スポーツ観戦×SNSでリアルのイベントと連動。新時代のメディア価値を創造し続けるB.LEAGUEとは?
2018/02/09
バスケットボールを「ソーシャルメディアとの親和性が高い」と述べ、リーグ公式アカウント、さらにクラブ・選手のSNS運用を推進するB.LEAGUE(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)の新出浩行氏。
すでにLINE公式アカウントでも400万人以上の友だち数を誇り、企画した「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2018」に出場する選手を選出するSNS投票の総有効投票数は10万票超え、昨年の約5倍増を記録しているといいます。国内男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUEのSNS活用、その成功の裏側に迫ります。
Interview ソーシャルメディアラボ副編集長 小東真人
- ■目次
- プロフィール
- 本当に育てているのは「B.LEAGUE」というコンテンツ
- ゴールは「クラブ・選手の認知度向上」
- オールスター出場選手を「SNS投票」で選出
- 今後の展望
1. プロフィール
新出浩行 氏:公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ
(以下、B.LEAGUE(Bリーグ))広報
2. 本当に育てているのは「B.LEAGUE」というコンテンツ
「いいもの」は勝手にみんなが広めてくれる
小東:そもそも、なぜSNSアカウントを運用することになったのでしょうか。
新出氏(以下、敬称略):根本的な考え方として、バスケットボールというスポーツ自体がソーシャルメディアと相性がいいと捉えています。
スピーディーかつダイナミックな動き、そして得点シーンが多い。これがバスケットボールの競技的に面白いところでもありますし、そこに興味を持ってくれる人たちに足を運んでほしいなと思うので、SNSは積極的に使っていきたいなと考えています。
また、「多くの人に情報を届けよう」としたときに、テレビ・新聞・雑誌・Webなどのメディアでの取り扱いが他プロスポーツと比較して、まだまだ発展途上であることも背景にあります。
運用開始はリーグ開幕の1年前にあたる2015年9月だったのですが、その頃なんて「待っていても誰も取り扱ってくれない」状態。それなら自分たちで発信するしかないと考えました。
小東:SNSと相性が良く、自分たちで情報発信できるメディアを持つ必要性があったから、ということですね。
新出:はい。我々の目指す姿はメディアカンパニーだと思っています。リーグ自体のメディア価値を最大化していくことを重要視しています。ただ、ずっとSNS運用に頼るつもりはないんです。
私たちの最大の商品は「Bリーグというリアルの場で起こっていること」です。
だからBリーグを観に行くという行為を「みんながSNSにアップしたくなるもの」にすれば、究極こちらがSNS運用をやらなくても自然発生的にB.LEAGUEの露出量は増えていきますよね。そんな想いで、B.LEAGUEの開幕戦では世界初の全面LEDコートを使った演出をしました。
B.LEAGUE STARTING GAME Official After MOVIE
https://www.youtube.com/watch?v=VDXyH1kDLqw
これはものすごく迫力のある演出になったと思うのですが、テレビで放送されただけではなく、X(Twitter)のトレンドに「Bリーグ」関連のキーワードが一気に載ったんです。さらにYahoo!リアルタイム検索でも、19/20がバスケ関連のワードでした。
このような事象ってすごく本質的だなと思っていて。「いいもの」であれば、こちらが「インスタ映え」とか言わなくても勝手に注目されるわけです。
だから、ひとつひとつの投稿の質を高めるのも重要ではあるのですが、Bリーグ全体をコンテンツとして捉えて、「どうすれば、みんなが勝手に盛り上がってくれるか」という視点をより大切にしたいと思っています。
3. ゴールは「クラブ・選手の認知度向上」
投稿を活性化する施策とは
小東:では現在、SNS運用の狙いや、ゴールをどのように定めていますか?
新出:現在ゴールとしているのはリーグに所属している各クラブ、そして選手個人の認知度を上げることです。また、お客様にとっての観戦意向率も高めたいと考えています。
開幕初年度はリーグ認知率の向上に注力していて、開幕前は約40%だった認知率が開幕後には約65%にアップするなど、その成果は得られたと実感しています。次のステップとして、2年目以降はクラブや選手の認知度向上に注力し、より一層クラブの入場者数なども意識し始めた、ということです。
小東:認知度向上のために、具体的にどのような施策をされているのでしょうか。
新出:まず、「インフラ整備」から始めました。実はこの仕込みはリーグが開幕する前の、2016年7月の時点で、リーグの全36クラブにFacebookとX(Twitter)の公式アカウントを開設しました。
「一つ一つのプレーの大切さを40分間最後の最後までやり続けられるかどうかというのをこの2試合を通じて学べた。
良い部分もたくさんあったし、もっと良くしていける部分もあったので、チーム全員でしっかり成長していけるように、この2戦を糧に先につなげていかないといけない。」#0 田臥 pic.twitter.com/iNQ0geOJ2E— 栃木ブレックス公式 (@linktochigibrex) 2018年2月4日
▲Bリーグのアカウントだけでなく、各クラブが発信している
さらに、X(Twitter)社とFacebook社に協力を仰ぎながら、全クラブのアカウントを公式認証化することを推進しました。プロ野球やJリーグでもSNSアカウントを持っていないチームもありますから、全クラブにSNS公式アカウントを開設したという点は「革新的」との評価をいただきました。
加えて、各クラブに所属選手5人以上へのX(Twitter)アカウント開設を推進したことで、選手をファンに対してより身近に感じていただきやすい環境をつくることができました。
小東:アカウントを持たせた後はどのように運用するのでしょうか。投稿内容や頻度のコントロールは難しそうですが。
新出:各クラブの広報担当者と毎月会議をしているのですが、その会議のなかでソーシャルメディアの方に講義をしてもらうこともあります。
それから、毎年実施している新人選手研修のカリキュラムに、SNS運用の講義も入れました。SNSでどんどん発信していく姿勢やどんな投稿をするといいのか、運用にあたってのリスクなどを専門家にレクチャーしてもっています。
小東:炎上リスクや投稿のコツまで伝えるとは、徹底されていますね。
新出:そうですね。さらにBリーグから各クラブにSNS運用に関するマンスリーレポートを届けて、状況を定点観測できるようにしています。具体的には「ファン・フォロワー数が前月比でどれくらい増えました」「こういった良いことがありました」という報告をするんです。
▲Bリーグでは、各チームにSNSフォロワー数を細かくレポートしているhttps://www.bleague.jp/news/pdf/20180101.pdf
というのも、大事なのは量と質だと考えていますので、それが簡潔にわかるようなレポートにしています。「フォロワー数と入場者数がどのように相関関係にあるのか」などが見えてきて興味深いですよ。
小東:Bリーグ側としては、細かい運用は各クラブにお任せする方針なのでしょうか?
新出:運用はクラブに委ねています。選手と近いところにいるクラブが工夫することで、ファンに喜んでいただけるような運用ができているので、そういった流れをリーグはどんどん支援していけたらと思っています。
加えて、リーグのアカウントからは、映像のショートクリップをつくって選手の紹介をしたり、その週の出来事を配信したりすることで、クラブ・選手のファン以外の方々にもお届けできるよう努力しています。
4.オールスター出場選手を「SNS投票」で選出
参加型企画への投票数は昨年比5倍に
https://www.bleague.jp/all-stargame2018/sns-vote/
小東:では続いて、昨年比5倍の投票数を記録した「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2018」のSNS投票について伺いたいです。なぜ、SNS投票で選ばれた選手がオールスターゲームに参加できるという企画を始めたのでしょうか。
新出:この企画は、開幕元年の「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2017」に遡ります。
オールスターのコンセプトが「SNS連動オールスター」でした。最初のオールスターだったので、戦う2チームの「チーム名」もSNSで決めました。一番の目玉は出場選手をSNSで選ぶこと。あとは当日のダンクコンテストのファイナリスト、さらに当日のMVPもSNSで選ぶという、ユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションの上に成り立つオールスターにしたのです。
小東:2018年の今回は昨年から何を変えられたのでしょうか。
新出:大枠は前年を踏襲しました。出場選手を選ぶ投票については、なにか新しいことをしようと思って、X(Twitter)・Facebook・Instagramに加えて、今年はLINEでの投票も始めました。
SNS投票の一番の目的は「#Bリーグオールスター」と「#選手名」がついた投稿を増やすことだったので、相性がいいのはX(Twitter)だというのは再認識しましたね。オールスター出場選手をSNS投票で決めることで、ファンの方々といっしょにつくるオールスターにしたいということ。
SNS投票のときは、すでに選出済みの選手がわかっている状態なので、1人も選出されていないクラブのアカウントが「うちのクラブの選手をオールスターへ連れて行こう」みたいにツイートしてくれて。そうするとファンたちも「私も投票するぞ!」って気持ちになりますよね。
ほかにも、すでに選ばれた選手が「この選手(まだ選ばれていない選手)と一緒に出たい」と発信して、ファンを煽るようなことがありました。また、仕込んだわけではないのですが『SLUM DANK』の井上雄彦先生も、MVP投票に参加してくれたことは印象深かったです。
また、NBAオールスターの投票方法もベンチマークにしているのですが、Bリーグオールスターだからこそできることとして取り入れたLINEも活用しての投票は、NBAでも実施していない取り組みかつ、投票数の最大化にもつながったことと、画期的な取り組みとしてファンにもご満足いただけた良いチャレンジだったと実感しています。
5.今後の展望
スポーツ観戦×SNSで、リアルコンテンツのおもしろさを最大化
小東:では最後に、今後の展望について教えてください。
新出:とにかく、リアルのイベントと連動できるところがB.LEAGUE のSNS運用の面白いところだと思うので、リアルタイムでMVP投票の状況が見れたり、試合の臨場感が伝わったりといった工夫は今後もしていきたいと思っています。
オールスターのMVP投票のときには、「1分に2000人が投票する」という結果を出せているので、今後も「リアル」を強みに進めていく予定です。
また、「シェアしたくなる」コンテンツを提供して、自然な流れで「X(Twitter)のトレンドに載る」ことにもこだわっています。
トレンドに載れば、今まで興味がなかった人でも「何だこれ」って見てくれるじゃないですか。そういったタイミングで、ハッシュタグをたどると、盛り上がっている様子が見られる。そして、B.LEAGUEの公式アカウントを見つけて、フォローしてくれる。そんな認知のきっかけや、新しいユーザーとの接点づくりができますので。
ただ、そのためにもやはりクラブや選手と一緒に盛り上げていくことが最重要だと感じています。
公式のリーグアカウント1つでは限界がありますが、36のクラブ、それに所属する選手と一緒に、そしてそれぞれ盛り上げることで、単純に話題が広がる。まさにバスケットボールファミリーが力を合わせ、みんなで世の中に存在を知ってもらうことが大事なのです。
さらにメディアの発信が加わって、より多くの人にクラブ、選手、リーグを知ってもらう。そんな潮流をつくっていきたいと思っています。
最後に
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この記事を書いた人:小東真人
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。