企業事例から見るX(Twitter)でユーザーモーメントを上手く捉える方法【書き起こし】

2020/10/01

どうも、ガイアックスの重枝です。本日はX(Twitter)でユーザーの「モーメント」をどのようにつかむか、というお話をさせていただきます。

※本記事は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルで配信した内容を書き起こしてまとめたものです。

1. ユーザーの「モーメント」とは


ユーザーの「モーメント」とは、ユーザーが特定のコンテンツで盛り上がるタイミングのことです。

そこに企業が文脈に合わせてツイートを行うことで効果的に拡散させることができます。

2. モーメントを捉えた例

バルス祭り

「バルス祭り」をご存知でしょうか。

テレビ番組を見ながら感想をツイートしていると、疑似的に一つのコンテンツを同時視聴しているような体験が得られるのですが、これを利用した遊びが「バルス祭り」です。

スタジオジブリ作品「天空の城ラピュタ」が日本テレビの金曜ロードショーで放送されるたびに、バルス祭りが発生します。

物語のクライマックスで、登場人物のパズーとシータが「バルス」という呪文を唱えて、ラピュタが崩壊するシーンがありますよね。このシーンで多くの人が同じタイミングに「バルス」とツイートする遊びが流行り、その結果25,088ツイートという秒間ツイート数世界記録が出ました。

今ではあまりないのですが、以前はこのバルス祭りでX(Twitter)が落ちることがありました。X(Twitter)が落ちるとクジラの絵が出て、ユーザーが「またクジラがあがった」「クジラだー」と言っていたのですが、それほど多くの人がX(Twitter)にアクセスしたということですね。

バルス祭りに合わせた企業の動き

このとくによく企業が行っていたのが、「バルス」に合わせてプロモーションを流すことです。

しかし、ただ「#バルス」「○○(商品)を買ってください」とツイートしても敬遠されるので、何かおもしろいネタが必要。

例えば日清さんは「バルス」の瞬間に、パズーとシータのようなモデルがカップヌードルを持った画像に添えて「ウマス」とツイートしました。

また、これもラピュタの中で有名な、ムスカの目が潰れるシーンを、ムスカのコスプレをしたモデルが再現するというツイートを投稿しました。

またタニタさんは、非常にシンプルに「バルス」の代わりに「タニタ」と唱えるツイートをしました。

このように、特定のコンテンツでユーザーが盛り上がる瞬間に、同じ文脈で自分たちのコンテンツを出すということがよく行われていたのです。

なお、この起源は2013年のツイートだと言われています。

スーパーボウル

アメリカの事例ですが、スーパーボウル(アメリカンフットボール、NFLの優勝決定戦)という大きな大会がありますね。アメリカ中の人が1億人以上視聴するスポーツのイベントですが、2013年のスーパーボウルで、停電が起き会場が見えなくなるという事態が起こりました。

全国の視聴者が真っ暗な光景を見続けるという状況になったのですが、この時にクッキーのオレオのクリエイティブチームが、“Power out? No problem”(「停電?何の問題もない」)とツイートを投稿したのです。

そこには“You can still dunk in the dark”(「暗闇の中でもオレオならダンクできますよ」)とあり、ダンクというのはオレオを牛乳に浸して食べるというスラングですが、このツイートが一気に拡散したのです。

3. 偶発的なモーメントが流行る

このような偶発的なモーメントが流行り、それに世界中のマーケターが注目した結果、リアルタイムプロモーションがX(Twitter)で流行することになりました。アメリカではFacebookでも同様の現象が起こりました。

しかし、これはなかなか計画通りにできるようなことではありません。それでも、スーパーボウルはアメリカ国民が釘付けになるイベントですから、同じようなモーメントを作ろうと知恵が絞られました。

例えば、試合展開を予想して、あらかじめ勝敗の行方やスーパープレイに関するクリエイティブ(素材)を用意し、タイミングが訪れた時にツイートする、ということが行われていました。

このように、各企業がリアルタイムプロモーションを実現しようと努力していたのです。

日本の場合

その後、日本の場合はテレビを見ながらツイートするようになります。テレビ番組は、ラピュタのように展開が決まっているため、どの瞬間にどの素材を投稿するか、あらかじめツイートを用意することができます。

このように、ユーザーのモーメントをいかに逃さないようにするか、試みられていたわけです。

しかし、これは最近下火になりつつあります。いまだに「バルス」のツイートは行われているものの、最盛期の半分ぐらいだと言われており、これからも減っていくでしょう。

オリンピックの中止もそうですが、国民が盛り上がるイベントの減少で、社会全体で一丸となり盛り上がる機会はどんどん減っています。

人々の興味関心がバラバラで同時に盛り上がりにくいという状況になっているのです。

4. 企業にできること

そのような状況で、企業ができる事は2つに分岐しています。

モーメントを作り出す

一つは自分たちでモーメントを作り出すことです。

グリコの場合

グリコの場合、11月11日がポッキーの日として商標登録されているはずですが、1111と長い棒が4本並ぶので「ポッキー・プリッツの日」という、自社商品に絡めた記念日にしています。

「#を付けてツイートしてください」「Instagramに投稿してください」と盛んにキャンペーンを行い、コンビニではポッキー用の棚を特設して盛り上げることで、11月11日に日本中のX(Twitter)やInstagramをポッキーだらけにするという試みが毎年成功しています。

人々は11月11日になるとポッキーを思い出し、そのブランドがどんどん浸透していくのです。これが、自分たちで自らモーメントを作り出すという例です。

明月堂の場合

そのほかに最近すごくおもしろかった事例が、お菓子の「博多通りもん」です。もともとは全国区で有名だったお菓子ではなく、売り上げが最近大幅に伸びたそうです。

きっかけは、浜崎あゆみさんをモデルにしたドラマ「M 愛すべき人がいて」です。

出演していた田中みな実さんが眼帯をつけていたのですが、その眼帯が博多通りもんに似ているということで話題になりました。ドラマを見ていた人たちが「あの眼帯、博多通りもんみたいじゃない?」と盛り上がったのです。

博多通りもんを製造する明月堂さんは、その盛り上がりを見逃しませんでした。

それまで宣伝以外で積極的にツイートをしていなかったのですが、ドラマに関連づけた投稿をするようになり、ドラマを自社の宣伝に利用するようになりました。

例えば、今流行っているアマビエに眼帯をさせたイラストを投稿したり、「M愛すべき人、おもしろいですね」と感想ツイートをしたり、さらにはドラマのスポンサーになったのです。

つまり視聴者がX(Twitter)でドラマの感想を見ながら、テレビで博多通りもんのCMを見た結果、インプレッションが上がったことで売り上げアップしたのです。

さらにCMについても、「実は全国区で初めてのCMでした」という投稿にいいね!をもらったり、見逃した人のために翌日にYouTubeにCMを投稿したりと、プロモーションに存分に利用しました。スポンサーですからドラマ側も問題がありません。

このように、ユーザーから発生したモーメントを見逃さないことで、博多通りもんは自社にしか使えないモーメントをうまく利用できました。

今は、世間一般に通じる大きなモーメントを利用するよりも、自ら自分たちのモーメントを作り出してしまう、あるいはユーザーから自然発生したモーメントを利用するという形にシフトしています。

5. どのモーメントを狙うべきか

これからは前述の「バルス祭り」やスーパーボウルのような大きいモーメントより、自社の関係のある小さなモーメントを狙うべきでしょう。

大きいモーメントとは、最近では日食やブルーインパルスに絡めてコロナ関連で医療従事者への感謝を表明するというものがありましたが、そのようなモーメントに企業が自社を関連づけることは簡単ではありません。

関連付けられたとしても、「無理に乗っかっている感」が出てしまい、逆効果になる可能性があります。

ですから、なるべく自社のファンがいそうなコンテンツと結びつけ、うまく文脈に乗せてアプローチをする必要があります。

例えばX(Twitter)はサブカルチャーとの相性がいいのが特徴です。「ドラクエウォーク」の発売時にはたくさんのツイートがされましたし、「艦これ」もよくファンの方たちがX(Twitter)で盛り上がっていますね。

大人気の漫画・アニメの「鬼滅の刃」もあります。それらの文脈にうまく乗せた投稿ができるといいでしょう。

今はこのように、全世界的なモーメントではなく、自社の商品やブランドと相性がいいモーメントを見つけて結びつける、あるいは自分たちがモーメントを作る、ユーザーが作り出したモーメントを見逃さないことで自分たちのブランドを広めることが流行りになっています。

私もどちらかというと、大きなモーメントよりもそのようなモーメントの活用を勧めることが多いですね。

最後に

本記事の内容は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルでも配信しています。

同チャンネルではSNSマーケティングの基本から、世の中で話題のケーススタディを取り上げて分かりやすく解説しています。ぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします!

この記事を書いた人:重枝義樹

マーケター。ソーシャルメディアマーケティング事業部 部長。ガイアックスでは大手企業、官公庁中心にソーシャルメディアマーケティングの支援を行う。ガイアックスでの5年に及ぶ経験をもとに、本気でソーシャルをやりたい人のためにSNS禁止のガチ勉強会も行う。

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