ステマ規制とは?企業のインフルエンサー施策やサンプリング施策に与える影響を解説

2024/01/10

 

近年、消費者の広告への嫌悪感が加速しており、ステマ(ステルスマーケティング)に関しては厳しい目が向けられています。企業がステマで炎上し、企業イメージを損なうケースも珍しくはありませんが、これまでは法規制がされていませんでした。

しかし2023年10月1日に施行されるステマ規制では、ステマが法的に規制され、違反すれば行政処分の対象になります。

そこで本記事では、ステマ規制の概要とマーケ担当者が気を付ける点を、具体的な例を取り上げ解説します。

 


 

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■目次

  1. ステマ規制とは?
  2. マーケ担当者が気をつけること
  3. 具体的なケース
  4. まとめ

1. ステマ規制とは?

2023年3月28日、消費者庁はステマを「景品表示法第5条第3号」の規定に基づき、禁止行為に指定すると発表しました。

ステマ規制は2023年10月から施行され、ステマ広告の対象となった商品やサービスの提供事業者を法的に取り締まることができるようになります。インターネット上だけではなく、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌なども規制対象になります。

今回の規制対象は、広告を依頼した企業です。インフルエンサーや一般の投稿者は処分されません。

違反した企業には措置命令が出され、ステマ広告を依頼した企業の名前やその違反内容が消費者に周知され、再発防止のための措置などを講じることが命じられます。

ステマとは?

ステマとはステルスマーケティングの略称で、企業が広告や宣伝だということを隠し、一般消費者の口コミや感想を装いSNSなどで宣伝する手法のことです。

具体的には、企業が一般の投稿者になりすまし、肯定的な口コミを掲載することや、インフルエンサーにSNSやブログで、あたかも偶然見つけたという形で商品やサービスについて投稿させる手法などがあります。

不特定多数が肯定的な口コミを拡散したり、影響力の大きいインフルエンサーが紹介したりすることで、消費者の購買意欲を高めることが目的です。

ステマの問題点と規制される背景

消費者は企業とは利害関係のない一般の消費者の口コミや、親近感のあるインフルエンサーの感想を参考にして、購買行動を決定する傾向にあります。

ステマはこのような消費者心理を利用し、消費者を欺く手法のため、消費者庁により規制がされることになりました。

またEUや米国においてはステマに関する法規制が整っており、海外市場で事業を展開する企業も増えてきている中、日本での規制が遅れていることも今回の規制に至った背景の一つのようです。

2. マーケ担当者が気をつけること

企業や企業と提携した第三者が広告を投稿、掲載するにあたり、広告だということが消費者に明らかにされていれば、ステマ規制の対象にはなりません。

ここからはステマ規制の対象とならないために、マーケ担当者が気を付けることを解説します。

消費者にわかりやすく広告だということを表示する

ステマ規制について、消費者庁が定めた「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(以下、運用基準)によると、一般の消費者が企業の広告だということがわからない、企業の広告かどうかの判別が困難な投稿が規制対象になります。

規制対象にならないためには、企業から依頼を受け、商品やサービスの紹介を依頼しているインフルエンサーや、アフィリエイターのSNS投稿記事や配信動画など、広告にあたるものはすべて広告、PR、宣伝、プロモーションなどと記載し、広告だということ明瞭にする必要があります。

では広告であると明記することは、なぜ消費者を守ることになるのでしょうか。

広告だとわかっていると、消費者は広告にはある程度の誇張が含まれていることを考慮し、商品やサービスを選びます。

一方で、広告ではない一般の消費者の感想だと誤認していると、記載の内容をそのまま受け取ってしまう可能性があります。その結果、消費者が正しい情報から商品やサービスを選ぶことを阻害する恐れがあるからです。

参考:https://www.caa.go.jp/notice/entry/032672/

ステマ規制の周知を行う

社内の担当者だけではなく、インフルエンサーやアフィリエイターとの関係性がある場合、違反を未然に防ぐために、インフルエンサーやアフィリエイターへのステマ規制の周知や法令遵守の確認が必要です。

ステマ防止対策と同時に、万が一違反が起こった場合の対応方法やガイドラインを、事前に整えておくことも重要です。対策しておくことで、落ち着いた対応や一貫性のある対応ができるからです。

ステマ規制施行前に投稿された広告への対応

ステマ規制は、2023年10月から施行されますが、施行前に投稿された広告も、引き続きインターネット上に残ります。そのような投稿への対応はどのようにすればよいのでしょうか。

インターネット上に残り、誰でも閲覧できる状態にある場合、広告としての効果が残存しているため、規制対象になると考えられます。例えば、9月30日にInstagramに挙げた投稿が、最も露出するのは数日後の10月以降になることが多いです。

実際問題、例えば10年前にした投稿を理由に消費者庁から勧告や行政処分が下るというケースは稀かもしれませんが、思い当たる投稿等がある場合には、ステマ規制が施行される10月1日までにできるだけ削除するか、#PRなどの表記を記載しておくようにしましょう。

企業の広告にあたるケースかどうかを確認する

ここからは改めて、企業の広告にあたるケースについて、前述の運用基準に基づき解説します。

企業の広告には、企業が自ら行うケースと、企業がインフルエンサーなどに依頼をして広告投稿を行わせるケースがあります。

➀ 企業が自ら投稿を行うケース

企業が自らのSNSアカウントや自社のウェブサイトに自社の商品・サービスの広告を投稿、掲載する場合は、その企業以外の第三者の投稿と誤認されることはありません。問題になるのが、企業であることを隠して、一般消費者になりすまして口コミを書くことや、記事や動画の投稿を行うこと。これがステマ規制の対象になるということです。

別の注意点としては、企業の定義の対象はその企業の従業員はもちろん、企業の子会社や、企業と一体と認められる関係性のある従業員が行う、販売促進目的の商品やサービスの投稿は広告とみなされる点です。

企業の従業員などの投稿が、広告にあたるどうかの判断にあたっては、運用基準には次のように定められています。

■広告にあたる

企業の従業員やその子会社など関係性がある従業員で、商品開発や販売の担当者など、商品やサービスの販売を促進したい立場の人が、個人のSNSアカウントで宣伝目的の投稿をする場合は広告にあたります。

口コミサイトに自社の商品・サービスの肯定的な口コミを投稿することや、同業他社の商品・サービスに低評価となる口コミを投稿する場合もステマ規制の対象になります。

■広告ではない

企業の従業員やその子会社や関係性のある従業員であるものの、販売促進が必要とされていない立場の場合、ウェブサイトなどの一般の消費者が知りえる情報を使って、販売促進目的ではない投稿を行うことは広告にはあたらないとされています。

➁ 企業が第三者に広告を依頼するケース

インフルエンサーなどに依頼して、そのインフルエンサーのSNSやブログなどで商品やサービスの紹介や口コミなどを投稿させるケースがこれに該当します。このケースは広告にあたるため、消費者に広告だということをわかりやすく表示する必要があります。

注意するべきポイントは、企業がインフルエンサーなどの投稿内容に関与しているかどうか明確ではない場合でも、企業とインフルエンサーなどの間に、投稿内容を決定できる程度の関係性があれば、企業の広告とみなされるという点です。

具体的な例を見ていきましょう。

■企業がインフルエンサーなどに明確に投稿内容を指示して依頼している例

  • 企業がインフルエンサーなどに、自社の商品・サービスの特徴などを伝えたうえで、インフルエンサーのSNSや口コミサイトなどに、その商品・サービスなどについて投稿させる場合
     
  • ECサイトに出店する企業が、レビューなどをSNSで集めるブローカーや商品を購入した人に依頼し、評価を上げるようなレビューを投稿させる場合
     
  • アフィリエイターに委託して自社の商品・サービスなどについて投稿させる場合
     
  • 他の企業に依頼して、同業他社の商品やサービスに対し、自社の商品・サービスよりも低評価の口コミを投稿させる場合
     

 

■企業がインフルエンサーなどに明確に投稿内容を指示していなくても、インフルエンサーの自由な感想の投稿と認められない例

  • 企業とインフルエンサーなどの間に、投稿内容を決定できる程度の関係性があり、無償で商品やサービスの提供したうえでSNS投稿を依頼した結果、企業が求めている内容の投稿をした場合
     
  • 企業がインフルエンサーに対し、企業が求めている内容の投稿をすることが、今後の経済的な利益になることをほのめかしたうえで、インフルエンサーがその対象についての投稿をした場合
     

 

企業とインフルエンサーなどとの間の、投稿内容を決定できる程度の関係性があるかどうかについては、メール、口頭、手紙などのやりとりや、宣伝目的で商品・サービスが提供されたかどうか、過去または将来においての報酬の有無などを総合的に考慮し判断すると定められています。

報酬については、金銭や物品に限らず、イベントへの招待などが含まれることも注意が必要です。

企業の広告にあたらないケースとは

企業がインフルエンサーなどの投稿内容に関与があったとしても、客観的な状況に基づき、インフルエンサーの自由な意見や感想の投稿と認められるものであれば、企業の広告にあたらない場合があります。

大きなポイントは、企業とインフルエンサーなどとの間に投稿内容を決定できる程度の関係性がないことと、インフルエンサーの投稿内容が、企業の求める内容ではなく自由な意見や感想だという点です。

運用基準にあげられている、具体的な例を見ていきましょう。

  • SNSなどにインフルエンサーの自由な意見や感想を投稿する場合 ※複数回行う場合も含む
     
  • 企業がインフルエンサーなどに対して自社の商品・サービスを無償で提供し、インフルエンサーのSNSを通じて投稿を行うよう依頼するものの、対象への感想は自由に投稿してよい場合
     
  • 企業とアフィリエイターの間に投稿に関する情報のやりとりなく、企業が投稿に関与している実態がない場合
     
  • ECサイトで購入した消費者が、自由な意見や感想のレビューを投稿する場合
     
  • ECサイトに自社の商品レビューを書いた購入者に対し、割引クーポンなどを配布する場合においても、購入者が自由な意見や感想のレビューを投稿する場合
     
  • 消費者が、SNS上のキャンペーンや懸賞に応募するために自由な意見や感想を投稿する場合
     
  • 企業が不特定に試供品やサンプルの配布を行い、受け取った人が自由な意見や感想を投稿する場合
     
  • 企業が宣伝目的ではなく、単なるプレゼントとして商品やサービスを提供し、受け取った人が自由な意見や感想を投稿する場合
     

 

上記のケースの他にも、インターネット上で運営している企業を含む、新聞・雑誌などの発行や、放送業のメディア媒体が、自由な意思で制作した記事や番組や、正常な商取引の範囲内で取材し、制作した記事や番組は、編集権がメディア側にあるため企業の広告ではありません。

しかし、正常を超えた取材費の提供や謝礼などがあり、企業が記事や番組の内容に関与したと判断される場合は、企業の広告にあたります。

企業の広告だということが明らかに表示されているかを確認する

ステマ規制に対応するためには、SNS投稿記事や配信動画などの広告には、すべて広告、PR、宣伝、プロモーションなどと表示し、広告だということを明瞭にする必要があると述べました。

しかし、その表示方法によっては不明瞭と判断される場合もあります。

消費者から見て企業の広告だとわかりにくい、不明瞭な例と明瞭な例を運用基準に沿って解説します。

■企業の広告だということが不明瞭な例

  • 企業の広告だということが全く記載されていない場合
     
  • 企業の広告だということを部分的にしか表示していない場合。例えば、折りたたまれた長文の中に記載されていて、クリックしないと表示されない場合や、動画の概要欄にのみ記載があり、動画内には表示されない場合
     
  • 文章の冒頭に、広告と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」などの表示があり、企業の広告なのかがわかりにくい場合
     
  • 動画において、企業の広告だということ視聴者が認識できないほど短い時間で表示する場合
     
  • 動画の冒頭ではなく動画の途中や末尾など視聴者が確認しにくい箇所に企業の広告だということ表示させる場合
     
  • 企業の広告だということを、他の文字よりも小さく表示したり、薄い色を使用したりするなど消費者が認識しにくい表示をする場合
     
  • 企業の広告だということを大量のハッシュタグに埋もれさせるなど、他の情報に紛れ込ませて表示をする場合
     

 

企業の広告だということが明瞭な例

  • 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示をする場合

 

企業の広告だということが消費者にとって明瞭、または社会通念上明らかなものは、広告だということを表示する必要はありません。以下のような例が、それに該当します。

  • CMのように広告と番組が切り離されている場合
     
  • 企業の協力を得て制作される番組や映画などにおいて、スポンサー企業をエンドロールなどで表示する場合
     
  • 新聞の広告欄のように「広告」などと記載されている場合
     
  • 商品やサービスの紹介自体が目的の雑誌などの場合
     
  • 企業のウェブサイトに、企業の立場で商品やサービスの紹介をする場合
     
  • 企業のSNSアカウントを通じて投稿をする場合
     
  • 親善大使や企業と契約しているスポーツ選手など、社会的な立場・職業などから、企業の依頼を受けていることが明らかな人物を通じて、広告を投稿する場合
     

 

参考 : 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準 令和5年3月28日 消費者庁長官決定

3. 具体的なケース

■Q1:無料サンプリング施策で「よかったら感想をSNSで投稿してください」というメッセージを添えて送った場合は?

A:SNSでの投稿を促すものの、投稿内容については自由なため原則として広告にはならず、規制対象外になります。しかし、無料サンプルの送り先が特定のインフルエンサーで、投稿することや内容について実質的な強制力が認められる場合には規制対象になることがあります。

 

■Q2:無料サンプリング施策で商品はプレゼントするが、Q1のようなメッセージは添えずSNSへの投稿を促さない場合は?

A:Q1と同様です。

 

■Q3:従業員の個人アカウントで、自社商材の固有名詞を使用せずに当該商材の有用性や利便性などについて言及する投稿をSNSにあげる。(SNS運用代行サービスを提供するガイアックスの社員が個人アカウントで、「SNS運用を外注すると、リソース浮いてコア業務に集中できるからインハウスでやっている人は一度検討した方が良い」といった趣旨の投稿をする場合)

A:固有名詞を出していない場合、商品サービスの直接的な購買契約に関与しないため、広告には当たらないので規制対象外です。

 

■Q4:一般の人やインフルエンサーなど複数名を自社商品・サービスの無料体験会に招待し、参加者がその体験についてSNSで感想を投稿した場合は?

A:基本的にはQ1と同様、SNSに投稿するかや、投稿内容について企業側が関与していないなら広告にはならず規制対象外です。インフルエンサーについては企業との実質的な関係性が論点になります。

 

■Q5:ゲームやWebサービスのβ版の体験者がSNSで感想を投稿する場合は?

A:Q4と同様です。

 

■Q6:サービス提供者や広告代理店が、口コミ投稿への謝礼として割引のクーポンは配布した場合は?

A:口コミ投稿者が自主的な意思で投稿の表示内容を決定したといえる場合は、規制対象になりません。

 

■Q7:会社の従業員が身分を隠してインフルエンサーとして活動し、自社商材を宣伝した場合は?

A:その従業員の立場に関わらず、販売促進目的での投稿をした場合には広告にあたり、規制対象になります。

4. まとめ

以上の内容を踏まえると、インフルエンサーマーケティングやサンプリングは効果的なマーケティング手法ですが、引き続きこれらのマーケティング活動を行うためには、これまで以上にステマ対策に注意を払う必要があります。

最も重要なことは、広告だということを消費者にわかりやすく表示し、消費者が安心して自由に商品やサービスを選べる環境を守ることです。その結果、消費者から企業への長期的な信頼感が生まれるのではないでしょうか。

ガイアックスでは、インフルエンサーやアンバサダーを活用した施策の提案、企画、実行を承っております。ステマ規制の対策に万全を期してマーケティングを行いたいなど、お困りのことがありましたらぜひお気軽にご相談ください。

ガイアックスのインフルエンサーマーケティングを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
https://gaiax-socialmedialab.jp/service/influencermarketing/

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