ソーシャルメディアは宣伝の道具じゃない!ソーシャル×アイドル「notall(ノタル)」に学ぶ徹底的にSNSを活用する方法
2014/12/10
こんにちは、ソーシャルメディアラボの末広&渕上です。
ソーシャル要素を持つメディアやサービスに着目し、“ソーシャル×◯◯”という観点で面白いと感じたプロダクトについて、開発・運営者に直接話を聞くインタビュー企画の第2弾をお送りします。
今回のテーマはズバリ、「ソーシャルアイドル」。
インタビューをさせていただいたのは、ソーシャルアイドルの先駆けであるnotall(ノタル)です。
アイドルにソーシャルメディア運用法を学ぶ!?
普段ラボで取り扱うことのない「アイドル」というジャンルに、驚く方も多いのではないでしょうか。普段は企業向けのSNS活用ノウハウを発信していますが、なぜ今回はアイドルなのか…。
その理由は、本文を読んでいただけると明らかになります。
ソーシャルメディアの素人であった彼女たちはソーシャルアイドルとして活動していく中で、半ば無意識的にソーシャルリスニングやアクティブサポートを積極的に行い、ファンとのコミュニケーションを非常に大切にし、結果高いエンゲージメント率を達成するなど、SNSを活用したい企業も参考にしたいお話を沢山伺うことができました。
ひいては「ソーシャルメディアはどうあるべきか?」という命題についても考えさせられる内容なので、特にSNS運用に躓いている企業様はぜひご一読ください!
目次:
1.「ソーシャル✕アイドル」という企画の背景
2.ソーシャルアイドルグループ・notall(ノタル)について
3.自治に委ねるソーシャルメディア運用
4.ソーシャルリスニング✕アクティブサポートによるリスク回避術
5.最新のソーシャルメディア活用とKPIの置き方
6.共創型ソーシャルアイドル、今後もSNS運用は自由であれ
7.インタビューを終えて
■お話を伺った方
上・notallのみなさん
左下・株式会社WALLOP放送局 山本様(notallプロデューサー)
右下・株式会社博報堂アイ・スタジオ 十字様(notallのコンセプト発案者)
1.「ソーシャル✕アイドル」という企画の背景
ガイアックス 渕上:
ソーシャル✕アイドルという新しいスタイルのユニット『notall(ノタル)』は、共創型コミュニケーションを実現する新機軸のアイドルとして話題を呼んでいます。こうような企画を打ちだされたのは、どういった考えがあってのことだったのでしょうか?
博報堂アイ・スタジオ 十字:
理由はひとつというわけではありませんが、ソーシャルメディアが一般の方にも普及し、それによってコミュニケーションの形が変わっていく中、人と人がつながっていくことで一緒に何か創りあげ、新しい価値を築けないかと考えたのがきっかけですね。
どの企業においても「to」という発想で一方的に情報発信させるのではなく、「with」発想でのコミュニケーションが求められてきています。
「今」だからできるコミュニケーション手法
博報堂アイ・スタジオ 十字:
AKB48が出てきたときに、今までなら会えなかったアイドルに会えるという売り文句で、新しいマーケットが生まれたと思うんです。
だとしたら、さらにデジタルやソーシャルの力を利用して、ファンやクリエイターという生活者とのコミュニケーションが取れる仕組みをつくり、スマートフォン・ソーシャルメディア・クラウドサービスをフル活用して、「今」だからできるコミュニケーションがあるのではないか。そこが原点です。
ワロップ放送局 山本:
アイドル戦国時代と言われている業界ですが、そういった「今」だからできる要素を取り入れたアイドルプロデュースを試してみたかったという気持ちもありました。
ガイアックス 末広:
notallのように、企画の段階からソーシャル要素を練り込んだアイドルをつくっていくというのは、他では聞いたことのない話なのですが、立ち上げの際に苦労されたことなどがあれば教えていただけるでしょうか?
また、notallのソーシャル活動で最初に取った施策は何だったのでしょうか?
ワロップ放送局 山本:
実はあまり苦労はしていないんです(笑)。ただ、ファンが全くいない状態からこれまでにないアイドルグループをつくって、果たしてお客さんが集まるものなのかという不安はありました。
強いて言えば、つくりあげていく部分はやはり大変でした。どうしていくのが良いかとか、イメージはこうだとか試行錯誤しましたので。立ち上げる段階ではまだ余白の部分でメンバー募集していたりするので、特に大変だったとは感じていないですね
初動もPRはソーシャルメディアを活用
ワロップ放送局 山本:
notallの活動ですが、今年の5月下旬にメンバーが決定し、そこで初めてニックネームとグループ名を募集したのが最初ですね。そのときはFacebookでの拡散とリリースを出したくらいで、特に広告を打ったりはしませんでした。まだグループ名が決まっていなかった時期なので、「ソーシャルアイドル」という名前でFacebookページを開設していました。
正直、当初の反応は少ないかなと思わなくもありませんでしたが、数だけではわからないところもあります。というのも、まったく知らないアイドルのニックネーム&グループ名決めに応募してくれたりするような方は、そもそも期待してくれていたり、何か面白そうだなと思ってくれているものです。つまり、そのままコアなファンになってくれることが期待できますよね。
実際に応募きっかけで応援してくれるクリエイターも生まれました。10人中9人は面白そうとは感じてくれても何もしてくれなかったりするのですが、残りの1人が積極的に情報を拡散してくれるような感じですね。
2.ソーシャルアイドルグループ・notall(ノタル)について
ガイアックス 渕上
notall(ノタル)のメンバーから直接、ソーシャルアイドルとしての活動について伺いたいと思います。自己紹介からどうぞよろしくお願いいたします。
私は以前からお芝居をやっていて、アイドルは趣味で好きな程度でした。
特にアイドルを目指していたわけではないんですが、今の時代のアイドルってなんにでもチャレンジできるじゃないですか。だからお芝居にとらわれず、いろんなお仕事ができるかなって。
それにアイドルをやるなら20代の今しかないと思っていたときに、たまたまインターネットでソーシャルアイドルの募集ページを見つけました。それが応募のきっかけです。
妹がnotallのメンバー募集記事を見つけてきたのがきっかけで応募したんですが、神の啓示って言うんでしょうか、そのとき「お前はソーシャルアイドルになれ!」っていうリプを受けたんですよね。
あと、ワロップ放送局のホームページに載っていた頃末社長の写真が私を呼んでいました。
(一同笑)
私は小さい頃からSPEEDさんに憧れていて、歌って踊るのが大好きでした。
そうしているうちに、いつの間にか時代はアイドル戦国時代に変わっていましたので、今やるならアイドルだなと気づいてそのときに募集していたnotallに応募しました。
カッコいい、女性に愛されるアイドルになりたいなって思っています。
小さい頃から芸能界に憧れてオーディションを受けたりしていたんですが、大学に入ってからは一旦やめていました。
でも就職活動を始める時期に「やっぱり芸能活動がしたい!」と思って、就職はせずにオーディションを受け続けました。卒業が近づいてきても成果がだせず、「このままじゃダメだ…」って思っていたときに見つけたのがnotallのオーディションだったんです。
元々歌も踊りも苦手だったので『アイドル』になろうなんて考えたこともなかったんですが、このオーディションを見つけたときにはなぜか「受けなかったら後悔する…!」って感じたんですよね。それで今ここにいます。
写真・動画撮影OK!ソーシャルメディアでの拡散もOK!
ガイアックス 渕上:
ありがとうございます。ソーシャルアイドルならではの部分についてお伺いしたいのですが、どういったところにソーシャル要素を活かしているのでしょうか?
佐藤遥:
やっぱりライブ中、MC中、物販中に写真・動画撮影OKなところだと思います。しかも「撮った写真や動画はネットで拡散してください!」って言ってあるので、ファンのみなさんが頑張って宣伝してくれているんです。
なので、その日ライブに来れなかった方にもライブ風景がリアルタイムで伝わるんですよ。
それにファンに撮っていただいた写真をネットにアップしてもらって、その写真をCDの裏ジャケットにスナップ写真のような形で載せているんです。
歌詞カードのクレジットには撮ってくれた方の名前が載るので、「ファンと一緒につくっている感」は他のアイドルさんよりあるんじゃないでしょうか。
みんなで作ったAAAシングル CD化決定! 10月23日 Release CDの裏ジャケにはみなさんが撮影し投稿していただいた写真を採用しています! みなさんのお陰で作れました! ありがとうございます! #notall #アイドル pic.twitter.com/obxZSjaRkc
— 「notall」ソーシャルアイドル (@si_notall) 2014, 10月 10
初のワンマンライブもSNSとファンの力で開催決定に
ワロップ放送局 山本:
ちなみにそうやって関ってくれたファンのことを、notallでは「ソーシャルプロデューサー」と呼んでいます。notallは衣装や楽曲、ニックネームを決めるにあたってもソーシャルメディアをフル活用しています。
X(Twitter)上では定期的にリツイート企画をやっていて、宣言した目標リツイート数を達成したらそのツイート内容を実行するというシンプルな企画なんですが、先日のライブ中に「300リツイートしたらワンマンライブします!」とメンバーがステージ上で宣言し、その後、約8時間で見事300リツイートを達成し、SNSによってnotall初となるワンマンライブの開催も決定しました。
【 #RT・#拡散希望 】 このツイートが #300RT →達成したらワンマン開催 ワンマンを賭けたnotallの挑戦! 期限は12月31日 RT、応援お願いします! (о*_ _)оペコリ #notallチャレンジ #アイドル pic.twitter.com/5DIUCVlAeh
— 「notall」ソーシャルアイドル (@si_notall) 2014, 11月 29
3.自治に委ねるソーシャルメディア運用
佐藤遥:
SNSの運用で言うと、私たちはX(Twitter)のリプライも制限されていません。ダイレクトメールは禁止されているんですが、他のアイドルさんだと返信できる時間が決まっていたり、そもそもリプライ自体が禁止されていたりしますから。そんな中で私たちは本当に自由で、「notall」で検索して私たちに直接発したものではないつぶやきにまでアクションしたりしています。
無意識にアクティブサポートを実施!
例えば先日、多くのアイドルが出演するイベントに参加させていただいたのですが、そのイベントについてつぶやいている人がいれば「notallを見にきてください!」って突然リプライしたりとか。
結果、見に来てくださった方もいましたし、本当に自由に使わせてもらっているなと思います。
ガイアックス 末広:
実は企業でもそういったことはやっているんです。
「アクティブサポート」と言うのですが、例えば「この商品を買ったけど使いにくい。」とつぶやいている人に対して、メーカー側から「何かお困りでしょうか?」と話しかけるようなものです。そういったことを実践されているということなんですね。
佐藤遥:
そういった名前があるんですね。全く無意識にやっていました(笑)。でもやっぱり私たちはソーシャルアイドルだから、他のアイドルさんたちよりも積極的にSNSを使ってファンに絡んでいきたいという気持ちは強いですね。
ワロップ放送局 山本:
いきなりアイドルからリプライが来たり、お気に入りに入れられたりすると驚くみたいですね。「さすがソーシャルアイドルだ!」みたいな反応をツイートしていただくことも多いです。
4.ソーシャルリスニング✕アクティブサポートによるリスク回避術
ガイアックス 末広:
X(Twitter)の話題になったので「炎上」についてお聞きしたいのですが。そういったトラブルを避けるために、自分の中で決めているルールやポリシーみたいなのはありますか?
渡邊ちこ:
特にこれというものはないんですが、「こういうつぶやきをしている人には触れない」とか、そういったことはメンバーひとりひとりが分かっていると思います。
よくメンバー4人でLINEしていますが、気になるツイートがあったらスクリーンショットを撮って「こういうのがあったんだけど、どう対応したらいいかな?」とか相談するようにはしていますね。
一人ひとりがどんな人かつぶやきを確認する
佐藤遥:
今思ったのですが、一個一個手作業で対応しているのがポイントかもしれません。全部見るようにしているんです。
ポジティブではないつぶやきをしている人がいたら、その他のつぶやきも見て判断してから対応しています。機械的にやっていないから、大きなトラブルが起きていないのかなって思います。
渡邊ちこ:
あと、私はハートを使わないようにしているんです。自分自身のつぶやきにはハートを使いますが、リプライするときには絶対にハートは使いません。
男性の前でこんなことを言うのも何ですが、使ったり使わなかったりするとファンに誤解されてしまうことも多いですので・・・。
田崎礼奈:
私も最初は絶対に使わないって決めていたんです。使うのは「♪」「☆」にしていたんですが、1回ハート使っちゃったらなんだか可愛くて・・・(笑)。
最初はイヤだったんですけど、使いはじめたら「まぁいいかな」って思うようになりました。
ガイアックス 末広:
そうやってつぶやいている人のプロフィールを見て相手のことを把握することも、専門的には「ソーシャルリスニング」という戦略なんです。「これを買ってくれた人はこういうものも好きだから、次はこの商品を紹介しよう。」というものですね。
それにハートを使うかどうかを気にするのも、投稿の「トーン&マナー」を決めるという点でとても重要なんですよね。その辺りの運用においてとても重要なところを本質的に理解して利用されているんですね…。
佐藤遥:
そんな風に専門用語で言っていただけると、「あ、私たち凄いことしてるんだ!」って自信になります(笑)。ちゃんとソーシャルアイドルとして活動できているんだなって。
今度から使うようにします、「ソーシャルリスニング」してからアクティブ・・・何でしたっけ?そうだ、「アクティブサポート」を積極的にやっていますって。
ワロップ放送局 山本:
ちなみに取材依頼やダイレクトメールに関しては、個人で絶対に返信はせず運営に回すという明確なルールがありますが、それ以外は特に決めていません。
本当に自由にさせていて、さっきメンバーが言っていたことも僕は全然知りませんでしたから(笑)。みんな自分たちで考えながら、SNSを運用してくれていますね。
佐藤遥:
私たち、大人なんで(笑)。
5.最新のソーシャルメディア活用とKPIの置き方
ガイアックス 渕上:
次にnotallの運営体制についてお伺いします。
マネージャーがついて管理しているような運営方法なのでしょうか?
ワロップ放送局 山本:
僕が見ていますが、メンバーは自分たちでしっかり管理してくれていますよ。自主的に活動してくれているから、いつの間にかツイキャスが始まっていたことを知って驚いたこともあります。
ガイアックス 末広:
いろんな手法を試されていますよね。ツイキャスもそうですが、iBeaconも取り入れてらっしゃいますよね?まだ日本ではそこまで流行っていない最先端のサービスだと思いますが、積極的に新しいサービスは利用していこうというお考えなのでしょうか?
博報堂アイ・スタジオ 十字:
iBeaconは最初のライブのときに、ファンがライブに見に来てくれたという「行動」を何か「形」にできないか。エンターテイメントにできないか。そういう視点でO2O(Online to Offline)のことを考えて利用してみました。
その場に来た人にだけ見られる動画を用意して、4箇所回ればさらにスペシャルな動画が見れるよという仕組みですね。といっても、まだ4つ目は実施していないんですが。
まだまだこういったサービスでは「仕組み」の話に終始することが多いじゃないですか。NFC(近距離無線通信)にしてもiBeaconにしても。
だから何をしたらエンゲージメントさせてアクションしてもらえるかの「仕掛け」を常に意識して調整していかなといけないと思っています。
ガイアックス 渕上:
ツイキャスを始めたのはメンバーが自発的にとのことでしたが、それは山本さんや十字さんに提案してからということでしょうか?
ワロップ放送局 山本:
いや、なにも言わずに勝手に始めてましたよ(笑)。YouTubeチャンネルの更新も自発的にやってくれているし、「あ、また更新されてる!」ってこちらが後で気づくパターンが多いですね。そもそも動画撮影や編集も自分たちでやってくれているし。
※以下は田崎さんより提供いただいたVine編集動画です。↓
博報堂アイ・スタジオ 十字:
インターネットやソーシャルメディアって本来そういうものだと思うんです。
ソーシャルメディアという言葉が定着していますが、利用している人からすれば、メディアではなく、コミュニケーションツールですから、極端に「コントロールしてやろう」と考えるよりも、企業もアーティストも自発的に発信していく方がコミュニケーションとしては正しいんじゃないでしょうか。
そういう意味では発信者を信じないとけませんよね。
ガイアックス 末広:
その通りだと思います。そういえばnotallのLINEスタンプを先日募集されているのを見かけましが、昨今のLINEの勢いはすさまじいものがあります。LINEを使ったアプローチは考えていたりするでしょうか?
ワロップ放送局 山本:
まだ具体的には決まっていませんが、検討はしています。
ガイアックス 末広:
ありがとうございます。運用面についての続きですが、KPIはどこに定めていらっしゃるのでしょうか?例えば、いつまでにファンを何人獲得するなどは決めていらっしゃいますか?
博報堂アイ・スタジオ 十字:
デビューした頃はフォロワーが少なかったので、メンバーそれぞれ1ヵ月でフォロワー1000人増やすというKPIを立てました。
自らフォローしたり、フォローはしないけどお気に入りにしたり、Facebookの記事を書くときは自分たちのX(Twitter)アカウントも記載もしたり。メンバーそれぞれのやり方で取り組み、工夫をしながら達成しました。
今は量だけではなく質も重要なので、何よりエンゲージメントを高めるように設定しています。まだファン数は少ないですが、FacebookやX(Twitter)はすでにエンゲージメント率が高いんですよ。
ワロップ放送局 山本:
正直X(Twitter)を見ていると「ちゃんと丁寧に返信してあげているなぁ」って感動するくらいなんですよ。リスニングだけじゃなくアクションもしてくれているわけですから。そういった言葉を知らなくても使いこなしているのは、こちらとしても驚くほかありません。
X(Twitter)アカウントには運営用の公式とメンバー個人のがありますが、どちらかというとメンバーがやっているのはコミュニケーションなんですね。宣伝は公式に委ねて、彼女たちにはファンとのコミュニケーションを積極的に取ってもらいたいと思っています。
6.共創型ソーシャルアイドル、今後もSNS運用は自由であれ
ガイアックス 渕上:
それでは最後になりますが、今後の展開についてお伺いしたいと思います。
ワロップ放送局 山本:
ソーシャルアイドルなので、もちろん今後もソーシャルメディアを活用していくことに変わりはありませんが、「共創」という要素はコンセプトとして非常に重要だと思っています。企業でも共創を意識しているとは思うのですが、ファンとのつながりから生まれる商品があったり、活動そのものが変わっていったりすることってあると思うんですよね。
例えばnotallの楽曲を公募していますが、そこからその人がどんどん有名になっていくという実績ができれば、notallとコラボするとこんな価値があるよといったものを提供していくことができます。ソーシャルって元々民主的な言葉じゃないですか。だからそんな世の中に価値を生み出していければいいなと考えています。
それには長い時間がかかるかと思いますが、ファンとの交流だけじゃなくて一緒に活動したかたちってなかなか残せないものなんです。例えばアイドルだったらチェキを一緒に撮ったりすることがそれだと思いますが、それだけじゃない価値を生み出していかないといけませんね。
博報堂アイ・スタジオ 十字:
つまり、業界的に言えば「マーケティング3.0✕アイドル」ですね。(笑)
ファン同士がつながれる場づくりと社会的価値の発信
ガイアックス 渕上:
これからも楽曲や衣装を公募し続けるかと思いますが、他にも何か共創のアイデアがあったりするでしょうか。
ワロップ放送局 山本:
まずはこれまでやってきたことを続けるということがメインですね。理想を言えば、ファン同士がつながれるような場作りを意識したいなと考えています。そういった場があれば、クリエイターが作品を応募するだけじゃなくて、いろんなクリエイターの作品の中でファン同士がああでもないこうでもないと言い合えるようになると思うんです。そういうところまでいければいいなと思います。
あとは社会的価値を発信していきたいと考えています。例えば、ベルマーク財団が取り組んでいる、ウェブベルマークという東北に特化した運動があります。アフィリエイトで入るお金を岩手・宮城・福島の被災校の教育設備などに役立ててもらう仕組みですね。このラジオCMを片瀬がやっているんです。呼びかけもソーシャル上でやっていますね。ソーシャルグッドというのかな、これは。
博報堂アイ・スタジオ 十字:
notallを企画してみて、正直こちらも勉強することも多いんです。ソーシャル運用に正解はないじゃないですか。共創から生まれるものはいいことばかりじゃありませんし、結局はやってみないとわかりません。
彼女たちがソーシャルリスニングをやって、ポジティブでもネガティブでも生の声を知るからこそ、次どうしたらより良くなるだろうと考えるきっかけを持つことができる。そこにちゃんと向き合うからこそ生活者視点での最適化が図れると思うんです。
これは企業も一緒だと思います。
Facebookページがあったとして、担当者がある程度采配を振るえるようになっていなければ、きっとうまく回りません。「この文言はこうじゃなくて・・・」とか都度やっていたら運用は回りませんよね。
ガイアックス 末広:
広い話になってしまいますが、音楽業界全体でもっと「ソーシャルメディアはこう使っていったらいいのに」という考えはありますか?
博報堂アイ・スタジオ 十字:
うーん、あくまで個人的にですが、基本的にソーシャルメディアを告知にしか使っていない人が多いかなという印象を受けます。フォロワーやファンの多さを競うのではなく、ファンとの交流をどう増やすか。「to」ではなく「with」の発想で「質」の部分も取り入れるともっと盛り上がるのでは思います。
ファンと直にコミュニケーションが取れる、画期的なサービスを使っているわけですから。
企業もSNSが出た頃は、情報を拡散してもらう目的でソーシャルメディアを運用していましたよね。ただ最近はどうエンゲージメントしてもらい、アクションしてもらうか。そしてどんな共創ができるかが、注目されてきています。
そういう意味では音楽業界に限らず全ての業界で言えることだと思っています。
ガイアックス 渕上:
ソーシャルメディアの本分は何か、忘れがちなものを思い出させてくれるようなお話をありがとうございました。今後の活動、応援しています!
7.インタビューを終えて
いかがでしたでしょうか?
正直、目からウロコの話が多かったインタビューでした。
今回の取材をさせていただく前に、私たちは一つ勘違いをしていました。それは、ソーシャルアイドルとは言うものの、おそらくは企画の方がバックにしっかりとついて、運用も主にそちらが中心に回しているものだろう、と。
ですが、今回お話しさせていただいて一番驚いたのは、notallのSNS運用はほぼすべてメンバーの方たちが自身で試行錯誤しながら、いい意味で「自由」に発信している、ということでした。
ソーシャルメディアの本分は「コミュニケーション」にあり
ソーシャルメディアは本来自由であるべきであり、その最大のメリットは、本来遠くにいる者同士がとても近い距離で、同じ目線でコミュニケーションを取ることができる、という忘れがちな本分について思い出させていただくことができました。。
あらゆる企業は顧客によって支えられています。企業が生み出した商品に固定客がつくことと、自分自身が商品であるアイドルがファンを獲得することに、果たしてそこまで差があるものでしょうか。
彼女たち自らが試行錯誤しながら培ったソーシャルメディアの運用方法は、それぞれの企業で活かせるところがきっとあるものだと、私たちは信じて疑いません。
今回のインタビュー記事が、ソーシャルメディア運用について改めて考えるきっかけになれば嬉しく思います。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部