【初心者向け】ソーシャルリスニングの基本・活用方法・ツール比較を一挙に紹介
2025/04/03

消費者の本音はSNSに現れる時代。ソーシャルリスニングは、XやInstagramなどの投稿を分析し、従来の調査では得られないインサイトを可視化する新しいマーケティング手法です。
この記事では活用法や導入時のポイントを解説します。
- ■目次
- ソーシャルリスニングとは?アンケート調査との違いもわかりやすく解説
- ソーシャルリスニング導入前に知っておきたい注意点
- ソーシャルリスニングで企業は何ができるのか?【分析・活用の可能性】
- ソーシャルリスニングの活用事例【自治体・企業】
- ソーシャルリスニングのやり方とレポートの作り方
- おすすめのソーシャルリスニングツールと選び方
- まとめ:ソーシャルリスニングを自社成長にどう活かす?
1. ソーシャルリスニングとは?アンケート調査との違いもわかりやすく解説

ソーシャルリスニングは、SNSをはじめとするデジタル上の声を収集・分析する手法です。
マーケティングや商品開発、ブランド戦略に活用される場面が増えていますが、まだ正確な理解が浸透しているとは言えません。
本章では、ソーシャルリスニングの基本、アンケート調査との違い、注意すべきポイントを分かりやすく整理します。
ソーシャルリスニングとは
ソーシャルリスニングとは、X(Twitter)、Instagram、口コミサイト、ブログなどに投稿されたユーザーの「自然な声」を収集・分析し、
消費者インサイトや市場動向を把握する手法を指します。
企業やブランドに対して、
どのような感情を持っているか
何を期待しているか
どのようなトレンドが生まれているか
をデータベースに基づいて読み解きます。
広告やプロモーションで自社発信するだけでは得られない、リアルな生活者の意識や行動を知ることができる点が特徴です。
近年では、マーケティング部門のみならず、広報、商品企画、カスタマーサポート部門でもソーシャルリスニングが活用されるケースが増えています。
アンケート調査との違いは?
ソーシャルリスニングとしばしば比較される手法が、アンケート調査です。両者の大きな違いは、データの取得方法と回答者の心理状態にあります。
アンケート調査は、企業が用意した質問にユーザーが回答するため、事前に設定されたテーマや枠組みの中で得られるデータに限定されます。
また、回答者が「企業に答える」という意識を持つため、建前的な回答になりやすい側面もあります。
ソーシャルリスニングは、ユーザーが自然発生的に投稿した内容を収集するため、企業側の設計意図に縛られない率直な本音を把握できる点が強みです。
以下の画像はアメリカの髭剃りブランド・ジレットフュージョンが行なったアンケートとソーシャルリスニングの結果です。

(画像引用:スティーブン・D・ラパポート「リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書」, 翔泳社, 2012年)
アンケート結果では、自社商品をこれから使わない理由について「他のかみそりがよい」や「高すぎる」などといった回答を得ていましたが、ソーシャルリスニングによる調査では、アスキングによる調査では一度も出てこなかった「偽物、うそっぽい」といったなぜ「他のかみそりが良いのか」「高すぎる」と感じるのかの原因とも考えられる情報を得ることができています。
ただし、必ずしも体系的にデータが集まるとは限らないため、分析には一定の専門性が求められます。
間違われやすいマーケティング手法との違い
ソーシャルリスニングは、次のようなマーケティング手法と混同されがちです。
ソーシャルメディアモニタリング
→ ブランドに対するネガティブ投稿やクレームをリアルタイムで把握し、対処することを目的とした活動。
あくまで「監視」が中心であり、分析や戦略立案まで踏み込まない点が異なります。
SNSインサイト分析
→ 自社アカウントのエンゲージメント率やリーチ数などを測定する手法。
ソーシャルリスニングは、自社だけでなく業界全体、競合、社会トレンドなど幅広いデータを対象にします。
このように、ソーシャルリスニングは単なる監視でも、狭義のインサイト分析でもなく、
外部環境全体から示唆を得るためのリサーチ手法であることを理解しておきましょう。
2. ソーシャルリスニング導入前に知っておきたい注意点
ただし、ソーシャルリスニングを実施するにあたり、つねに注意すべき以下の3つのポイントが存在します。
- データの偏りに注意する
- 「ノイズ」の除去が必要
- 目的設定を明確にする
ここでは、これら3つのポイントについてそれぞれ詳しく説明します。
データの偏りに注意する
投稿するユーザー層には偏りがあるため、必ずしも市場全体を正確に反映しているとは限りません。
特定のSNSやジャンルに偏らない設計が必要です。
「ノイズ」の除去が必要
スパム投稿や無関係な話題を除外するフィルタリング作業が不可欠です。
ツールによる自動処理と、人の目によるチェックを組み合わせることで、分析精度が高まります。
目的設定を明確にする
「何を知りたいか」が曖昧なままデータ収集を始めても、意味のある示唆は得られません。
ターゲットテーマやKPIを事前に設計することが重要です。
これらを踏まえた上でソーシャルリスニングを活用すれば、SNSを単なる発信チャネルではなく、
経営・マーケティングのための強力なインサイト源として機能させることができます。
3.ソーシャルリスニングで企業は何ができるのか?【分析・活用の可能性】
ソーシャルリスニングは単なる情報収集ではなく、事業成長やマーケティング施策に直結するインサイトを生み出す力を持っています。
本章では、企業がソーシャルリスニングを活用して具体的にどのようなことができるのかを解説します。
顧客の本音を拾える
ソーシャルリスニング最大の強みは、企業に向けられたユーザーの本音を拾える点にあります。
アンケート調査では得にくい、「言われていないけれど感じている不満」「自然な比較・評価コメント」「購入検討時のリアルな葛藤」といった情報を把握できます。
例えば、特定の製品について「デザインはいいけど、少し重い」「他社製品と迷ったが、価格で選んだ」といったSNS上の声を拾うことで、マーケティングメッセージや改善点を具体的に洗い出すことが可能になります。
本音をもとにした施策設計は、ターゲットユーザーとの距離を縮める大きな武器となります。
NTTコム リサーチが実施した調査によると、多くの消費者が商品の購買にあたって口コミを参照しており、消費者の67.5%が口コミを見て購買を決めた経験があるという調査データがあります。

(画像引用:https://research.nttcoms.com/database/data/001436/)
つまり、ソーシャルメディア上の口コミには消費者の購買意向につながるような情報が多分に含まれており、そういった情報を有効に抽出/活用することができれば、企業のマーケティング課題解決に役立つ示唆が得られると考えられます。
市場や競合の動向がつかめる
ソーシャルリスニングは、自社に対する意見だけでなく、業界全体や競合ブランドに関するトレンド把握にも活用できます。
具体的には、「業界全体でどのような話題が盛り上がっているか」「競合他社の商品・キャンペーンに対するユーザーの反応はどうか」「新たなニーズや潜在的な不満が生まれていないか」といった情報を、タイムリーに取得することが可能です。
例えば、ある新製品が市場に投入された直後、「想像以上にサイズが大きかった」「価格に対して機能が物足りない」といった反応が多ければ、自社製品の開発方針やプロモーション設計に即座に反映することができます。
ソーシャルメディア、主にX(Twitter)を分析していると、こうしたインサイトのヒントとなるような、ユーザーが目を引く行動を取っているツイートを発見できます。例えば、以下のようなツイートがありました。

このツイートを見るに消費者の中には「ランニング」でヘトヘトに疲れた後に「ビール」を飲みたいという欲求を駆り立てられる人が一定数存在しており、また発信はしてはいないものの、こうした潜在的な、他者から訴求されるまで自分でも気付いていなかった欲求(インサイト)を抱えている消費者が存在し得ると考えられます。
こうした行動は「新奇事象」と呼ばれ、まだ一部の消費者が行っているに留まるものがほとんどですが、そこから読み取れる消費者心理は、商品開発や広告作成などに大いに役立ちます。
市場の空気感をリアルタイムで読み取ることで、競争優位性の確保につながります。
自社アカウントのフォロワーのユーザー像や見込みユーザーを知れる
自社アカウントのフォロワーのプロフィール文などから、フォロワーがどういったユーザーなのかの大枠を分析し調査することができます。さらに投稿にエンゲージメントしているユーザーを分析することで、現状のアカウント/投稿内容に対して好意的なユーザーを分析することが可能です。
また、自社アカウントの過去投稿へのエンゲージメント傾向や、自社商品に関する口コミを分析することで、これまでの運用の振り返り、今後の運用方針の策定ができます。
他にも、自社商品に関する口コミを分析し、フォローしてくれる見込みのあるユーザー像を把握することができます。また、自社商品に対して好意的な言及をしているユーザーをリスト化し、そのアカウントにX(Twitter)広告を出稿する、といったことも可能です。
例えば、ポジティブな発言の可能性が高い投稿を抽出し、図のようなワードクラウドなどの可視化手法を用いて頻出ワードを調査してみます。

こうしたワードを元に、例えば「アイスコーヒ」について実際どのような口コミが行われているのか調査するなど、情報を深掘りしていくことで、自社商品についてどういった人がどのような口コミを行なっているのか、といった傾向が見えてきます。
4. ソーシャルリスニングの活用事例【自治体・企業】
ソーシャルリスニングは、単なるマーケティングリサーチ手法に留まらず、地域課題の可視化から商品開発、リスク管理まで幅広く活用されています。
ここでは、自治体と企業、それぞれの代表的な活用事例を紹介します。
自治体での活用事例
自治体では、住民の声をリアルタイムで把握するためにソーシャルリスニングが導入されています。
従来のアンケート調査では拾いきれなかった日常的な困りごとやニーズを把握できる点が大きなメリットです。
例えば、以下のような問題が挙げられます。
- 駅周辺のゴミ問題が深刻
- 公園の遊具が老朽化して危険
- 防災対策に不安がある
生活者目線の声をSNS上から収集し、行政施策の改善に役立てる取り組みが行われています。
観光プロモーション施策に対してもソーシャルリスニングが活用できます。以下のような分析し、施策の効果検証や次回施策の改善につなげる事例も増えています。
- 訪問客のリアルな満足度
- イベント後のSNS投稿数推移
「住民の声なき声を拾い上げる」ことにより、より現場に即した政策立案を可能にしている点が、自治体での特徴です。
企業の活用事例
企業においては、ソーシャルリスニングが商品開発やブランディング施策に広く活用されています。
例えば、化粧品メーカーでは、
・既存商品の口コミから「ベタつきが気になる」という声を発見
・新商品の開発時に「軽い使用感」を重視する方向性を決定
というように、生活者起点での製品改良を実現しました。
また、飲料メーカーでは、
・ある地域限定の新フレーバーに対するSNS上の反応を分析
・「地元愛」をくすぐる表現が支持されていることを把握
・全国展開時のプロモーションに「地域性訴求」を取り入れる
といった、リアルな共感ポイントを押さえたブランディング施策を展開しています。
このように、ソーシャルリスニングは、単なる市場調査を超えて、顧客インサイトを起点とした戦略設計に役立てられています。
炎上対策や危機管理にも有効
ソーシャルリスニングは、ポジティブな活用だけでなく、リスク管理の観点でも重要な役割を果たしています。
具体的には、
・自社製品やサービスに対するネガティブな投稿を早期検知
・異常な投稿増加(炎上兆候)をリアルタイムで把握
・広がる前に迅速な対応策(謝罪、情報発信)を講じる
といった初動対応が可能になります。
特に、企業のSNS公式アカウントに対するクレームや、商品に関する誤解・デマの拡散は、早期に気付き、正確な情報発信を行うことがダメージコントロールの鍵となります。
ソーシャルリスニングを導入することで、リスクの可視化と迅速な対応フローを整備し、ブランド毀損リスクを最小限に抑えることができます。
5. ソーシャルリスニングのやり方とレポートの作り方
ソーシャルリスニングを実務で活用するには、ただデータを集めるだけでは不十分です。ここでは、基本的な実施ステップと、成果を見える化するレポート作成のポイントについて解説します。
手順1:目的と調査テーマを明確にする
まず、何のためにソーシャルリスニングを行うのかを設定します。
例えば、「自社ブランドの認知度把握」なのか、「競合比較」なのかで、調査対象や分析手法が異なります。
手順2:キーワード・対象期間・対象媒体を設定する
調査に用いる検索キーワード(ブランド名、商品名、業界用語など)を決めます。
あわせて、調査対象とする期間(例:直近3カ月)や、対象とするSNSプラットフォーム(例:X(Twitter)、Instagramなど)も絞り込みます。
手順3:ツールでデータを収集・可視化する
専用ツールやSNSプラットフォームの検索機能を使い、指定した条件で投稿データを収集します。
投稿件数の推移、ポジティブ・ネガティブ傾向、関連ワードの出現頻度などを数値化・グラフ化していきます。
手順4:インサイトを抽出し、仮説を立てる
データの傾向から、ユーザーの本音や課題を読み解きます。
例えば、「製品Aはデザインは好評だが耐久性に不満が多い」といった具体的なインサイトを導き出します。
手順5:レポートを作成して可視化する
ソーシャルリスニングをした結果はしっかりレポートを残しましょう。
レポートの作り方にも工夫が必要です。ポイントは次の通りです。
- データは必ずビジュアル化する
- 結論ファーストでまとめるユーザーの「生の声」を適切に引用する
- 施策提案までセットにする
投稿件数の推移やポジ・ネガ比率、話題キーワードランキングなど、数値データはグラフやチャートで視覚的にまとめましょう。グラフ化することで、直感的に変化や傾向を理解できるようになります。
「何が分かったか」「何を示唆しているか」を冒頭にまとめ、詳細データはそのあとに補足する構成にします。
また、定量データだけでなく、特徴的な投稿内容を引用し、「こういうリアルな声が上がっている」ことを具体的に示し、データの裏付けを強化しましょう。
単なる分析結果で終わらせず、「これを踏まえてどうするか」まで提案するレポートを目指すのがポイントです。
手順6:施策提案・次アクションに結び付ける
得られた示唆をもとに、次に取るべき施策案(投稿改善、新商品の検討、カスタマーサポート強化など)をまとめます。
レポートをまとめるだけでは活用できません。その先に何ができるのかまでを施策に取り込みましょう。
6. おすすめのソーシャルリスニングツールと選び方
ソーシャルリスニングを本格的に活用するには、専用ツールの導入が不可欠です。
機能や対象SNS、価格帯が異なるため、自社の目的に合わせた選定が重要です。ソーシャルリスニングツールを選ぶ際は、以下のポイントを必ず確認しましょう。
- 対応プラットフォーム
- キーワード設定の柔軟性
- センチメント分析機能
- グラフ・レポート出力機能
- リアルタイムモニタリング
これらの機能を押さえた上で、使いやすさやレポート共有のしやすさなども加味して総合的に比較検討しましょう。
料金も大切です。ソーシャルリスニングツールには無料版もありますが、本格的な活用には有料ツールの導入がおすすめです。それぞれの特徴と選び方のポイントを整理します。
まずは無料版やトライアル版を試し、自社ニーズに合うかを確認しましょう。単なるデータ収集だけでなく、「どれだけ実務に活かせるか」を基準に選定することがポイントです。
特に、レポート作成や施策提案に活かすことを重視する場合は、有料ツールの導入が費用対効果の面でもプラスになるケースが多くなります。
それでは、代表的なソーシャルリスニングツールをいくつか紹介します。
BuzzSumo

グローバルで人気のリスニングツール。話題になっているコンテンツやキーワードを可視化し、競合分析にも強みを持ちます。
Brandwatch

膨大なSNSデータをリアルタイムで収集・分析できる高機能ツール。感情分析(センチメント分析)やトレンド予測にも対応しています。
Social Insight(ソーシャルインサイト)

日本企業向けに最適化されたツール。X(Twitter)、Instagram、YouTubeなど複数プラットフォームのデータ収集・分析に対応しています。
Meltwater

メディアモニタリングに強みを持つツール。SNSだけでなく、ニュースサイト、ブログなど幅広いデータソースから情報収集が可能です。
7. まとめ:ソーシャルリスニングを自社成長にどう活かす?

ソーシャルリスニングは、単なる情報収集のための手法ではありません。顧客理解を深め、競合との差別化を図り、事業成長につなげるための強力な武器です。
ソーシャルリスニングで得られたインサイトは、実行アクションに結び付けてこそ価値を発揮します。「消費者はこう感じている」「競合はこう動いている」といった分析結果を見て終わるのではなく、具体的なアクションプランへの接続が欠かせません。
ソーシャルリスニングに興味はあるが、何から始めればいいかわからないという場合は、小さく始めてみることが効果的です。
例えば、以下のような小規模なテーマ設定と仮説検証サイクルを回すことから始めましょう。
- 自社名や競合名で簡単なキーワードモニタリングをしてみる
- 特定キャンペーンに対する反応だけを集めて分析する
- 月に1回、インサイトレポートを社内共有してみる
このプロセスを通じて、「どんなデータが得られるか」「どこに課題があるか」「どのように施策に活かせるか」が具体的に見えてきます。
まずは身近な課題から取り組み、成功体験を積み重ねることが、ソーシャルリスニングを自社の成長エンジンに変えていく近道です。
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■参考文献:
- スティーブン・D・ラパポート「リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書」, 翔泳社, 2012年
- 岸川 茂, JMRX NewMR研究会「この1冊ですべてわかる オンライン定量・定性調査の基本」, 日本実業出版社, 2021年
- 高見 俊介「ロイヤルティリーダーに学ぶ ソーシャルメディア戦略」, ファーストプレス, 2011年
- 松本 健太郎「なぜ『つい買ってしまう』のか?『人を動かす隠れた心理』の見つけ方」, 光文社新書, 2019年
この記事を書いた人:澁谷海渡









