鍵はKOLの活用と販売戦略。ヒット商品「フジコポンポンパウダー」の中国でのマーケティング戦略とは

2018/05/24

 世界中の国々が進出を狙っている巨大なマーケット、中国。13億人を超えるマーケットの大きさは間違いなく世界トップクラスであり、日本以上に消費者のSNS利用が活発であることでも知られています。

しかし、中国ではWeibo(微博)やWeChat(微信)などそもそも日本人には馴染みのないSNSツールが使われており、中国市場でのアウトバウンドマーケティングを行うには様々なハードルが存在します。そのなかでも重要となってくるのが、KOL(Kew Opinion Leader)と呼ばれる中国版インフルエンサーの存在。中国人は企業発信の情報よりも口コミを重視する傾向にあるといわれており、中国人向けのプロモーションには欠かせない存在になっています。

そんなSNSで多くのフォロワーを持つKOLを活用して中国市場進出に成功した日本の商品が、株式会社かならぼの『フジコポンポンパウダー』です。

元々は日本人向けに化粧品を開発・販売をしており、一般人の口コミだけでアットコスメのカテゴリー1位を獲得したこともあります。

今回は同社代表の吉濱佳奈氏に、中国進出の背景とKOLマーケティングでの成功経験についてお伺いしました。

    ■目次

  1. プロフィール
  2. フジコポンポンパウダー誕生の経緯
  3. 中国進出のきっかけ
  4. マーケティングのポイントとは?
  5. 販売数の伸びと中国市場ならではのリスクヘッジ
  6. 中国市場で成功した3つの成功要因
  7. 中国進出はパートナーが鍵!

1. プロフィール

株式会社かならぼ 代表 吉濱佳奈

2. フジコポンポンパウダー誕生の経緯

大久保:まずはフジコポンポンパウダー誕生の経緯についてお聞かせください。

吉濱氏(以下敬称略):元々、弊社には『フジコ眉ティント』という人気商品がありました。本来は次に眉毛ラインを開発し、フジコシリーズとして確立するのが王道だと思います。

しかし、予想できない新しい商品を提供したいという想いがあったので、眉ラインとはまったく違う、ヘアラインの新商品を次は開発すると決めていました。そこで開発されたのが『フジコポンポンパウダー』です。

フジコポンポンパウダーの原型は韓国の商品だったのですが、マーケティングに失敗し、まったく売れていませんでした。しかし、日本人の女性にとっては魅力的な商品でした。日本の女の子は髪の毛が細かったり、猫毛であったりすることが多く、朝ふんわりしていても時間が経つとへたってしまいます。

そのため、髪の毛を固めないでふんわりさせることができる、というフジコポンポンパウダーはナチュラルが好まれる時代からすると画期的でした。

3. 中国進出のきっかけ

大久保:フジコポンポンパウダーの販売先として、最初から中国を視野にいれていたのでしょうか?

吉濱:最初は視野にいれていませんでした。中国という巨大なマーケットがあることは以前から認識しており、日本の商品が続々と中国に流れていることも知っていましたが、弊社の体力と市場の大きさを考えると、中国進出は慎重に行うべきだと。中国進出のお話は今までにいただいたことはありましたが、基本的には静観していました。

その後フジコポンポンパウダーや既存の商品に対する施策を、中国のマーケティングに精通しているFind Japanさんにご提案していただき、そこでリスクが少ないと判断できたので、「じゃあ一歩一歩始めてみましょう」となりました。

大久保:リスクが少ないと判断できる提案とは、どのような提案だったのでしょうか?

吉濱中国の実店舗や大きなモールに商品を卸すなど、今までは規模が大きなご提案ばかりいただいており、商品が売れなかった場合、どこかで安く売られてしまい、ブランドが死んでいくだけではないかと不安でした。Find Japanさんの安心できるポイントは、我々自身で需要を作り、数字を把握しながら一緒に取り組めるという点でした。

4. マーケティングのポイントとは?

商品を購入するターゲットの選定

大久保:どのような中国人をターゲットに設定していたのでしょうか?

吉濱:日本のコスメ好きで、発信力が高い10代20代の中国人をターゲットとして設定していました。

大久保:日本の場合、「髪がふんわり立ち上がらない」といった、課題ベースでターゲティングをすると思いますが、中国の場合は違っていましたか。

吉濱中国の情報は、膨大で集約されていないのが現実です。そのため、中国人の趣味趣向や好みのマーケティングは、販売と並行して行うしかありませんでした。マーケティングの結果、購買意欲が高く日本の化粧品が大好き、自由に使えるお金も持っているという、日本商品を支えてくれている方の存在を知ることができたので、まずそのコアなターゲットに対して販売しました。

大久保:その反応次第で、施策を展開する予定だったのでしょうか。

吉濱そうですね。また、その中でさらに購買層が分かれるかどうかも知りたいと思っていました。結論からいうと、購買層はあまり分かれず、日本とは購買動機が違うということが判明しました。

悩みの解決ではなく、日本で流行しているということが、中国人の日本商品を購買する理由でした。そのため、中国人の生活や悩みを理解し、それらを解決するための商品を作る段階までは、いまは踏み込む必要はないと考えていました。

KOLを使った商品の発信

大久保:最初の施策はどのような内容だったのでしょうか。

吉濱:最初の施策は、KOLに発信してもらうことでした。具体的には、5,60万のフォロワーがいる方に発信してもらいました。KOLは日本のインフルエンサーと似ていますが、フォロワーの規模がまったく違います。そのため、5,60万人規模のフォロワーがいる方でも、最初からお願いすることができました。

大久保:KOLへの投稿依頼は、どの程度の回数をお願いしたのでしょうか。

吉濱フジコポンポンパウダーの場合、30人のKOLに1回だけお願いしました。KOLの中には、他のKOLが発信している投稿をチェックしている方もいます。

そのため、依頼していないKOLが意図せず発信してくれたり、フォロワーの方がリツイートしてくれたりすることで、じわじわ波及していきました。彼女たちがSNS上で商品を拡げたいモチベーションは「よい商品を発信したいから」だと思います。ポンポンとするだけでふわっとし、ビフォーアフターがわかりやすく、使用感や結果もついてくるという点で、フジコポンポンパウダーにもその要素があったのだと思います。

大久保:日本で流行っている商品というイメージで発信をされたのですか。

吉濱フジコポンポンパウダーをKOLに発信してもらうタイミングは、Instagramを中心に活動している日本のインフルエンサーに日本国内で発信していただいている時期と同じだったので、その情報もあわせて発信していただきました。

その他にはドン・キホーテさんなど、KOLやターゲットである中国人が注目している店舗でも売られていることを伝えるため、実際の店舗から発信することも行いました。

エンドユーザーはどこで購入できるかを重視するので、KOLには購入できる店舗の発信や、Weibo公式ページへの問合せに返答していただくなど、運用のなかでコミュニケーションをとっていただきました。

5. 販売数の伸びと中国市場ならではのリスクヘッジ

中国の強力な販売網

大久保:売上はどのように上がっていきましたか。

吉濱KOLの発信だけでなく、6月から始めたWeiboでの施策でも少しずつ販路が拡大していき、9月には数字として現れました。9月は8月に比べ、およそ2倍売ることができました。しかし、需要に対して全て供給することが正解かというと、そこは慎重にやるべきだと考えています。

長期的な視点での販路戦略

吉濱国内外問わず、一般的にバイヤーや店舗はより多く商品が購入されることを考えがちですが、一番大切なのはどれだけのエンドユーザーが購入しているかです。

特にインバウンドで人気がでた商品は、中国人バイヤーが500個、1,000個と購入しにくるので、店舗からの商品催促が激しくなります。もし中国人バイヤーが在庫を捌くために格安で販売した場合、ブランドを毀損する可能性があります。エンドユーザーにきちんと商品を届けるためにも、盛り上がっているときにこそ慎重に販売をすべきだと考えています。

大久保:中国でのプロモーションで、イメージとのギャップあれば教えてください。

吉濱中国で商品を販売した場合、転売され続け、最終的に安く売られるのではないか、というのが最初のイメージでした。しかし実際はさらに複雑で、想像以上に多くの要素が絡み合った上で、弊社に発注されることを知りました。

中国は13億人という非常に大きなマーケットなので、ポンと何かマーケティング施策を行うことで、その何%がこうなりました、とはならない市場。コミュニティーがたくさんあるので、コミュニティー同士が牽制しあうこともあります。そのため、どのコミュニティーと向き合っていくか含め、Find Japanさんに教えていただいています。

どのコミュニティーがどういう特徴を持っていて、どうやって付き合っていくべきかを見極めなければ、結果的に商品を死なせることにもつながります。

6. 中国市場で成功した3つの成功要因

大久保:フジコポンポンパウダーの一番の成功要因はなんでしょうか?

吉濱そもそも全体のバランスがよかったと思います。成功するには、商品やその効果は重要ですが、販売経路も重要になります。商品をどこでも購入できる場合、だれでも転売することができるのでわれわれが仕掛けを行なってもコントロールが効きづらくなります。

最初に販路を制限していたことが功を奏しました。またプロモーションでは、単純にフォロワー数が多いKOLにお願いするのではなく、商品を好きになってくれそうな方、ユーザーと毎日コミュニケーションをとっている方にお願いすることが重要になります。数に目がいきがちですが、どれだけ影響力のある人物か把握する必要があります。

拡がりやすい商品の販売、商品の販売経路を制限する、影響力のあるKOLに依頼する、以上の3つをバランス良くやったことが、成功の要因だと思います。

7. 中国進出はパートナーが鍵!

大久保:今後中国に進出する企業があればなにを伝えますか。

吉濱おいしい話はない、ということです。最終的に全ての責任を負うのはメーカーなので、どんなリスクがあるかは納得がいくまで確認すべきです。マーケットが大きいと、肩書きや企業ブランドがすごいパートナーがいますが、すべてのパートナーが儲かっているわけではありません。

パートナーは中国市場の大きいリスクをどうやって解決し、売上を伸ばしていくか、ブランドを一緒に育ててくれるかという観点で選ぶことをおすすめします。

大久保:ありがとうございました。

この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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