自社の強みが丸わかり! ソーシャルリスニングのやり方「評判調査」を解説
2021/08/18
前回の記事では、ソーシャルリスニング(SNSなどの口コミ分析)の具体的な手法として時系列調査の紹介をしました。
今回はソーシャルリスニングを行い、自社商品・サービスがソーシャルメディア上でどのように評判されているのか調査する手法を解説します。
この調査方法を理解することで、具体的にソーシャルリスニングを通じてどのような示唆が得られるのか、実際にどのような分析を行えばいいのかが分かり、日々のSNS運用やマーケティング活動に役立つ示唆を得るための調査方法を身につけることができます(*本記事の分析対象媒体はX(Twitter)上の口コミデータです)。
前回記事の復習:X(Twitter)で得られるデータの特徴
- データの主体がテキストデータである
- いいねやリツイートなど口コミを拡散する機能がある
- アクティブアカウント数が多く、多様なユーザーからの声を収集できる
- 秒単位の時系列データを取得できる
X(Twitter)は表現方法の主体がテキストデータであることから、消費者のぽろっと出る本音や嗜好に関して分析できるデータが収集できる可能性が高く、こういった目的のもと調査する媒体として適しているといえます。
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評判調査でできること
ソーシャルメディア上で、ユーザーから自社商品・サービスがどのような評価を受けているかを、主にツイートの共起語(一緒につぶやかれているワード)やポジネガ情報を基に分析します。
これにより、従来のアスキングによる調査では見えてこなかった自社商品やサービスに対する消費者からの評判を分析し、サービスの改善や商品企画などに役立つ示唆を得られます。また、競合企業の評判と相対的に比較することで、自社独自の強みの発見にも寄与します。
評判調査の考え方
SNS上の口コミから自社商品・サービスの評判を収集するといっても、無数の口コミの中から示唆的な口コミを見つけるのは大変です。ボリュームが数十件程度であれば目視で地道に探索することで間に合いますが、数百~数千件と規模が大きくなるにつれて難しくなります。
そこで、まずは口コミを調査する際の考え方、口コミの見極め方を説明します。
口コミを分類する考え方
まず口コミを上記図の通り4象限に分類します。ここでは、各象限における「口コミ量」と「質」を競合他社と比較し、量的・質的な課題の有無を精査します。
こうすることで「発信を強化すべき種類の口コミ」「発信を抑えるべき口コミ」や「特定の種類の口コミを減らす努力が必要」など、効果的に口コミ醸成する戦略を立てることが可能になります。
(企業のSNS活用において)重要な口コミとは
SNS展開戦略を考える上でもっとも優先順位が高く重要なのは第一象限(①)の「独自性の強化」で、つまりポジティブで他社にない独自性のある口コミが多い状態が理想です。
次に重要なのが第二象限(②)の「発信の強化」で、つまり他社の独自性を打ち消す形で自社についても同種の口コミが発生している状態が好ましいと考えられます。
3番目に重要になるのが第四象限(③)の「減らす努力が必要」で、つまり自社にだけ目立つネガティブな口コミは少ない状態が好ましいため、この象限の口コミは減らすための施策を打つ必要があります。
4番目に重要なのが「注意、対策が必要」(④)で、これはつまり同じ業界で発生しうるネガティブな事象を他社の口コミから事前に把握し対策することで、自社の炎上リスクを減らすことにつながります。
分析例:大手プログラミング学習サイトの評判分析
本記事では、実際に私たちがよく行う調査を「プログラミング学習サイト」を例にとってご紹介します。今回題材となるのは、大手学習サイトのプロゲート(Progate)さんとユーデミー(Udemy)さんです(以下敬省略)。
X(Twitter)上には「#今日の積み上げ」というハッシュタグを使って、主に講座受講後の学習報告を行っているユーザーが存在しています。
そこでこのハッシュタグを検索クエリとして投稿データを取得し、2つのサービスの口コミ内容を比較。同一シーン、類似した嗜好をもつユーザーによる口コミにおいてどのような差分があるのかを調査しました。
口コミ数の比較
まずは定量的な指標で競合サービスとの比較を行います。定量的な比較を行うことで例えば下記が分かります。
- ユーデミーの口コミ数はプロゲートの口コミ数の約5倍である
- 口コミを行っているユーザー数は約2倍であり、ユーデミーは一人当たりの口コミ回数が非常に多いことがうかがえる
- ポジネガ比率で見るとネガティブな口コミがほとんどなく、多くの口コミがポジティブ(またはどちらとも取れない)口コミである
ポジティブかつ独自性のある要素の調査
プロゲートは「読書」とセットで目標設定を掲げる人が多数存在しており、これはユーデミーには見られない特徴です(「#今日の積み上げ」全体のワードクラウドでも「読書」はあまり目立っていない)。また、スライド式の学習方法が「読書」習慣のある人々に刺さっている可能性があると考えられます。
一方、ユーデミーには「Web」という単語が大きく出現しています。中身を見ると「Web制作」、「Webデザイン」といった口コミが多く、動画であるという特徴から視覚的な情報が多いデザイン、Web制作の需要が高いと考えられます。
ポジティブかつ独自性のない要素の調査
「CSS」や「JavaScript」など、Webサイトの見た目や機能を作成する際に必要なスキルに関する講座が共通して人気であることがうかがえます。また、ユーデミーのワードクラウド内に「Progate」という単語があり、両方のサービスを併用している層が一定数いると思われます。
ネガティブかつ独自性のある要素の調査
プロゲートの各講座で一部分からなかったり、「中級コースから分からなくなった」など、ネガティブな口コミが一定数あります。ただし、独自性のあるネガティブな要素(かつ共通して口コミ数が多いもの)は現状存在していません。
ユーデミーとプロゲートのワードクラウドと比較すると「エラー」というワードが大きく目立ちます。プロゲートはブラウザ上で動作する環境が用意されている一方、ユーデミーは自分のPC上にプログラミング環境を構築する必要があるため、このようなエラーにまつわる口コミが相対的に多くなっているものと考えられます(ただし、エラー解決の力が身につくとポジティブに捉える人も存在しているため一概にネガティブとはいえない側面もあります)。
ネガティブかつ独自性のない要素の調査
両方のサービスで共通してJavaScript講座で躓くユーザーが多い様子がうかがえます。
両サービスで共通して多くのネガティブな口コミが出ているということは、この部分の口コミ を減らす、またはポジティブに変換することができれば独自性のある強みにできる可能性があります。
N1であるものの示唆的な声
SNS上にはN1ではあるものの示唆的な口コミが存在しており、こうしたN1の口コミから効果的なインサイトやユーザーの特徴が発見できる可能性があります。例えば、本調査においては上記のようなゲーム感覚で楽しんでいるユーザーや、YouTubeとプログラミング学習サイトを併用して学習しているユーザーの様子がうかがえます。
評判調査まとめ
今回の調査の結果で見えてきた示唆をまとめると、以下のようになります。
まとめ
今回はソーシャルリスニングを行うことでどういった示唆を得ることができるのかについて、自社商品・サービスがソーシャルメディア上でどのように評判されているのか調査する手法を紹介しました。
次回は、ソーシャルメディア上で、自社商品・サービスの口コミを行っている自社に対して、好意的な可能性の高いユーザーを分析する手法について解説します。
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この記事を書いた人:澁谷海渡