「SNSの口コミはマーケティング活動全体の写し鏡」 真の評価を知るX(Twitter)口コミ分析とは
2017/02/06
X(Twitter)のデータを元にした調査サービスを提供している株式会社BONDIC。映画『君の名は』がヒットした要因をX(Twitter)の反応から分析したレポートは、マーケティング界隈で大きな話題となりました。
今回は、同社代表取締役社長の小池氏にお話を伺いました。なぜ今X(Twitter)分析なのか、ユーザーに愛され、そして買ってもらえる商品・サービスを作るために必要なことはなにか、長年データ分析に携わってきた経験からご解説いただきます。
Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑
text / 青木麻里那
- ■目次
- プロフィール
- 現状のマーケティングの考え方は間違いだらけ!顧客に「Love you」を伝えるために
- SNSでの評判に自社の“本当の”立ち位置が表れている
- ここまで分かる!X(Twitter)のテキスト・感情分析×市場データ
- マーケティング施策の効果は部分最適化では見えない!口コミ分析で総合評価を知るべき
プロフィール
小池 玄氏:株式会社BONDIC 代表取締役社長
現状のマーケティングの考え方は間違いだらけ!顧客に「Love you」を伝えるために
「見つけて!」「買って!」に終始しているマーケティング
大久保:まず、なぜX(Twitter)の口コミ分析をサービスとして提供されているのか教えていただけますか?
小池氏(以下敬称略):元々弊社は顧客データ分析を中心にやってる会社でした。CRM、つまりお客様との関係性作りをサポートしていたんです。お客様とよりよい関係を築き、お互い心地よい状態を作っていく――弊社では「自分よし、相手よし、第三者よし」などと表現していますが――本当のCRMを提供しようということでやっていました。
そのなかで、今世の中に必要なデータ、お客様をより深く知ることができるデータを追求し続けていたところ、今はX(Twitter)が重要だという結論に達したんです。
大久保:顧客データ分析から、X(Twitter)の口コミ分析に広がっていったということでしょうか?
小池:そうです。口コミ分析について詳しくお伝えする前に、もう少し根っこのところ、弊社がマーケティングをどのように捉えているかというところから解説させていただければと思います。
日本のマーケティングはずっと「WATCH ME」が中心です。マス広告やPRは「見て!買って!」と言うもの。CRMも結局「どれだけ自分たちのことを伝えられるか」に終始している場合が多く、LOVE MEになってしまっています。
出典:BONDIC 社サービス資料より引用
でも本当のCRMは「LOVE YOU」なんです。「私はあなたのことを大事にしているんですよ」というのを一生懸命伝えなければ、当然のように効果はでません。
そしてLOVE YOUを伝えるためには、お客様のことを知らなければなりません。今「お客様の本音が一番表れているのはどこか」を考えたとき、その答えがSNSだったんです。
SNSでの評判に自社の“本当の”立ち位置が表れている
大事なのは、消費者に届くコミュニケーション
大久保:なるほど。お客様と関係性を作っていくために、SNSの分析が必要だったんですね。
小池:かつてはマスが消費者の購買に影響を与えていましたが、今は実際の購買への影響は薄くなってますよね。みなさん口コミやSNSのリアルな投稿を見て買いに行くわけです。
つまり、その中で自分たちがどういう立ち位置にいるのかを知らないと、マーケティング施策が正しいのか、効果的なのかどうか判断できません。
一般的なアンケートを使ったイメージ調査では決して悪いイメージではないのに、「なぜか売れない」という状況に陥るのは、そこに消費者の本音が反映されていないから。ソーシャルメディアの分析をすることで、本当の原因が見えてくることは多いです。
その中でもX(Twitter)は、一番本音がでている場所。FacebookやInstagramはあまりネガティブなことを書きませんが、X(Twitter)は感情が出ている投稿が多い。だからこそ、分析することでユーザーの本当の意思決定要因や購買後の満足度まで分かります。
ここまでわかる!X(Twitter)のテキスト・感情分析×市場データ
口コミでわかる!本当に評判のいいハンバーガーチェーンとは?
大久保:X(Twitter)の口コミ分析の重要性がよくわかりました。次に、具体的にどのようなことが分かるのかを教えてください。
小池:では実際の分析事例をもとにご説明しますね。
これはハンバーガーチェーンの評判を分析したデータです。各ハンバーガーチェーンに関する口コミをポジティブ/ネガティブで判定して評判を測定しています。
まずは全体の評判を見ると、Shake Shack とCarl’s Jr.、次いで、KUA‘AINAが高い。でも日毎のポジティブ/ネガティブの割合やバラつきを見ると、Shake Shack やCarl’s Jr.はばらつきが大きく、KUA‘AINAは少ないことがわかります。
ではなぜばらつきが生じるのかという要因を探ると、TV露出が関係していることがわかります。SNSのデータをTV露出のデータとかけ合わせるんです。
Shake Shack とCarl’s Jr.はTV露出が多くて、露出の合った日はSNS投稿数が増えています。ただし、TV放映後は悪い評判の方がより増えているんです。つまりTV露出は必ずしもプラスではないことが分かります。
こうやって深掘りしていくと、評判の良さと安定度で各社の立ち位置が見えてきます。ここで評判が良くないならどんなマーケティング施策をやっても効果は出にくいので、まずは評判を上げましょう、となりますよね。
じゃあ安定的に高い評判を獲得するためにどうしたらいいのか、これもツイートのテキスト分析で分かるんです。まずどのようなキーワードが使われているんだろう?そして評判が安定的に良いKUA‘AINAとその他の違いはどこなんだろうと分析していく。
すると、KUA‘AINAはメインのハンバーガー、ポテト以外の商品に対する評判の良さがほかとの差別化になっているようだとわかります。
少し省略しましたが、そのほかのテキストデータも分析し、長く愛されるブランドになるために必要な要素を紐解いていきます。
このように膨大な口コミデータから自社の立ち位置を明確化し、さらによりよいポジションにつくために何をすべきかまで調査できるんです。
※この調査の詳細なレポートはこちらからダウンロードできます。
実際の施策にどのように活かすか
大久保:これはすごく濃いデータですね。X(Twitter)の口コミでここまで分かるのは驚きです。このデータを具体的な施策に落とし込んだ例もご紹介いただけますか?
小池:調査内容や目的によって変わりますが、例えば、広告のクリエイティブを変えたり、広告の出稿先を最適化したり、といった利用方法があります。
キャンペーンの分析で、「キャンペーンを実施するとこんな感情のツイートが増えて、それが売上と連動している」というのが見えてきたとします。そうすると、広告のクリエイティブはその感情をより喚起するものにした方がいい、ということになります。
メディア出稿時のリツイート率を見ていくと、CPOやCPAが分からなくても、どの位拡散するのかが分かるので、より広く拡散するために出稿すべきメディアを選定できます。
実際は「こんなデータだからコレができるよね」というアプローチではなく、「こんなことがしたい、知りたいからこの調査をする」という目的ありきの考え方が重要なので、クライアントの要望を聞いて、その答えが見えてくるような調査を設計しています。
X(Twitter)分析を実践する際のポイント
大久保:企業の担当者さんが自分でやってみる場合、どういったポイントを見たらいいのでしょうか?
小池:一番チェックやすいのは、自社に関するツイート量と売上の相関かと思います。ソーシャルリスニングツールなどを使って、まずは大きな傾向を把握することですね。
データを扱うときの注意点として、キーワードによってかなりノイズが多くなるということです。商品名が特殊な名前であればキーワード検索でちゃんと引っかかってきますが、一般ワードに近いほど関係ないデータも増えます。あとブランドになるとアフィリエイターも増えてくるので、それも排除しなければなりません。書き込みの大半がアフィリエイト関連だったりしますから。
大久保:たしかにそういったチェックを自社でやるのはかなり骨が折れそうですね(笑)
小池:そうなんです。だからぜひ弊社へにご依頼を、ということで(笑)
マーケティング施策の効果は部分最適化では見えない!口コミ分析で総合評価を知るべき
大久保:最後に、今SNS運用の効果測定や分析に苦労している担当者に向けてメッセージをいただけますか?
小池:1つは繰り返しになりますが、今消費者の意思決定はSNSだということ。だから、SNSで自分たちがどう評価されてるか、お客様にとっての自分たちの存在価値は何かを知ろうということですね。
それがわからない限り、意思決定に影響を及ぼせませんから。
あとはそもそも効果測定への考え方を変えよう、ということです。こういったデータ分析をしていると「これはSNS運用の結果なの?Web広告の結果なの?」とよく聞かれますが、そういうことではないんです。
SNSでの消費者の口コミというのは、あらゆるマーケティング活動の写し鏡。総合評価の結果なので、1メディア1メディアの効果を見ていても最終的な効果はわかりません。あらゆる施策を組み合わせて実施して、結果としてお客様にどのように伝わったのか、それが重要です。
大久保:たしかに、特にデジタルマーケティングは効果が数値で出やすい分、部分最適化の話が多くなる傾向があります。
小池:そうなんです。あらゆる数値を計測するために大規模なデータ統合をしたけれど、結局そもそもの分析する目的が明確ではないから生かせない。重要なのは色々なデータを集めることではなく、企業にとって有効な施策を打つために必要な情報は何かを考え、そのときに合ったデータ分析をすることなんです。
今はSNS上での評判が実際の購買に大きな影響を与えるので、ご紹介してきたような分析が有効です。できるだけ多くの企業が、こういった分析によってお客様と自社を理解できるといいなと思います。
大久保:お話ありがとうございました!
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部