人口たった2%の検討層にどうアプローチ? 自動車業界のInstagram、Facebook活用最前線!【#IGAUTO イベントレポート】

2019/09/03

Instagramには食べ物や景色、友人との楽しい時間などたくさんの写真が日々アップされていますよね。商品の持つ世界観や機能を知ってもらうために企業も工夫を凝らしたオーガニック投稿や広告施策を行っています。

ソーシャルメディアラボ編集部は消費者が購入する際の検討期間が長いと言われる自動車に関して学ぶべく、8月27日に行われたFacebook社公式イベント「Insta Auto Summit」に参加してきました。

そこでFacebook社の発表や先進企業の担当者様から、ブランディングからダイレクトの領域まで、InstagramやFacebookを活用したユーザーとのコミュニケーション施策を学んできたので、今回はご紹介します。

Text, Photo / ガイアックスソーシャルメディアラボ編集長 小東真人(@gxsoc_kohigashi)

認知や理解を促すInstagram活用

始めにご紹介するのはフェイスブック ジャパンの自動車担当クライアント パートナー マネージャー武村綾悟 氏による、認知や理解を促すInstagram活用についてです。

同紙の発表では、Instagramユーザーに対して自動車メーカーはどのようにして新しい車種を知ってもらい、各機能や特徴を理解してもらうと良いかをリーチ、ターゲティング、訴求内容、計測の四つのポイントから説明されました。

リーチ、ターゲティング

まずリーチやターゲティングに関して、Facebook社の調査によると、自動車業界の広告主が広告配信時に興味関心でターゲティングした場合、2/3のユーザーには配信されず機会損失になってしまうそうです。

そのため始めから大規模に配信し、機械学習によりオーディエンスの自動最適化をさせた方がかえってリーチが伸びると言います。

なお機械学習では既存ユーザーの行動特性や過去の反応履歴、購入ユーザーの特性が加味されているため、高精度のターゲティングが実現されるそうです。

訴求内容

次にクリエイティブについて、モバイル最適化の重要性が取り上げられていました。

無作為に選んだユーザー群のなかから広告を当てるグループと当てないグループに分けて、配信結果を比較するブランドリフト調査の結果が発表されました。

  • 広告認知リフトの発生率
    • モバイル動画:90%
    • TV素材:65%
  • 好意度リフトの発生率
    • モバイル動画:40%
    • TV素材:5%

やはりTV素材をそのまま配信するのではなく、Instagramのストーリーズやフィードに対応した独自のクリエイティブに作り替えることで、広告認知と好意度ともに向上する結果でした。

特に好意度に関してはモバイル動画がTV素材の8倍を記録しており、圧倒的な効果だと言えます。

また、走行感やデザイン、収納性など自動車の機能別に訴求軸を変えた複数のクリエイティブを用意し、どれがユーザーに刺さるのか検証する重要性についても言及されていました。

計測

またブランドの向上を図った広告において、クリック率と態度変容には相関性はあまり見られないと言います。

そのためアンケートを実施して態度変容したか否かを分析することが重要だと伝えられました。広告の効果検証、特にラストクリックによる計測の限界は度々話題にあがりますね。

事例:日産自動車株式会社

セクションの最後には、日産自動車株式会社で日本マーケティング本部 ブランド&メディア戦略部/ 部長を務める堤 雅夫 氏から、効果的な広告クリエイティブについて同社の事例が発表されました。

同社ではクリエイティブのモバイル最適化を行ったところ、2017年と比べて2018年の配信コストが30%減ったそうです。まだモバイルに特化したクリエイティブの導入が70%なので、これからもっと増やしていきたいと堤氏は意気込みを語っていました。

加えて、視聴者の脳波を調べてクリエイティブのシーンごとの感情や記憶、注目度の反応を調べるニールセン社のニューロ調査について、同社で試した時の様子が紹介されました。

こちらがTVCMに使われた動画。このなかからより効果的なシーンをモバイルの動画素材として抽出します。

堤氏によると、調査結果を受け、バック走行時の安全性やブランドを効果的に想起してもらえるシーンを特に意識してクリエイティブの改善に活用したと言います。

その結果、広告認知2.4倍、安全性の認知が3倍に向上させられました。科学的なアプローチによって、既存の素材を効果的なモバイルクリエイティブにさせた参考になる事例ですね。

行動を促すInstagram活用

次にフェイスブックジャパンのチームリードクライアントソリューションマネージャーである伊坂英雄 氏から、見積もり依頼や試乗予約、購入などを促すFacebookやInstagramの活用について発表がありました。

同氏の発表はInstagramの強みを踏まえて、自動車業界の獲得系の広告施策について特にフォーカスされていました。

前提として「今、新車の購入の検討を行っている消費者の割合」、つまり自動車メーカーがアプローチしたいと思ったそのタイミングに、新しい車が欲しい消費者の割合は(18歳以上の全人口のうち)わずか2%だそう! この数字は2018年度の一カ月当たりの自動車の販売台数や購入者の検討期間から割り出されたものです。

そのため(中長期のブランディング施策を別と考えた場合)、新型発売時の短期間に大型キャンペーンを行うだけではこの2%の消費者の認知を獲りにいくのは難しいと言います。

そんな2%の消費者に対してアプローチするためにどうすべきか。会場では行動データを計測できるピクセルをWebサイトに埋め込み、FacebookやInstagram広告の精密なターゲティングでアプローチする手法が推奨されていました。

ここからはWebサイトにおけるユーザーの行動データを活用した広告配信やFacebookやInstagramが誇る自動車業界向けソリューション、実店舗の購買データを掛け合わせた広告配信アプローチを紹介していきます。

データ活用広告、自動車向けソリューション

Facebookではメーカーや車種、年代、価格といった詳細情報はもちろん、製品の在庫を踏まえた広告配信が可能です。新規ユーザーへの露出や過去のサイト訪問者ユーザーへのリターゲティングが効率的に行えます。

次に具体的な広告フォーマットについての説明です。

まず閲覧履歴や購買履歴をもとに自動的に配信するダイナミック広告ですが、自動車特有の車種や機能、店舗の在庫状況に合わせてパーソナライズされた配信ができます。

続けてリード獲得広告について、Webサイトでは試乗予約を誘導した場合に本来名前やメールアドレスの入力が手間になるところ、Facebookの広告では既に一部の情報が入っているためユーザーはスムーズに手続きでき、完了率が高まるそうです。

購買データ活用

最後に購買データの活用についてです。Webサイトなどオンライン上のデータだけではなく、実店舗の購買データなどオフラインデータと突合させることで、単体よりも更に効率的に配信できるようになります。

具体的には、自動車メーカー企業が保有する売上データと紐づけることで広告によるCPAやCPCではなく実際の売上貢献額まで可視化できるようになったり、自動車のオーナーの情報をもとにした類似オーディエンスによる配信や直近の購入者の配信除外などが可能になります。

事例:ビー・エム・ダブリュー株式会社

また発表の後半には、ビー・エム・ダブリュー株式会社でコミュニケーション・サブライン・マネジャーを務める井上朋子 氏との対談も行われました。

ディーラーへの送客、リード獲得に携わってきた井上氏はInstagram活用においてモバイルファーストなクリエイティブ作りにも尽力してきたそうです。

プレミアムな価格帯の輸入車を販売している同社では、日本の消費者に身近に受け取ってもらえるようにコミュニケーションを心がけていると言います。

Facebook社とのクリエイティブ改善に関するワークショップを通じて、動画自体の尺やメッセージの位置、動画の形、ブランド名の表示場所を工夫されたそうです。

その結果、改善前のクリエイティブよりも、試乗申込の意向の向上に40倍近く貢献できたそうです。

まとめ

いかがでしたか?

今回は価格差や機能の違いが大きく検討が比較的慎重になりやすい自動車業界について、認知や理解、行動促進のファネルに分けて解説をまとめてきました。

機械学習による精緻なターゲティングが行える広告配信やクリエイティブの工夫など、各自動車メーカーの取り組みが参考になったと思います。

今後も編集部では特定業界の知見についても収集してきますので、楽しみにしていただければと思います!

この記事を書いた人:小東真人

ソーシャルメディアラボ編集長。地方や中小ビジネス向けセミナーなどを担当。
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。

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