CVRが7倍! 会話広告「fanp」が実現する、資産になる新しい広告体験とは

2018/04/18

広告をタップしたらFacebookメッセンジャーが立ち上がり、選択肢を選んでいくだけで勝手に会話がすすむ……。こんな広告を体験したことはありますか?

それは、もしかするとチャットボットを活用した会話広告「fanp」かもしれません。インフィード広告からチャット画面に誘導し、会話しながらユーザーが興味のある情報を提供する仕組みで、新しい広告体験を実現。ランディングページへの誘導と比べて7倍のCVR改善につながったというデータもある近年注目のツールです。

今回は「fanp」を提供する株式会社ZEALS代表取締役CEO清水正大氏にインタビューを実施。事業開始のきっかけ、会話広告の効果、今後の展開についてお話を伺いました。

Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑

    ■目次

  1. プロフィール
  2. 立ち上げの経緯
  3. 「出して終わり」じゃない資産になる広告
  4. 最初の問い掛けが重要
  5. 人材・不動産・保険業界は会話広告の効果を出しやすい
  6. お客さまの資産になる会話データ

1. プロフィール

清水正大 氏:株式会社ZEALS代表取締役CEO

1992年岡山県出身。大手重工業企業にて航空機や高炉などの鉄鋼製造に従事。
東日本大震災を契機に「日本をぶち上げる」という志に人生を賭けることを決断。働きながら貯金した資金で、明治大学に21歳で入学。
明治大学在学中の2014年4月に株式会社ZEALSを設立。「チャットボット×広告」をコンセプトにした新たなネット広告サービス「会話広告 fanp」を提供。
2018年1月にJAFCO、フリークアウトより総額4.2億円の資金調達を実施。(累計調達金額は約5億円)
2018年3月には「アジアを代表する30才未満の30人の起業家」(正式名称 : Forbes 30 Under 30 Asia) のエンタープライズ・テクノロジー部門にノミネートされる。

2. 立ち上げの経緯

コミュニケーションロボット開発から、チャットボット事業へ

大久保:会話広告「fanp」立ち上げのきっかけを教えてください。

清水氏(以下、敬称略):きっかけは2016年4月、Facebookがメッセンジャー上でチャットボットを作成できる「Bots for Messenger」を発表したことです。

もともと僕たちは「コミュニケーション×テクノロジー(コミュニケーションテック)」の領域に注目しており、コミュニケーションロボットの開発をしていました。ただ、ユーザーが満足できる体験の実現には程遠く、さらにはロボットを使っている人が少なくて会話データも思うように溜まらず悩んでいました。そんなタイミングにFacebookがメッセンジャーをオープン化する発表を行い、衝撃を受けました。。

僕たちは、コミュニケーションロボットの技術をそのまま活用でき、Facebook メッセンジャーのユーザー13億人に会話サービスが届けられることから、チャットボット事業にピボットを決断しました。その後すぐに「BOT TREE」というサービスを開始しました。

当時は、まだしっかりと事業モデルのイメージがなかったのですが、ヒアリングと仮説検証を繰り返す中で現在のfanpにつながる「タップ会話」という方式が生まれました。これは選択肢を提示して選んでもらいながら会話を進めるというやり方なのですが、ユーザーからの返答率が圧倒的に高いんです。そこから会話広告「fanp」のリリースに至っています。

3. 「出して終わり」じゃない資産になる広告

広告をタップしただけのユーザーの情報も蓄積可能

大久保:fanpにはどのような特徴があるのでしょうか。

清水:最も大きな特徴は、広告をクリックしたユーザーのデータを蓄積していける点です。

fanpはFacebookのデータと連携しているので、広告をタップしたユーザーのデータを蓄積できます。どのような人が広告に訪れているか、訪れた人はどんなコミュニケーションを取っているのかなどを全て可視化できるんです。

過去の広告は、例え広告をクリックしてランディングページに訪れても、コンバージョンしなければその人のデータはほとんどとれませんでした。でもfanpならタップするだけでユーザーデータを取得できるので、コンバージョンに至らなかったユーザーの情報も得られます。

継続的なプッシュで高いCVRを実現

大久保:エントリーフォームに入力してくれなかったユーザーのデータも取れるというのは斬新ですね。

清水:そうなんです。しかも、1回目に会話をした時にはコンバージョンしなかったユーザーに継続的に声かけをすると、10人に1人がコンバージョンすることもあるんです。つまりCVRが約10%。普通の広告では考えられない数値ですよね。

今まで広告は打ったら打ちっ放しで、ランディングページに着地するユーザーを財産にできていませんでした。しかし「fanp」ではユーザーのプロフィールがプールされていくため、広告が無駄にならない。初回の会話から8ヶ月後にコンバージョンしたデータもあります。

大久保:確かにCVR10%の広告というのはなかなか無いと思います。継続的な施策が必要とはいえ、広告効果は高まりそうです。

清水:CVRが高い要因は継続的な声掛けだけではなく、会話形式でサービス登録・申し込みができる手軽さも影響していると思っています。ある意味これはEFO(エントリーフォーム最適化)のひとつと考えられます。データを蓄積できる上に、EFOとプッシュ施策でコンバージョンへ誘導できるので、1回の広告を資産として活用できるのが、今までにない特徴だと思います。

4. 最初の問いかけが重要

1問目を回答したら10問目まで回答率は落ちない

大久保:広告をタップするだけでユーザー情報が得られるのでそれだけでも価値はあると思うのですが、実際に会話に返事をしてくれるユーザーがどれくらいいるんですか?

清水:会話の設計次第で、回答率はかなり変わります。といっても、じつは1問目を回答したユーザーはそのあと10問ほど質問があっても離脱しにくいというのがデータで出ているんです。1問目を回答してくれるか否かで、その後どれだけユーザーから情報を得られるかが大きく変わる。最初の問いの設計が重要です。

大久保:会話のシナリオはどのように作られているのでしょうか。

清水:いくつものシナリオを作り、仮説検証し、結果に合わせて組み替えながらパフォーマンスを最適化しています。結果の悪いシナリオを無くしたり、結果の良いシナリオ・悪いシナリオを少しずつ改変したものを作って検証したり、シナリオ作りの部分は最も力を入れています。

大久保:どのような会話だと特に効果が高いといった傾向はありますか。

清水:ユーザーの回答に対してきちんとフィードバックをしてから次の質問をすると、回答率は上がりますね。例えばエンジニア転職のチャットだと「Javaが得意です」と答えたユーザーに対して「Javaが得意なんですね!」と返す。細かいことなのですが、無機質な会話にしないことが大切です。
あえて「なるほど」というボタンを用意して、ユーザーにわざわざ相槌をしてもらったりもします。

メッセンジャーをやり取りする時に、1文1文「ありがとうございます」「今日の予定は何々で行きましょう」「あと資料を…」と吹き出しで切ってくる人っていますよね。長文のメッセージより、実はそちらの方がちゃんと読まれる。チャットボットでも同じく、できるだけメッセージを短文で切ってお届けしています。

5. 人材・不動産・保険業界は会話広告の効果を出しやすい

大久保:「fanp」を導入して、特に効果が出た企業や業界はありますか。

清水:過去の事例で特に効果が高かったのは、人材・不動産・保険業界です。共通しているのは、検討期間が比較的長いという点。例えば人材の場合、一度転職の検討をやめても、同僚が転職したから私もしようかなとか、再度検討する機会がやってきます。その時に横にいられる存在であるかということが重要です。

またこれらの業界では、申し込み時にユーザーから受け取る情報量が多いため、メッセンジャーでのタップ会話のEFO的な効果も享受できます。

逆に検討期間が短いもの、直感的に購買が決定されるものはそこまで相性は良くないです。タップ形式で会話を進めることでユーザーが知りたい情報を効率的に提供でき、商品理解を促進できるのが会話広告の強み。その必要が無い商品は、別の広告のほうが効果的かもしれません。

大久保:ユーザーデータを蓄積できるという点ではCRMの側面もあるのかなと思うので、検討期間が長い商材と相性がいいというのは納得です。今までCRMを使ってメルマガを配信していたのをfanpに置き換えるようなことも起こるのでしょうか。

清水:おっしゃるとおり、メッセンジャーでのプッシュはメールマーケティングに近いです。

もともとメルマガで使っていたコンテンツも転用しながら、「このセグメントの人にはこのコンテンツを使おう」「初めての人にはこの設定を」など、きめ細かく設定・配信しています。もちろん、開封率やアクション率も見ており、開封率が一定以上の人限定でメッセージを送る設定も可能です。

数値が悪くなってきているユーザーには、メッセージの頻度を減らして月1回のお知らせを届けるといったチューニングもでき、ユーザーとの距離感を適度に保てるようにしています。

6. お客さまの資産になる会話データ

大久保:広告配信だけでなく、メールマーケティングなど様々な役割を担うことが期待されますが、今後はどのような展開を目指していますか。

清水:会話データを、確実にお客さまの資産にしていただけるサービス展開をしていきたいです。

最近ではスマートスピーカーなども出てきており、「(音声を含む)対話インターフェースにどう向き合えばいいか」を考えているお客さまは多いです。僕たちは、会話広告「fanp」を通じて、未来、音声インターフェースにお客さまを導いていこうと考えています。

そのキーとなるのは会話データです。「はじめまして」と現れた人が、ボットとの会話を通して最終的にコンバージョンするまでの流れの中で、ユーザーとどうコミュニケーションをとったのかという会話データの蓄積は非常に重要です。早くから質のいい会話データを蓄積していた企業でなければ、これからの音声インターフェース、AI活用などの流れに上手く乗れません。

日本は人口減少が加速していく背景もあり、今のように「人が丁寧に接客する」という営業手法が難しくなっていくかもしれない。セールスパーソンが担っていた役割を、新たな対話技術を持った機械が担う時代にしていかなければいけないと思っています。これを実現する技術こそ、まさに「コミュニケーションテック」です。その役割を担い、パイオニアとして時代を切り開いていきたいですね。