ソーシャル&オウンドメディアを使いこなせていますか? 成功事例に学ぶ活用法とその意義

2015/12/04

samune

今やコンテンツマーケティングの一環として、コーポレートサイトや企業ブログとは別に、自社で企画・制作したコンテンツを配信するオウンドメディアを構える企業が増えてきました。

しかし、そのようなオウンドメディアを運営する企業が増えれば増えるほど、世に溢れるコンテンツの数も天文学的な数へと膨れ上がっていくもの。

「情報“砂の一粒時代”」(佐藤尚之著『明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法』講談社現代新書より)と言われる昨今において、どのようなコンテンツをつくれば、見てもらいたい人にコンテンツを届けることができるのでしょうか。

今回はオウンドメディアを運営する意義を見つめ直すとともに、他社とはひと味違ったコンテンツの作り方とソーシャルメディアの活用法について、いくつか事例を挙げながら、考察してみたいと思います。

■目次

1.改めて考えるオウンドメディアを運営する意義

2.オウンドメディアを始める前に押さえておきたいポイント

3.同じ切り口でも見せ方を変えればこんなに違う

4.入り口と出口はソーシャルメディア

1. 改めて考えるオウンドメディアを運営する意義

オウンドメディアはソーシャルメディアと同様に、始めるのは簡単でも続けることは非常に手間と労力がかかるものです。

「無料のCMSを使って、社内の誰かに記事を書かせれば、コストもかからないし、とりあえずやってみよう」と安易に始めるべきものではありません。

それでもなお多くの企業がオウンドメディアの運営を始めるのは、リスクを上回るだけの次のようなメリットがあると考えるからです。

・コンテンツをHUBとして生活者とのコンタクトポイントを増やすことができる

・ソーシャルメディア上での拡散(=クチコミ)による認知向上

・広告やプレスリリースとは異なり、メッセージを100%コントロールできる

・コンテンツの質を重視するようになった検索エンジンに最適化することで、検索流入を増やす(=SEO対策)

・商品やサービス、企業ブランドに愛着を持ってくれているファンのエンゲージメントを高める

・生活者にとって有益な、宣伝色の薄いコンテンツを配信することで、ポジティブなブランドイメージを醸成する

単にコンテンツの数を増やして露出すればいいということではなく、これらの効果を最大化させるコンテンツを作るように意識することが大切なのです。

2. オウンドメディアを始める前に押さえておきたいポイント

オウンドメディアを立ち上げることが決まったら、まずはサイトのコンセプトを固めていきましょう。

ここでつくったコンセプトがしっかりしていれば、具体的な記事の企画案を練ったり、サイトのUI設計を行ったりするときの指標となり、ブレることなくスムーズに進められるようになります。

また、のちのち社内外の人に協力を仰ぐことになった際にも、相手に意図が明確に伝わり、理解を得やすくなるでしょう。 なおコンセプトを考える際には、最低限、以下の3つの質問の回答を用意してみてください。

・なぜオウンドメディアを始めるのか?(オウンドメディアでないといけないのか?)

→現状のマーケティング戦略の課題をあぶり出し、それを解決するための最適な解が、本当にオウンドメディアなのかどうか、再確認します。

→オウンドメディアの効果に懐疑的な人たちを説得する材料になります。

・オウンドメディアで誰に何を伝えたいのか?

→ターゲットとする読者のペルソナを考える。マーケティング課題を解決するために、生活者へ届けるべきメッセージは、何なのか。どの購買ステージのお客様に読んでもらい、行動に移してもらいたいのか。

→コンテンツの企画案を採用するかどうかの判断基準になります。

・ゴールはどこか?

→オウンドメディアが成功したと言えるのは、何がどうなったときなのか。

→各記事のコンバージョンが明確になるとともに、KPIを定めるうえで評価項目を選定しやすくなります。

コンセプトが曖昧なままのオウンドメディアは、ともすれば他のサイトでも大差ないような、ありきたりの記事になりがちです。

そうならないためにも、自社のマーケティング戦略の一環と捉え、想定する読者≒見込み顧客に寄り添ったコンセプト作りを心がけるとよいのではないでしょうか。

3. 同じ切り口でもコンセプトによって中身はこんなに違う

次に、具体的な事例を挙げながら、“同じ切り口でもコンセプトによって、中身がこんなに違うんだ”という比較をしてみたいと思います。

今回は、「暮らし」をテーマにした3つのオウンドメディアについて比較してみました。

北欧、暮らしの道具店®

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サイトURL:http://hokuohkurashi.com/

コンセプト:「フィットする暮らし、つくろう。」

更新頻度:平日毎日5~6本

アカウントのあるソーシャルメディア: Instagram/X(Twitter)/Facebook/Antenna

ソーシャルボタン:Facebook/X(Twitter)/LINE/はてなブックマーク ※数字は出さない

株式会社クラシコムが運営するECサイト連動型のオウンドメディア。プロの料理家に教わる簡単レシピや、自分らしい暮らし方・働き方をしているプロフェッショナルへのインタビュー記事など、毎日を快適で豊かなものにするためのコンテンツを届ける。

日々更新する「ミニコラム」と「特集」記事の2本立て。「読みもの」と「お買いもの」でカテゴライズされている。記事で紹介された商品はそのままサイト内で購入することが可能。最近は「BRANDNOTE(ブランドノート)」という広告事業も開始している。

くらしのきほん

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サイトURL:https://kurashi-no-kihon.com

コンセプト:「あなたの暮らしはもっと楽しくなる」

更新頻度:小さなお便り以外は約1日1本

アカウントのあるソーシャルメディア:Instagram/クックパッド/Facebook/X(Twitter)

ソーシャルボタン:Facebook(「いいね!」と「シェア」)/X(Twitter)/LINE(スマートフォンのみ) ※数字は出さない

2015年7月1日にスタートしたクックパッドのオウンドメディア。「読売新聞」「毎日新聞」「POPEYE」「Oggi」にエッセイを連載するなど文筆家として活躍し、2006年より約9年間『暮しの手帖』の編集長を努めた松浦弥太郎氏がプロデューサーを務めることでも話題に。

食を中心に、暮らしの基本を学び、楽しみ、基本の大切を分かち合うウェブサイト。時代が過ぎても、決して古びない、価値のある、暮らしの知恵と学びを発信している。

各記事は「料理」「食」「住む」「家事」「マナー」といったさまざまな暮らしのテーマに沿ったジャンル分けだけでなく、「すてきなこと」「自分らしく」「うれしい」「こころがける」といった気持ちを表す言葉でカテゴライズされており、そのときの気分でコンテンツに出会えるしかけに。

レシピは動画つき。トップページでは編集長から「おはよう」「こんにちは」「おやすみなさい」の1日3回の小さなお便りが届く。

ANYLIFE

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サイトURL:https://anytimes.co.jp/life/

コンセプト:生活を豊かにするための情報メディア

更新頻度:不定期

アカウントのあるソーシャルメディア:Facebook/X(Twitter)/Pinterest

ソーシャルボタン: Facebook/X(Twitter)/LINE

ジャーナリストの佐々木俊尚氏をメディア顧問に迎え、2015年9月9日にオープンしたばかりの情報メディア。あなたの「困った」と、あの人の「できる」をつなぐマッチングサービス「Any+Times」が運営する。

「ビューティー」「ファミリー」「ファッション」「ライフハック」「旅」「トレンド」「フード」「健康」と、幅広いコンテンツを網羅している。記事内にはPinterestの埋め込み画像を使用しているところが特徴的。

事業内容によって導かれたコンセプトにより、コンテンツの切り口も様々であることがお分かりいただけたでしょうか。

注目すべきポイントは、コンテンツの切り口だけでなく、ソーシャルメディアの使い分け方にもあります。「アカウントを持っているソーシャルメディア」と「ソーシャルボタン」のラインアップは必ずしも一致していません。

その理由は、次項で説明していきましょう。

4. 入口と出口はソーシャルメディア

オウンドメディアの運営とソーシャルメディアは切っても切り離せない関係にあります。

例えば、オウンドメディアの新着記事をソーシャルメディアに投稿して、そこから流入したAさんはソーシャルボタンで記事を拡散する。Aさんの拡散したリンクからAさんの友達であるBさんがオウンドメディアを訪れ、気に入ったので継続して情報を受け取れるよう、ソーシャルメディアでファンになる。

どのオウンドメディアでも多かれ少なかれ行われている、こうした読者によるアクションによって、少しずつオウンドメディアの成果は表れてきます。爆発的にヒットする記事、いわゆるバズる記事を断続的に生み出すことができれば、加速度的に効果が出ることもあるでしょう。

いずれにせよ、オウンドメディアの入口と出口は、多くの場合ソーシャルメディアなのです。特に初期は、検索による流入がなかなか期待できないこともあり、リファラーの割合はソーシャルメディアが大きくなる傾向にあるようですから、その使い分けはオウンドメディアの成長に大きな影響を与えると言えます。

どんな記事でも気軽に拡散できる「X(Twitter)」は基本として、おしゃれな写真をコンテンツの中心に置くのであれば、「Instagram」「Facebook」「Pinterest」といったビジュアルに強いソーシャルメディアを活用すべきですし、文章量が多く読み込む必要があるコンテンツなら「はてなブックマーク」や「Pocket」のソーシャルボタンが欠かせません。最近ではスマートフォンからアクセスする人が多いため、「LINE」ボタンの設置もメジャーになってきました。

このように、“想定するターゲット層が多く利用しているかどうか”と“コンテンツの特性”の2つの側面をかけあわせながら、「自社が運用して発信用に使うメディア」と、「ソーシャルボタンを設置するだけのメディア」を選定し、さらにその優先順位によってサイト内の配置を決めることが重要です。

この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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