ソーシャルメディア活用に必要な運用体制とコミュニケーションルールの設計【ソーシャルメディア活用の教科書・後編】

2020/03/04

本連載では、Facebook、X(Twitter)、Instagramなどのソーシャルメディアを活用したい方のために、必要な基礎知識を体系的にまとめています。

後編は、ソーシャルメディア活用にあたって整えるべき運用体制やユーザーとどのようにコミュニケーションをとるかの方針設定、ソーシャルリスニングのやり方について解説していきます。

【連載記事】
【前編】ソーシャルメディア活用の目的とコンテンツ方針の設計方法
【中編】ソーシャルメディアマーケティングにおけるトリプルメディアの考え方とKPI設定

1. ソーシャルメディアを活用するための運用体制

ソーシャルメディアは、ひとつのアカウントがひとつのキャラクターのように見られます。つまり、運用にあたっては一貫性が重要です。1人で運用する場合も複数人で運用する場合も、目的や発信方法に沿ったコンテンツを配信しているか常に確認しなければなりません。特に複数人で運用する場合は、投稿者によるブレが少ないように気をつけましょう。

また、ソーシャルメディアの効果を出すためには、一定以上の頻度での投稿が推奨されます。継続的に、ある程度の頻度で投稿できるような体制を整えることが望ましいです。

理想的な投稿頻度は、利用するSNSや業種業界によって異なるため一概には言えません。同業他社のアカウントやユーザーの反応を参考に調整していきましょう。参考までに、下記に各ソーシャルメディアの投稿数の目安を示します。

Facebook

フィードへの投稿は1週間に1回以上。投稿間隔はなるべくつめず、分散させることが望ましい。また投稿の露出を増やす広告の使用はほぼ必須となるため、広告運用の人員も確保することを推奨。

X(Twitter)

タイムラインに1日に1投稿以上、できれば3投稿以上が望ましい。もし可能であれば、機をみながら即時投稿できるような体制がベスト。その場合投稿数の上限は気にせず、ユーザーの反応をみながら調整してよい。

Instagram

フィードへ一週間に2投稿以上、できれば一日1投稿以上が望ましい。投稿間隔がなるべく一定であることが望ましい。また、ストーリーズはフィード投稿とは別に、積極的に行うことが望ましい。X(Twitter)のタイムライン投稿と同じで、上限や間隔は気にせず、ユーザーの反応や、発信したいタイミングで行って問題ない。

2. 相互コミュニケーションの方針設計

ソーシャルメディアでは、アカウント上でユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションが発生します。そのようなコミュニケーションは、ソーシャルメディア活用では大変有効に働きます。こちらからコミュニケーションをとる場合も、ユーザーからの反響に応える場合もあり、どちらも認知拡大、好意形成に効果的です。

以下では、考えられるコミュニケーションのパターンを記載します。コミュニケーション方針を決める際の参考にしてください。

運用者側から能動的にコミュニケーションをとる場合

ソーシャルメディアで訴求する商品・サービス・企業や、コンテンツについて好意的な言及しているユーザーの投稿を検索し、反応(いいね、返信、リツイート、引用リツイート、コメント、シェアなど)を行います。

ユーザーの承認欲求を満たすことでさらなる言及を増やす効果や、商品・サービス・企業に愛着を持ってもらう効果が期待できます。

ユーザーからの反響に応える場合

アカウントの投稿に対して反応(いいね、返信、リツイート、引用リツイート、コメント、シェアなど)してくれているユーザーの投稿に反応します。細やかな対応が大変なときは、まとめてお礼をする投稿やコメントを行ったり、いいねのみで返していくだけでも効果があります。

反対にユーザーからのコメントや返信に対し、何も反応をしなければ、悪印象を与えることがあり得ます。特に、質問やお問い合わせに関して対応をしないと、怒るユーザーもいます。もし、対応ができない場合は、予めプロフィールなどで回答できない旨を明示しておくことで、リスクを軽減できます。

その他の場合

投稿と関連するハッシュタグをつけて投稿する、もしくは関係のあるユーザーのアカウントにタグ付け(リンクする)をすることにより、ほかのアカウントや同じ関心を共有するユーザーとつながりやすくなります。発信する情報が拡散しやすくなることはもちろん、情報への関心度も高まりやすくなり、認知拡大にもブランディングにも有効です。

ハッシュタグはX(Twitter)とInstagramで、アカウントへのタグ付けはInstagramで特に有効です。

3. ソーシャルリスニングについて

ソーシャルメディア上のクチコミの状況を調査し、把握することを一般的に「ソーシャルリスニング」と呼びます。ソーシャルリスニングをすることで、ターゲットが商品・サービスにどのような印象を抱いているか、ターゲットはそもそもどのような趣味嗜好や興味関心を持っているかなどのリアルな情報を知ることができます。

そのリアルな情報というのが、実は公式アカウントの情報よりも、大きな力を持つことがあるのがソーシャルメディアです。極端な話をすれば、そのリアルな情報へのプラスの影響力が持てればアカウントを開設して、一生懸命運用する必要すらありません。

商品・サービスの企画や内容、購買現場やCSなどの顧客接点を通じて与える印象が、そのままソーシャルメディアの発信に反映されていくのです。そしてそれらは、公式アカウントの発信や広告よりも強い影響力を持つことが当たり前なのです。お為ごかしの公式情報よりも、リアルなクチコミの方が影響があるという、極めてシンプルな法則です。

また、趣味嗜好や興味関心も重要です。ソーシャルメディアは従来型のメディアに比べて超多チャンネルです。一部の人間が編成権や編集権を持っているわけではないのです、ありとあらゆる興味関心がユーザーによって配信されています。そして、常に超情報過多状態です。

よって、ユーザーの趣味嗜好や興味関心に引っかからない情報というのはほとんどスルーされてしまうのです。テレビなら、一方的に届けられた情報も、ソーシャルメディア上では簡単に無視されます。そのため、一般ユーザーの動向を深く知ることはソーシャルメディアマーケティングのコンテンツを考えるにあたって非常に重要なのです。

このソーシャルメディアの性質をさらに深く理解し、マーケティングで自由自在に扱えるようにするためには、マスメディア、ウェブサイト及びウェブ広告などの従来のメディアとソーシャルメディアの決定的な差を理解する必要があります。

まず、ソーシャルメディアには大きな特徴がふたつあります。高い双方向性と参加可能性です。

高い双方向性は読んでそのまま、発信者側に大きな権限のある一方通行のコミュニケーションではなく、受信側にも大きな発言権があるということ。また、従来の発信者も受信者になりうるということです。

高い参加可能性とは、デバイスとネット環境のあるほとんどすべてのユーザーが受信者としても発信者としても参加できることです。

そうなってくると、従来型のメディアとは違う、ふたつの新しい機能が出てきます。

ひとつは、一般ユーザーの発言力が従来のメディアを上回ること。もうひとつはユーザーが受け取る情報の選択権を持つことです。前者は一般ユーザーの方が圧倒的に多くのアカウントを数えること、従来のメディアよりも機動力があり、他のユーザーにとって身近な存在であることが要因です。

後者は発信者が非常に多くて、自由であるがゆえに、ユーザーが自分に合った情報とマッチングされやすいこと、従来のメディアでは扱えないようなニッチな情報が数多く出回ることが要因です。

それらの機能を持つがゆえに、ソーシャルメディアでは、公式アカウントというよりも、より発信力を持つユーザーがどのように商品・サービスについてどう言及しているか、顧客が、またターゲットとなるユーザーがどのような趣味嗜好、興味関心を持つことが決定的に重要だということになってくるのです。

ソーシャルリスニングの実践

ソーシャルリスニングは、おもにX(Twitter)で行われます。最も本音ベースのクチコミが出やすく、そのクチコミの収拾も容易なためです。

エゴサーチやYahoo!リアルタイム検索(https://search.yahoo.co.jp/realtime)などの無料ツールでも多少の調査はできますが、全体のクチコミ件数を把握することは非常に困難なので、ほとんどの場合有料のツールが使われます。

ツールによっては、FacebookやInstagram、2ちゃんねるなどの掲示板や各種ブログサービスのクチコミも検索できます。また、ソーシャルメディアの全量データを分析できるものから、無作為抽出した一部のデータを分析するものなど機能は多岐に渡るので、導入する場合は目的と予算に合わせ比較検討しましょう。

ソーシャルリスニングでは主に、「言及数調査」「ポジネガ分析」「関連語分析」を重点的に行います

言及数調査

商品・サービスの名前を含んだ投稿の総計とその推移をみていきます。同じカテゴリや近しいカテゴリの商品・サービスとの量的比較を行ったり、施策の事前事後、あるいは進行に伴い増えているかを計測することでブランドの持つ認知度や訴求力を測ります。

質的分析

商品・サービスの名前を含んだ言及が肯定的、否定的、あるいはそのどちらでもないのかを調査します(ポジネガ分析)。ポジティブな言及が多ければ、ブランディングは成功していますし、ネガティブな言及が多ければ失敗しています。

また、言及者の性別や年齢などの属性もツールによっては調査可能です。

ただし、これらは投稿文やプロフィール文に含まれる語彙からポジネガ、属性を導き出しているので必ずしも正確とは言えません。複雑な言い回しやプロフィールが調査対象に多く含まれるような場合は、実態と大きくずれることもあるので注意が必要です。

関連語分析

商品・サービスの名前とともに言及されている語彙でどのようなものがあるのかを調べて分析します。商品・サービスの名前とともに出現している語彙やハッシュタグは、ブランドに対する印象、使用シーンを具体的にあらわしていることが多く、質的分析よりも、具体的な評価を把握することが可能です。

また、商品・サービス名を言及しているユーザーはどのような関心を持っているかを把握するためにも有効で、ソーシャルメディアで拡散しやすい商品の設計やソーシャルメディアのコンテンツの制作には欠かせない貴重な情報となります。

上記のうち、言及数調査と関連語分析は、ツールを使うほど精細にはとれませんが、X(Twitter)やInstagramの基本機能や、Yahoo!リアルタイム検索のような無料ツールでも部分的に可能です。

ソーシャルリスニングのコツ

最後に、ソーシャルリスニングを実践する上でのコツを4つ紹介します。

  1. まずは、全体感をつかむ
    まずは、商品・サービス名だけで検索してクチコミの全体感をつかみましょう。その際、略称や誤記、ニックネームなども漏らさず検索するようにしましょう。
  2. ノイズを除去する
    全体感をつかむ中で、スパム投稿、同音異義語、一時的なバイラルなど、調査対象から外すべき関連語が出てきます。それらはノイズとして、除外ワードに入れて取り除いていきましょう。
  3. 関連語をAND検索する
    特徴的な関連語は、商品・サービス名とAND検索をしてみましょう。すると、特定の印象、利用シーン、関心ごとのポジネガやユーザー属性、関連語が見えてきます。様々なAND検索を行うことで、よりクチコミを深堀りしていき、商品・サービスに対する精細なユーザーの評価が見えてきます。
  4. 商品・サービス名の設計
    ソーシャルリスニングを行う時、そもそも商品・サービス名が抽出可能なものでなくてはいけません。ネーミングの際は、ほかのブランド名と同じ表記のものはもちろんのこと、一般名詞と同じものもなるべく避けましょう。また、正式名称がユニークでも、略称がほかのものと混同してしまう場合もあるため、どのような名前で実際呼ばれるかも予測した上で、名付けてください。

 

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この記事を書いた人:重枝義樹

マーケター。ソーシャルメディアマーケティング事業部 部長。ガイアックスでは大手企業、官公庁中心にソーシャルメディアマーケティングの支援を行う。ガイアックスでの5年に及ぶ経験をもとに、本気でソーシャルをやりたい人のためにSNS禁止のガチ勉強会も行う。

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