ドラマとX(Twitter)は相関する! 2019年ネットで話題の冬ドラマランキングトップ10
2019/04/25
4月は学期が変わり、気持ち新たに新生活が始まる季節。テレビも各番組によってリニューアルや新しいキャストへの入れ替えなど行われ、ちょっとした変化が感じられる季節です。すでに春ドラマは始まっていますが、1つ前のクールである冬ドラマのなかからネットで話題になったものを分析しました。
テレビというと視聴率を指標として考えがちですが、少し違った視点でテレビを見たときにどんな発見があるのか。テレビやコンテンツと絡めたSNS施策のポイントを考えてみたいと思います。
■ゲストライター:プチトマト
- ■目次
- 2019年冬ネットで話題のドラマランキング
- 視聴率とネットでの話題化
- 2019年冬、ネットで話題となったドラマの注目ポイント
- まとめ
2019年冬ネットで話題のドラマランキング
調査対象
調査期間は1月1日~3月31日までとし、その期間中に放送している民放キー局5局の連続ドラマ27番組を対象としました。
各番組のキーワードは公式アカウントのハッシュタグで使われているものをメインで設定。検索結果上に、ドラマと関係のないツイートが多数見られた場合は、除外キーワードを追加設定し、純粋なドラマの内容のみの分析としました。
調査方法
Web記事検索エンジンRUNDAを使用し、設定したキーワードを含むWeb記事の件数・内容を調査・分析しました。またSocial Insightを使用し、設定したキーワードのX(Twitter)上の投稿件数、リーチ数、RT数、1アカウントでの投稿件数などを調査・分析しました。
くわえて「Web記事件数」、「X(Twitter)投稿件総数」、「X(Twitter)リーチ総数」、「X(Twitter) RT総数」、「アクティブアカウント数」の5つの指標をそれぞれでランキング化。1位から順にポイントをつけていき、ポイント多いドラマを「話題のドラマ」と定義してランキングしました。
ランキング
ランキングトップ10とそれぞれの指標ごとのランキングは以下の通りです。
また、映画・ドラマ・アニメ情報を取り扱うWebメディア「ciatr」によると視聴率ランキングにフォーカスすると、以下のような結果でした。
- 1位:日10:30『3年A組今から皆さんは、人質です』
- 2位:水10『家売るオンナの逆襲』
- 3位:木9『ハケン占い師アタル』
- 4位:月9『トレース~秘捜研の男~』
- 5位:金10『メゾン・ド・ポリス』
- 6位:日9『THE GOOD WIFE / グッド・ワイフ』
- 7位:土10『イノセンス 免罪弁護士』
- 8位:火9『初めて恋をした日に読む話』
- 9位:木10『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』
- 10位:金10『後妻業』
2.視聴率とネットでの話題化
※ここでいう「Web記事」とは一般生活者が書くブログのようなものではなく、Yahoo!ニュースやlivedoorニュースなどWebメディアで取り上げられる記事を指します。
上のグラフは、視聴率とネットでの話題化の推移を簡略化してまとめたものです。分かりやすく比較するため、ネットでの話題化の推移は、X(Twitter)のリーチ数のみをピックアップしています。
ポイント①:公式アカによる番宣や視聴者のつぶやきにより盛り上がり
時系列で見たときにX(Twitter)での話題の盛り上がりは、一般的に放送日に向かって山を描くようにリーチが伸びます。これは公式アカウントによる番宣と、視聴者の放送内容の中継ツイートにより盛り上がりが形成されるためです。
このX(Twitter)の盛り上がりの山は、視聴率と相関していることが多いです。しかし放送回ごとのゲストキャストがアイドルでありWebで記事の掲載がされたり、自身で投稿を行うことで、突然リーチが伸びる場合もあるので、全てが視聴率と相関するわけではありません。
ポイント②:放送の合間のWeb記事コンテンツによる盛り上がりの継続
そして放送後は次の放送内容の情報以外に話題がまばらになるためリーチが落ち込むという流れです。
常に話題を途切れさせないためには、放送と放送の間に放送された内容のまとめ記事をメディアに掲載してもらったり、フォロー数の多いキャストのアカウントで宣伝してもらったりして、話題を維持しながら次回放送を迎える工夫が求められます。
検証! ネットで話題のドラマ「3年A組」を分析
以上の一般的な推移を踏まえ、2019年冬のネットで話題のドラマで1位に輝いた「3年A組」を分析してみます。Webの記事数とX(Twitter)リーチ数は数値が大きく異なるため、100を最大値となるように指数化を行いました。
まず視聴率とX(Twitter)のリーチ数を比べてみると、大まかに視聴率が右肩上がりに推移しているのに引っ張られて、X(Twitter)のリーチ数の山もだんだんと右肩上がりに推移しているのが分かります。
またWeb記事が放送間の下げ止まりに効果があるという点についても、9話と10話の間でドラマのクランクアップを迎えたことがWeb記事が掲載されたため、X(Twitter)のリーチ数も少し上昇しています。
視聴率自体も冬ドラマトップを走っており、ドラマのスピンオフがHuluで配信されるとアクセス殺到のためサーバーがダウンするほど人気でした。そのため視聴中はもちろんのこと、見逃し配信を見た視聴者の感想投稿は多くなっており「3年A組」の特徴的なポイントをグラフから深掘りしていくのは難しいです。
では、「3年A組」が特徴的なポイントはどこなのでしょうか。公式アカウント運用から紐解いてみます。
今回のドラマが学生モノであり、旬の若手俳優が多く出演していたのがほかのドラマにはない特徴的なポイントでした。通常だとドラマの中でメインキャストに絞って、投稿や番宣で活用することが多いです。しかし公式アカウントではドラマのメインキャストはもちろんのこと、メインでない生徒役の俳優たちも多く取り上げ、投稿量を増やし、話題を途切れさせないよう運用を行っていました。
今夜10:30はゾクゾクタイム👨🎓#片寄涼太 #3A pic.twitter.com/sNNqY7izYw
— 【公式】3年A組-今から皆さんは、人質です- (@3A10_ntv) 2019年1月20日
さらに放送日ごとに多くの生徒役の演者がSNS上で企画を行い、注目を集め続ける話題を提供していたことも特徴的です。たとえば3話目の放送日では、出演者1人1人が画像加工アプリで撮影したような写真の投稿を連続で行っていました。
3. 2019年冬、ネットで話題となったドラマの注目ポイント
各指標の説明・ポイント
2019年ネットで話題の冬ドラマランキングについて、特徴的な項目について考察を述べる前に、ネットで話題の冬ドラマランキングを構成した各指標について説明を行います。各指標の関係性は以下の通りです。
ポイント①:Web記事は、ドラマへの期待度
Web記事数は、Webメディアがドラマについて触れている記事の数を指します。記事数を伸ばすポイントは、放送前にいかにWebメディアに取り上げられるかです。放送前に今期注目のドラマとして取り上げられることで、その後、視聴率の如何に関わらず注目したドラマの内容が結果どうであったかを後追い記事として掲載され続けるためです。
以上から、Web記事数は、ドラマへの期待値を表す指標であるといえます。もちろん視聴率が好調のドラマや、キャストのスキャンダルなどもWeb記事として掲載され、転載も増える要素であるといえるでしょう。
ポイント②:X(Twitter)での反応はドラマへのリアルな反応
Web記事の量を増やし、期待感を醸成することで影響されるのが、X(Twitter)での反応です。X(Twitter)投稿数、X(Twitter)RT数は、文字通りの意味です。X(Twitter)の投稿数は、ドラマに関してつぶやいた量を表すので、ドラマへのX(Twitter)上でのリアルな反応を読み取ることができるます。
RT数によって、そのドラマにおけるネットでの影響力を持つ人物を確かめられます。RTの多い投稿は①公式アカウント、②キャスト、③主題歌・劇中歌のアーティスト、④視聴者の大きく4つに分類することができます。①公式アカウントの投稿は初回・最終回前後で伸びる傾向があり、②キャストの投稿は、X(Twitter)を当人が更新し、当人の人柄が伝わるような若い俳優の投稿や、グループに所属しているキャストが、グループアカウントで投稿するとRTが伸びます。④視聴者の投稿は放送内容のワンシーンがキャプチャされ、その画とセリフのパワーが強いと大喜利合戦のような形で盛り上がります。また決め台詞のようなシーンや共感されやすいセリフも、X(Twitter)上で盛り上がる傾向が強いです。
リーチ数はX(Twitter)投稿アカウント・X(Twitter)RTアカウントのフォロワーの総数であるため、投稿・RTを目にしている可能性のある人数を表します。
ポイント③:アクティブアカウントはドラマのファン
X(Twitter)内での盛り上がりによって醸成されるのがドラマのファンです。今回の分析ではドラマに関するキーワードを100回以上投稿した人をアクティブユーザーとして設定しました。RTによる投稿拡散は、ネットの話題化のために重要ですが、フォローしている人のタイムライン上ではRTは基本的には1回しか表示されません。
一方で、同じドラマであっても内容の違う投稿を多くすれば、タイムライン上で何度も表示され、ドラマについて強く認知させることができます。そのため、最終的には、アクティブユーザーを増やすことが、ドラマのファンを増やすことにつながり、X(Twitter)上のより多くの人にドラマに関しての認知喚起へとつなげることができるのです。
とはいえ、ドラマ自体がそもそも脚本やキャスティング、主題歌など様々な要素が絡んだ上で成り立つコンテンツです。ドラマ制作の定石を踏まえるのはもちろん、ネットでも話題となりより多くの人に楽しんでもらうためには、Webメディアの活用やSNSアカウントの運用を効果的に行いましょう。
具体例①:ザンビ
⛪️#齋藤飛鳥 #堀未央奈 #与田祐希#ザンビ #乃木坂46
ついに今夜💫#最終回
絶対見ろよっ☝️#飛鳥ちゃん #未央奈さん #よだちゃん#水曜深夜24時59分 pic.twitter.com/4MGWYdWRps— ザンビ (@zambi_project) 2019年3月27日
「ザンビ」は、乃木坂46の齋藤飛鳥が主演を務めるパニック青春ドラマです。ほかにも乃木坂46メンバーが総勢21名出演するため“乃木坂ドラマ”といっても差し支えなく、乃木坂ファンが多数投稿していることがアクティブアカウントのプロフィールからとから読み取れることからも、乃木坂ファンが楽しめる一作でした。
放送は平日の深夜帯ということもあり、視聴率ではランクインしなかったものの、投稿数・RT数・アクティブアカウント数ともに、好位置につける結果となりました。特に傾向としては、ドラマ公式アカウントによる乃木坂メンバーのコメント動画のRT数が多かったです。
具体例②:僕の初恋をキミに捧ぐ
💗情報解禁💗
『#僕の初恋をキミに捧ぐ』番外編がAbemaTVに登場✨
今だけ #僕キミ番外編 を #RTで予約 すると
昂サマ( #宮沢氷魚 )
耕太郎( #岐洲匠 )
成美( #富田健太郎 )が
≪女子にされたら嬉しい仕草💑≫を教えてくれるよ💌
しかも❗️2/9の配信時間をリプでお知らせ🎈— AbemaTV(アベマTV)@今日の番組表から (@AbemaTV) 2019年1月31日
「僕の初恋をキミに捧ぐ」は、累計発行部数800万部を超える青木琴美の同名マンガを、主演・野村周平、桜井日奈子で実写ドラマ化したものです。特徴としては、リーチ数が高く、アクティブアカウントも多かったことだといえます。
ドラマの番外編をAbemaTVで配信しており、130万超のフォロワーを持つAbemaTVアカウントがアクティブユーザーとして、ドラマについて多くコメントしたため、リーチ数が延びたといえます。
具体例③:ゆうべはお楽しみでしたね
ゆうたのを実家で観てたのだが、
ここのおおにた店長のレジのシーンがめちゃくちゃ小ネタきいてて面白かった。レジにサインインしようとして慌ててミスるやつね。
あるある〜俺もよくやる〜#ゆうべはお楽しみでしたね pic.twitter.com/evZq1OzDls— 「副」店長@animate横浜 (@animate_otani) 2019年1月15日
トップ10ランキング外ではあったものの、X(Twitter)投稿数やRT数ではトップ10入りした「ゆうべはお楽しみでしたね」もネットで話題のドラマとしてご紹介。このドラマは、オンラインゲーム「ドラゴンクエストX」をもチームにした同名漫画を実写化したもので、本田翼と岡山天音が主要キャストを務めました。TVerでも13,000の登録数を誇り、ドラマの放送が終わった今でもランキングのトップ30に入る人気ぶりです(4月12日現在)。
投稿数やRTが増えた要因としては、ドラクエファンと声優ファンという2つのクラスタをうまく捉えた内容であったからだといえます。RT数でトップは「ドラゴンクエストX公式」のプレゼント投稿が1位でした。
声優ファンと捉えた点としては、劇中ゲームのキャラクター声優に著名な声優を起用し、X(Twitter)アカウントを持つ声優が、ドラマについてつぶやくことで、ファンに対してもドラマの訴求にうまくつながったのだと考えられます。また、主要キャストとして出演していた声優でもある宮野真守に対する感想投稿もRT数が延びました。
4. まとめ
ドラマもいわば1つのブランドであると考えられます。コンテンツを週1回投じているのに、ドラマによっては放送回と放送回の間は話題が途絶えかけることもあるのです。だからこそ、SNSで話題になるための仕掛けやコンテンツパワーを上げるための企画力が重要なのです。
また、ドラマ放送前や放送間のWeb記事が視聴者の期待値となって、視聴者の反応を示すX(Twitter)での投稿数、リーチ数、RT数に繋がり、さらに、X(Twitter)での話題化を施した結果、アクティプアカウントであるドラマファンの醸成につながっていくというのは、いわゆる「ファンベース」施策の考えにも近いです。
テレビドラマ自体のコンテンツ力と外部のWeb記事、X(Twitter)での話題化という3つのメディアをそれぞれ補完的に活用し、ファンを育むというファンベースの実証とも言えるのではないでしょうか。