入場者数No.1千葉ジェッツふなばしのX(Twitter)におけるユーザーコミュニケーションの極意

2019/04/26

X(Twitter)のフォロワー数がBリーグの中で第1位、入場者数No.1も獲得した千葉ジェッツふなばし。

X(Twitter)での発信は「真面目:面白さ=2:8」と独自の世界観を確立しています。そこで今回はその運用を行っている”イケメン”広報担当の三浦一世氏に運用の極意について伺ってきました。

Interview ソーシャルメディアラボ編集部 板谷昂洋

    ■目次

  1. プロフィール
  2. 千葉ジェッツふなばしの運用体制
  3. 「真面目」と「面白さ」のバランス
  4. 「面白さ」を追求して分かった意外な発見
  5. X(Twitter)はいわゆる営業活動
  6. 最後に

1. プロフィール

メディアプロモーション・広報部門リーダー
三浦一世 氏

2. 千葉ジェッツふなばしの運用体制

板谷:千葉ジェッツふなばしのSNSの運用はいつからからやっていたのですか?

三浦氏(以下、敬称略):チームが発足した当初ぐらいからやっています。

今は選手もSNSに結構力を入れていてフォロワーも一万、数千人クラスがたくさんいます。なかでも富樫選手だと今は10万フォロワーを超えていて、クラブの公式がいつ抜かれるかヒヤヒヤしています。笑

板谷: メディアプロモーション・広報部門って全体で何人ぐらいいらっしゃるんですか。

三浦:二人でやってますが、SNSについては9割ぐらいは私が担当しています。もう一人のスタッフは、チームからのイベント情報の発信とか、いわゆる公式ページで発信するような真面目な内容を主に担当していますね。

もう一人の担当を「ディフェンス」というなら、私はどちらかというと「オフェンス」側。具体的には練習風景とか選手の素の表情、試合の写真などブースター(ファン)の皆さんに観て楽しんで頂けそうなコンテンツを毎日のように発信しています

板谷:なるほど。三浦さんは普段、具体的にどういう活動を行なっているのでしょうか?

三浦:選手達の取材が毎週のようにあるのですが、取材だけではなく、取材前の練習から行って写真や動画を撮影して選手の良い画が撮れれば、あわよくばアップできればいいなという感じで動いています。投稿用のネタはストックしていますよ。iPhoneのフォルダにジェッツの写真が13,500枚も。

3. 「真面目」と「面白さ」のバランス

板谷:SNS運用を強化しようと思った時、どのようなことを期待していたのでしょうか?

三浦:たとえば一般的な広告を打つとき、チラシや新聞掲載、ネット掲載もそうですけど、全国に打とうと思ったらものすごいお金かかってしまいます。

その点、SNSはちょっとしたきっかけで全国、下手したら世界の人に見てもらえる可能性がありますよね。Bリーグのファンはもちろんですが、それ以外の人にも千葉ジェッツふなばしというチームを見てもらえる、というポテンシャルがSNSにはあると思っています。その無限ともいえる可能性に期待していました。

板谷:今X(Twitter)のフォロワー数がBリーグでトップクラスですが、どんな運用方針でしたか?

三浦:当初はそれまでの流れを汲んで割と堅い発信を行うだけで、本当に「THE・公式」みたいな感じでした。たとえば試合結果を発信したときや、イベントの告知をした際にいただくユーザーからのコメント等へも特にリアクションはしてなかったんですよね。

そこで、数ヶ月ぐらい経った時に、「これだけいろいろコメントとかしてくれるのに、リアクションしないのはちょっと我慢できないな」と思って社長の島田に相談して許可をもらって、コミュニケーションを取り始めました。

そこからいろいろ公式としてのスタンスを模索してた時に、今は引退してフロント入りしている(元選手)の伊藤からアドバイスをもらったんです。「企業の公式アカウントですごく認知を得ているSHARPさんとかタニタさん、キングジムさんを参考にしたら面白いかも」って。

具体的にいうと「真面目:面白さ=2:8」みたいな割合だと、ちょうど上手い具合に堅くなりすぎず、親しみを持ってもらいやすいという話を聞きました

で、シャープさんとタニタくんって漫画になっていたりするので、それから私は実際に読んだりして参考にしました。そうして、「真面目:面白さ=2:8」くらいのスタンスで徐々に進めていきました。

いきなり「面白さ=8」でいったら「運営どうしたどうした」みたいな感じになってしまうとおもったので、温度感を見ながら進めてたのですが、徐々に温度感を調整していくことで皆さんに受け入れてもらえるようになったかなと感じています。

板谷:その後のフォロワー数やユーザーからの反応率も徐々に増えていったのでしょうか?

三浦:そうですね。フォロワー数は増えていきましたね。1回広告を打ったことがあるのですが、広告で獲得したフォロワーはやはりエンゲージメントが低いという特徴がありました。なので、ここ2年ぐらいは広告は全く打っていないですが、そのせいかエンゲージメントは以前よりかなり高くなったと実感しています。

4. 「面白さ」を追求して分かった意外な発見

板谷:「真面目:面白さ=2:8」にしてどのような変化がありましたか?

三浦:わかりやすい変化としては、直近で日本代表戦があった時に、リアルタイムで実況するようなノリでめちゃくちゃツイートしたんです。

こういう風に、観てる人の気持ちをそのままツイートするみたいな感じで。

たとえば他クラブに所属しているけど代表チームに入っている比江島選手に対して、「ヒエジーいけー」とか、もうバスケ観戦の熱をそのまま伝えたくて、実際に観戦しながらツイートしまくりました。

これに対して見ている人達が「なんか今日も公式荒ぶってて草」みたいな。結構いろいろ、楽しみにしてくれるコメントがすごくて。ここでもなんかフォロワーがちょっと増えたりとか。

代表戦は全部で2試合あったんですが、1試合目でかなりツイートしてから「もうこれ2試合目もやってくれるんだろうな」みたいなコメントがついて、これはやらないと駄目なやつだと。

板谷:ユーザーさんから期待されているんですね。

三浦:他にもチケットを買って欲しい時のツイートなんですが、「助けてください!」みたいなツイートをしたこともあります。こういった出し方は賛否両論あると思いますが、必死さが伝わったのか「それなら行ってみようかな」と思ってくれた方も一定数いました。こういったこともあまり他ではやらない呼びかけの仕方かもしれません。。

板谷:そうですね。

三浦:千葉ジェッツふなばしというチームは、Bリーグの中では割と「ヤンチャ坊主」というか、何かワクワクすることをやってくれそうな「風雲児」みたいなキャラでいこうと、代表の島田が決めているんです。真面目に保守的に行くっていう方向性も勿論ありますが、ジェッツは新しい試みに挑戦するっていうキャラですね。

だから発信内容もちょっと尖ったというか、そこまで切り込むかと思われそうなことを言ったり、こういうのをやっても「うわ、またジェッツ公式が何か言ってる!」って受け入れてくれる空気感だったり。そういったコミュニケーションをこの3年間で積み上げてこれたかなと思います

5. X(Twitter)はいわゆる営業活動

板谷:ちなみにリプライとかいいねに割いてる時間ってどれぐらいなんですか?

三浦:仕事をしてるとき、取材対応してるとか以外のときは寝る寸前まで大体やってます。

千葉ジェッツふなばしって働き方改革を推進しているので、基本的に残業は禁止なんですが、会社の問い合わせの方に、「千葉ジェッツふなばしの広報さんが夜遅いのに丁寧に返信くださるんですが、心配です」って問い合わせがきちゃったりとかしたこともありました。

板谷:「仕事しすぎだぞ」みたいな?

三浦:そう、大丈夫でしょうかみたいな。ありがたい話です。

ただ、SNSでアクセスが一番増えるのはやっぱり夜なんです。なので島田の方にも、申し訳ないですけど、夜は譲れないですと相談して、「無理しない範囲でね」と言ってもらっています。勿論仕事ですけど、ここでのコミュニケーションは、仕事であって仕事じゃないと思っています。

ここで言う、いいね押したりコメントを返したりって、わたしの中では広報の営業活動だと思っていて。というのも、チラシ配りとかポスティングで一軒一軒訪問して千葉ジェッツふなばしです!と集客するのって相当ハードル高いじゃないですか。

興味持っていそう、バスケ好きそう、試合観に来てくれるかもと感じるツイートを見つけたら、いいねやコメントをするようにしています。そうするとユーザーから「ジェッツさんからいいね押して貰った!」「これ行くしかないだろ!」といったツイートをして貰える。そういう意味では、本当に一軒一軒回らせて貰っているという感覚です。

最終の目標としてはやっぱりお客さんに「会場へ観に来て貰う」っていうところになってくるので、来場につながるのが嬉しいですね。

先日、川崎ブレイブサンダースさんのファンの方が、自分のお父さんのことをツイートしてたんです。「毎日いろんなチームのTシャツ着てて浮気者。もうBリーグが始まって、大げさじゃなく人生今までの倍は楽しそうに見えるから嬉しいんだけど」と。

その中にジェッツの名前が中に入っているのを確認したので、ジェッツ公式から「楽しんで貰うのは一番ですが、東京、千葉千葉、栃木、千葉千葉ぐらいの配分で1週間応援して貰えたら嬉しいとお伝えください」ってその方に送ったんですよ。

そしたらこの件があったおかげで、お父さんがジェッツ推しになってくれたらしくて。結局最終的にファンクラブ入会してくれたみたいです。

板谷:まさに営業活動ですね。 ちなみにファンとの特別な接点はあるのでしょうか?

三浦:そこに関してはある程度の線は引いていて、たとえばブースターの方との飲み会にまで行っちゃうみたいな関係になってくるとそれは仕事ではなくなってしまう部分も出てくると思うので、現状特別な接点を持とうとはしてないです。

6. 最後に

板谷:まだ観戦に来たことのない人に対して、ぜひ一言お願いします。

三浦:千葉ジェッツふなばしは、よくX(Twitter)でバスケ興味ある人に対してコメントをよく付けるんですけど、別に観に来てくれるのは千葉ジェッツふなばしの試合でなくても本当にいいと思っています。

今こうしてBリーグができて、日本代表も結果を残してやっとバスケが注目されるようになってきているので、ぜひ試合を見に行ってみて欲しいです!

けどその最初の入りが千葉ジェッツふなばしだったら、なおさら嬉しい。もし、最初のBリーグ観戦に千葉ジェッツふなばしの試合を選んでくれたなら、「また来たい」って思わせるだけのものは用意して待っているのでぜひ来てください!

板谷:ありがとうございました。