【3社部長対談!】フルスピード社調査から見る国内企業の海外向けSNSマーケティングの現状と課題、プロが伝えたいこと

2017/10/25

先日、インターネット広告やソーシャルメディア運用を手がけるフルスピード社は「海外SNSに関するアンケート調査結果」を発表しました。同調査では、海外SNSを利用し情報発信を検討する企業がSNSに期待する項目や運用上の悩みについて集計されています。

インバウンド向けの集客が多くの企業で課題となっている今、ソーシャルメディアの広告や運用領域で活躍するプロにお話しをうかがうため、ラボ編集部はガイアックス、フルスピード、トライバルメディアハウスのソーシャル関連事業の部長3名の対談を取材してきました。

■フルスピード社記事はこちら:
海外SNSプロフェッショナル座談会 「グローバル展開でも『伝わる』ソーシャルメディアマーケティング」
http://growthseed.jp/symposium-overseas-sns

モデレーター / 株式会社フルスピード 松本愛彦氏
撮影・執筆 / 株式会社ガイアックス 小東真人

    ■目次

  1. 対談者プロフィール
  2. 資料について
  3. 企業が海外向けに発信したい内容と現場の実態
  4. 企業が海外に向けてSNS発信する上で障害となるもの
  5. これから海外向けにSNS運用を始めたい企業に一言

1. 対談者プロフィール

株式会社フルスピード米村一精

株式会社トライバルメディアハウス田中寛人

株式会社ガイアックス管大輔

2. 資料について

本記事に出てくるフルスピード社「海外SNSに関するアンケート調査結果」の回答者の属性データは下記になります。

3. 企業が海外向けに発信したい内容と現場の実態

  • 「商品・サービス関連情報紹介」:56.3%
  • 「イベント・セミナー情報」:42.8%
  • 集客につながる情報発信のニーズが目立つ

 

松本氏(以下、敬称略):また上記資料とは別に、実際どの国にSNSの情報発信をしていきたいか聞いた項目もあります。最も多いのが、中国台湾韓国といった日本の周辺諸国です。次にアメリカその他アジア諸国ヨーロッパという順になりました。

実際、各社のSNS案件ではどういったものが増えていますか? 相談内容、具体的な業種、対象となる国を聞かせていただきたいです。

トライバル田中氏(以下、敬称略):弊社では国内向け、製造業を中心としたメーカーさんの仕事が多くて、それに伴い、「国内だけじゃなく海外展開も含めて支援してほしい」というのが増えてきています。どちらかというと、昨今のインバウンド需要のような小売りとか、店舗の集客や販売促進の話はそんなに多くないのが現状です。

業種は衣類メーカーや自動車、消費財、化粧品などの企業さんからお仕事の相談は多いです。対象国でいえばシンガポールマレーシアタイインドネシアなど、ASEAN地域です。

ガイアックス管:弊社では、クライアントの業種でいうと、スポーツ系とか、海外不動産メーカーアニメオタク系の商材など様々です。あと、弊社はフィリピンに拠点があり、現地で実際に運用もしていて、フィリピン国内の大規模ファーストフード店の系列などもやっています。

また子会社がソーシャルゲーム系のカスタマーサポート対応なども得意としていて、そこではソーシャルを使ったマーケティング系もやっているので協力したりしています。なので、都内でできる場合とフィリピンでできる場合の2つのパターンで運用の案件がありますね。

松本:フィリピンに拠点があるんですね。ちなみに中国や台湾とか、そのあたりのニーズに傾向はありますか?

:中国系に関していうと、Facebook、X(Twitter)、Instagramっていうのがないので、ウエイボーとかWechatとか、現地で特化したソーシャルがありますよね。

その中でいうと、パートナーとして単体でクライアントにできることって限られてしまいます。たとえば、ウエイボーのアカウントを作れるのも認定代理店だけで、数社に限られていますし。中国マーケットの参入って結構大変だろうなと思っています。

一方、よくあるクライアント企業の悩みでいうと、中国系に強い代理店に丸投げして、成果が上がらないっていう点です。意外とニーズがあり、どこか成約してるんだけど、成果が上がっていないから、リプレイス先を求めていて「他どこか良いところってないんですか」っていう話は聞きますね。そういう意味では、中国はまだまだチャンスがあるんじゃないかと思っています。

4. 企業が海外に向けてSNS発信する上で障害となるもの

  • 「外国語で対応できるスタッフがいないため」:45.2%
  • 「社内で運用する人的リソースがないため」:42.2%
  • 「SNS運用のスキルが不足しているため」:38.0%
  • →課題は主に「外国語対応」「人的リソース」「スキル不足

 

松本:調査では「外国語対応」「人的リソース」「スキル不足」などが課題として挙げられていました。今まであった相談企業の中で、ネックになっているところって実際いかがでしたか。

田中:弊社が求められるのは海外での在住経験とか、仕事経験がある人材を体制の中に加えられるかどうかっていうところが問われるところです。翻訳だったら翻訳会社に頼めばいいっていう話になってしまう。

現地の文化だったり、風習、慣習が理解できている人材が体制の中に組み込まれているかどうかっていうのは、すごく重要視される企業が多いように感じます。

ただ、そういう人材がいるのかどうかっていうのは、すごい難しい。東南アジアって言っても、それぞれ国があるわけなんで、日本と同じようにそれぞれ異なる文化とか、マーケットがある、そこを一括りにできるか問題がある。

松本:たしかに現地の理解は大切ですよね。たとえば東南アジアでも一括りにしても文化が違うはずですし、そのあたりクライアント企業も気にするんですね。

フルスピード米村氏(以下、敬称略):そのとおりですね。弊社の案件では、写真とかで紹介する時に、実際に書いている現地の子が写真に出ちゃうんです。たとえば現地の中国人向けに中国人のスタッフが、Facebook上で「ここは◯◯だよ」って紹介してくれるような投稿を作っています。

ただの翻訳ではなく自分で出演して、自分でライティングして、中国人向けに、日本のお店はこういうところが良いって伝えているわけです。

5. これから海外向けにSNS運用を始めたい企業に一言

松本:最後に、ずばり海外SNS運用を始めるにあたって想定しておいた方が良い重要なポイント、視点って何でしょうか。

米村:海外マーケティングをやるんだったら、入り口は絶対にSNSが良いってことです。日本から全世界へ、言語を変えるだけで配信できるって凄いですよね。こんな素晴らしいツールないなと思っていて。

まずSNSでスタートして、当たれば現地の代理店と一緒にやっていけばいい。海外をSNSから入るのはかなりオススメです。競合の動きも調べて比較的すぐ分かります。また、始める費用も他よりとても安いですよね。

田中:これまでソーシャルが日本に台頭してきて、FacebookやX(Twitter)、Instagram、どうやって企業のコミュニケーションに取り入れていくのか、成功と失敗の大きな分かれ目っていうのが「手段の目的化をしないこと」と思っています。

SNSであろうと、やっていることはマーケティングコミュニケーションです。ターゲットが誰で、目的が何で、という話だと思うんです。そのなかでブランドの世界観や伝えたいメッセージが、どのプラットフォームだと効果的に伝えられるのかという違いだと思います。たとえば「Facebookを使う」ところからスタートしちゃうと、そこが見えなくなる。何のためにやっているんだっていう話になるケースが非常に多い。

国内であろうと海外であろうと、何のために海外向けにSNS運用していくのか、誰に対して、コミュニケーションしていくのか、それを達成するためのコミュニケーションコンセプト、コミュニケーションコンテンツっていうのはどういうものを運用していくのかがしっかり決まっていれば、あとは国と国の文化、慣習、風習、宗教に合わせて気をつけて運用していければ良いのではと思います。

:2012年からずっとアカウント運用しているんですけど、日本でも海外でも最近企業のソーシャルのマーケティングって企業のアカウント運用にこだわる必要はないなって感じています。

たとえば、私は遊びに行くときInstagramで検索するんですけど、この前も銀座シックスに行って、銀座シックスのチェックインの経歴をInstagramで調べて、今どこの店舗の料理が美味しそうだとか、X(Twitter)で銀座シックスの混雑状況を見れるとか。

買いたい商品をX(Twitter)で見ると、Amazonよりも生の声が見られたりもしますよね。若い人たちでもGoogle検索とか企業が作っているサイトとか信用しなくなっている傾向が絶対あるので、InstagramとX(Twitter)とかユーザーの動きを研究して、海外では調べた先にいい情報が来るように、出したい情報が来るように場の設計をちゃんとしないといけないと思います。

あとは、企業のアカウントの運用もリーチが厳しいという状況も実際起きているので、一般のユーザーを巻き込んだマーケティング活動も大事だなと思っています。弊社でも「インフルエンサーラボ」っていうメディアを立ち上げるんですけど、インフルエンサーと企業のマッチングってチャンスがあるなと思っていて、ユーザーをどう巻き込んでマーケティングしていくかが今後大事になると思います。

この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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