといえるでしょう。
合わせて読みたい記事:
メディアが言う「SNSで話題沸騰中」は本当? セブンイレブン「ホットビスケット」のSNS拡散の流れを調査してみた!
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部