tumblr、Medium、cakes…ソーシャル機能や思想を持つ『ブログプラットフォーム』の使い分けを考察
2015/03/26
こんにちは、ソーシャルメディアラボの渕上です。
当ブログではソーシャルメディアについて幅広く取り扱っていますが、昨今の時流によりどうしてもFacebookやX(Twitter)といったSNSを扱うことが多くなっています。とはいえ、YouTubeや電子掲示板、ブログなども立派なソーシャルメディアのひとつ。折にふれて時流を追いかけていきたいと思います。
そこで今回は、15年以上の歴史を持つ『ブログ』の新潮流について考察いたしました。企業や個人がブログを運営するのはもはや当たり前となっていますが、数々のソーシャルメディアが現れたことで、必ずしもブログを使わなくても宣伝や自己表現は可能となりました。
そんな中で現れたのが、ブログプラットフォーム。例えばSNSとして機能を持ったtumblr(タンブラー)や、メディアの機能を持ったMedium(ミディアム)、日本における最先端のブログメディアであるcakes(ケイクス)・note(ノート)など、ブログの種類は多様化しています。
企業や個人など、それぞれのサービスはどういった使い方をするのが適切なのでしょうか。ブログの最前線を読み解いていきましょう。
■目次
1.メディアとかプラットフォームとか……いったい何を指しているの?
2.ブログ・メディア・プラットフォームの垣根は曖昧になっている
3.SNS?ブログ?tumblr(タンブラー)って一体なに?
4.思想を持ったブログプラットフォームの登場
5.プラットフォーム依存の危険性
6.結局Webでは、まだまだテキストが重要
メディアとかプラットフォームとか……いったい何を指しているの?
以上の前文だけでも様々な専門用語が頻出しており、チンプンカンプンな方もいらっしゃるかと思います。生まれたばかりの用語もあり、定義付けも曖昧だったりするのがわかりにくさに拍車をかけているんです。そこで、まず用語を以下に定義します。狭義・広義で意味合いが変わる用語もありますが、大筋で以下のように理解いただければ問題ありません。
■ブログ
・自分の意見や感想を日記スタイルで記載し、それを見た人がコメントを返したりすることができる形式のWebサイト。日本におけるブログとは、大手ポータルサイトのブログ作成ツールを使ってつくられることが多い。
例)アメーバブログ、はてなブログ、livedoorブログなど
■メディア
・情報を人々に伝える機関や事業、システム。本記事ではそれをWebで行なうWebメディアと同意とします。また、メディアは何らかの思想や編集方針を有しています。
■プラットフォーム
ハードウェアやソフトウェア、サービスが動作する基盤となる環境のこと。例えばFacebookやX(Twitter)のようなSNSはそれ自体が思想を持っているわけではなく、ユーザーが思い思いの投稿をしやすくする環境を整えることでサービスを成り立たせています。つまり、ひとつのプラットフォームであると言えますね。
特に「メディア」と「プラットフォーム」の違いは非常にわかりにくいかと思います。
ここでは、メディアには運営する際の編集方針が決まっているのに対し、プラットフォームは場所貸しだけを担い、どんなコンテンツをつくるかはユーザーに委ねられていると捉えていただければ大丈夫です。
メディアは百貨店、プラットフォームはショッピングモール
これらのIT用語は、様々なところで見かけるわりによくわからないコトバでもあるんですよね。以下の記事によい例えがありましたのでご紹介しておきます。具体的なイメージが湧くのではないかと思います。
■メディアは百貨店のようなもので、中に配置されるコンテンツ(店・販売物)はメディア運営者の采配で編集されるのが特徴です。メディア自体がブランド力を有し、その運営には思想が必要となります。
■プラットフォームはショッピングモール。思想を持ったそれぞれのコンテンツ(テナント)が場所を提供されるかたちで運営されます。プラットフォーム自体は思想を持たない場合が多く、コンテンツのブランド力で成り立っています。
ブログ・メディア・プラットフォームの垣根は曖昧になっている
さて、それでは上述の定義を踏まえ、話を進めます。
企業が自社でメディアを持つ(=オウンドメディア)ことは、今や当たり前となりました。従来の企業ホームページでは製品に興味をもってくれるかもしれない層にアプローチすることができず、いくらコンテンツを揃えたとしても集客に繋げるのは難しかったのですね。そこで新しく情報発信用のメディアを立ち上げたり、企業ホームページをメディア化する動きが活発化しました。
企業ホームページがメディアに動的化したように、ブログもメディア化しています。ブログも元々は静的なイメージの強いシステムでしたが、より情報発信力を強くしていくためにメディア化していったのです。なので今では、傍目にはそれがオウンドメディアなのかブログメディアなのか分からないことも多くなりました。WordPressというブログ環境を構築できるシステムも普及し、Webの知識がなくても手軽につくれるようになったのも大きいですね。
例として以下に3つのオウンドメディアを掲載しましたが、すべてWordpressを使用してつくられています。とても従来のブログには見えませんよね。もはやオウンドメディアとブログメディアの垣根はないのかもしれません。
オムロン ねむりラボ
資生堂 ホメ髪.com
エンジニアType
SNS?ブログ?tumblr(タンブラー)って一体なに?
テーマとしてブログを扱うならば、ソーシャルメディアラボが避けて通れないのがtumblrというWebサービス。一応ジャンル分けするとX(Twitter)と同じ『ミニブログ』というグループに属するのですが、ブログとしての機能以上にSNSとしての機能も備えたプラットフォームなので、どう使えばいいのかよく分かっていない人も多いのでは?
かなり多機能なtumblrは単なる個人ブログとしても使えますし、好きなブログをコレクションするスクラップブック、FacebookのようなSNSとしても使うことが可能。この多機能さがtumblrを謎な存在にしているのかもしれませんね。ただ、ポイントとしてtumblr自体は思想を持っていません。ゆえにメディアとは言えないんですね。
言うならば、tumblrはSNS機能に特化したブログプラットフォームなのではないでしょうか。
一見カスタマイズ性などなさそうに見えるのですが、実はデフォルトの設定を少し変えるだけで見違えるようなデザインに様変わりします。企業がtumblrを上手く使ってオウンドメディアをつくった事例があるので、代表的な3つをご紹介しましょう。
IBMblr
コカ・コーラ
マレフィセント
tumblrはオウンドメディアに使える!
いかがでしょうか。あまりにハイクオリティで、右上にあるtumblrアイコンがなければ、とてもtumblrでつくられているとはわかりませんね。
これが非常におもしろいところで、tumblr自身はブログプラットフォームを提供しているだけなのですが、ユーザーはtumblrのプラットフォーム機能を使って、まるで独立したオウンドメディアであるかのようにブログをつくることができるんです。
元々SNSとしての機能に優れていることもあり、イチから構築するより簡単にオウンドメディアがつくれるのは他にはない利点ですね。
思想を持ったブログプラットフォームの登場
tumblrもブログとしては異質な存在ですが、昨今さらに新しい形態のブログが登場し始めています。
例えばブログプラットフォームのMedium/ミディアムというサービスは、書きやすさ、読みやすさを徹底的に追求し、あらゆるカスタマイズ性をなくした代わりに、誰でもすぐに最良の環境で執筆ができるような仕組みが構築されています。Mediumはそこにメディアとしての編集方針や思想を練り込んでいるのです。
Mediumではシンプルに、高品質な記事が優先的に表示されます。それは単純なPV数でではなく、滞在時間なども含めて総合的に判断しているようです。つまり、瞬間的にPVを集める煽りやゴシップ記事ではなく、長期的に必要とされる深遠な記事や良い議論の起こる記事を重視する編集方針があるのですね。
こういった形態は、プラットフォームとパブリッシャー(メディアの編集者)を合わせた造語『プラティシャー』と呼ばれています。
もちろんMedium以外にもプラティシャーは存在します。国内外のプラティシャー(とされているメディア)を3つ紹介しておきましょう。
SB Nation
ブランド力の強いスポーツメディアと、ファンの集うスポーツコミュニティが一体化したプラットフォーム。スポーツに関するコンテンツを扱うサイトとしてはクオリティが非常に高く、ファンから影響力の高いサイトとしてランクされています。
CAKES/ケイクス
ベストセラー作家、マンガ家、学者、人気ブロガー、有名ビジネスマン、写真家、音楽アーティストなど、 多様な肩書きの執筆陣のコンテンツが毎日アップされるメディア。1週間/150円の有料会員になるとすべてのコンテンツが読む放題になりますが、無料会員でも読めるコンテンツは非常に多く、読み応えがあります。
note/ノート
文章・写真・イラスト・音楽・映像などの作品を投稿し、クリエイターとユーザをつなぐメディア。つくった作品(ノート)は、通常のブログやSNSなどと同様に公開したりシェアすることができ、売買も可能。
プラットフォーム依存の危険性
tumblrがオウンドメディアに向いたブログプラットフォームであるとお伝えしましたが、ポータルサイトのブログサービスを利用することも含め、プラットフォームに依存するということはそのプラットフォームと運命を共にすることを意味することを忘れないで下さい。
何らかの事情で運営継続できず閉鎖してしまった場合、今まで掲載した記事はすべて消えてしまいます。もちろんバックアップを取ることは可能でしょうが、ドメインの力は失われますし、移行するにも手間がかかります。
また、プラットフォームに依存するということは、ポリシー改定があった際にも従わなければなりませんし、急なデザイン変更があっても抗うことができません。コンテンツが残るなら体裁は気にしないというのであればいいかもしれませんが、依存することの意味を理解した上で利用することをオススメします。
結局Webでは、まだまだテキストが重要
何かを表現するにあたり、ブログという選択肢は手軽ですぐに始められる最適解とも言えるでしょう。サーバの構築やHTMLファイルの準備、ディレクトリの構造把握など、以前はブログ一つ始めるにも一苦労の時代がありました。
今もWordpressでブログを始めるにはある程度の基礎知識が必要ですが、ライブドア・はてな・アメーバといったポータルサイトに依存したブログサービスや、今回のテーマでもあったブログプラットフォームなら、アカウント登録から数分でブログを始めることができます。
Webで何かを始めることの敷居は年々下がっていますし、いくら理論だけ知っていても使ってみなければ真価はわかりません。確かにオウンドメディアや個人ブログそれぞれに適したサービスは存在しますが、住めば都とも言いますし、とりあえず気になったら使ってみるという思い切りも必要です。
幾多のサービスが生まれてはすぐに消えていくWebの世界で、15年という長い歴史を持つブログというテキストの文化はそう簡単になくなりません。画像や動画がマーケティングの主力となりつつあるとしても、SEOがインバウンドとして強い力を持つ現状では、テキストの検索性は変わらず重要です。結局のところ、皆さんがGoogleの検索窓にタイプするのはテキストでしょうからね。
以上、『tumblr、Medium、cakes…ソーシャル機能や思想を持つ『ブログプラットフォーム』の使い分けを考察』でした。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部