インスタの狙いが一気に分かる。「House of Instagram Japan 2021(#インスタ公式セミナー)」イベントレポート

2021/09/16

9月15日、Facebook Japanはマーケター向けのイベント「House of Instagram Japan 2021」を実施しました。また今年のイベントは昨年同様、オンライン開催となりました。

「好きと欲しいをつくるInstagram」というコアメッセージはそのままに、進化を続けるInstagramの魅力が存分に紹介されました。今回は合計140分を超えるイベントのなかでも、編集部が「これは!」と思った3つのセッションをピックアップして記事にまとめています。

Text / ソーシャルメディアラボ編集長 小東真人(@gxsoc_kohigashi)

    ■目次

  1. Instagramのマーケティングにおける価値、最新情報について
  2. Instagramの思想と製品情報について
  3. Instagramにおけるブランド広告について
  4. まとめ

Instagramのマーケティングにおける価値、最新情報について

同セッションのスピーカー

Facebook Japan 代表取締役 味澤 将宏氏

Instagramが企業に提供できる価値

まず同社代表の味澤氏からは、企業がInstagramを活用すべき理由や直近における仕様変更の概況が語れました。

冒頭、具体的な数は伝えられませんでしたが、日本でのユーザー数の伸びに言及する同氏。さらなる成長のために、この9月からコンシューマ向けマーケティングキャンペーンを行うといいます。


▲講演中に紹介された動画「LoveYourLove」
https://vimeo.com/597241298/50a2dab163
https://vimeo.com/597241298/null?embedded=false&source=owner_name&owner=148215752

上記動画の内容を受け、Instagram独自の価値を「好きと欲しいをつくる」であるとし、Instagramはユーザーにとって好きな人や物に出会え、ユーザーが何か発見したいマインドセットで訪れるプラットフォームであると解説。

次に味澤氏は、Instagramが企業に提供できる価値について、3つの要素を紹介していました。

  • ①偶発的な発見を生み出せる
  • ②コミュニティを通じた共感を作れる
  • ③多面的にブランドストーリーを伝えられる

まずは「偶発的な発見を生み出せる」について、Instagramならではのアルゴリズムがユーザーの興味関心に適したコンテンツを配信してくれる点にくわえ、日本のInstagramユーザーが何かを探す目的で積極的に利用することが多い点を特長に挙げていました。

具体的には、他国と比べて5倍のハッシュタグ検索が行われ、さらに42%のユーザーが情報を深く知ろうとアカウントのプロフィール画面に遷移するそうです。

次に「コミュニティを通じた共感を作れる」について、一般の方からインフルエンサー、著名人、企業まで、幅広いユーザーを誇る点や、それによりユーザーが同じ興味関心を持つ他ユーザーから影響を受けて購買に移りやすい点に言及していました。

最後に「多面的にブランドストーリーを伝えられる」について、フィードやストーリーズ投稿、ライブ配信やIGTV、リールなど表現方法の豊富さをアピールしていました。実際に、85%のユーザーが情報収集時にフィード以外の機能も活用しているそうです。

味澤氏のセッション後半では、国内で利用が活発になっているショッピング機能や同社が力を入れて投資しているAR・VRといった没入型技術についても触れられていました。

ここからは筆者の補足ですが、前者はショッピング専用タブが登場したり広告枠が新しく導入されたりと直近のアップデートが続く領域であり、後者は以前から同社イベントで頻繁に語られ、VR端末を着けて利用できる「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」も直近ニュースで取り上げられ話題を呼んでいましたね。

Instagramの思想と製品情報について

同セッションのスピーカー

Instagram 製品部門共同責任者 アシュリー・ユキ氏

ビジネスへ寄与できるInstagramの強み

次にInstagramの製品部門責任者のアシュリー氏からはInstagramのミッションや製品戦略がおもに語れました。

コロナ禍の自粛生活で始めた新しい趣味をきっかけに、Instagramを通じて関わる人が増え、今までしなかった商品を買った個人の体験を挙げました。次いで、これらがFacebook社の目指すミッション「コミュニティを作ること」「人と人をより身近にすること」を示す良い事例だと添えました。

この冒頭の切り出し方から分かるように、アシュリー氏のセッションはInstagramがコミュニティ作りや新しい出会い・発見の創出を支援する媒体だと強調しているように思えました。18分間の発表で「コミュニティ」という言葉を15回以上使っていることからも、その意気込みがうかがえます。

アシュリー氏は、Instagramが「共通の趣味・関心を持つコミュニティとつながり、クリエイティビティを持ってブランドを表現し、新しいカルチャーと関わることができる」と言い、下記3つの要素に分解して、ビジネスへの寄与をそれぞれ解説していました。

  • ①コミュニティ
  • ②クリエイティビティ
  • ③カルチャー

まず「コミュニティ」について、年々勢いを増すストーリーズを「オーディエンスと短時間で楽しくつながることができる」ツールだと形容し、アンケートスタンプなどで投稿者と視聴者で交流したり視聴者から意見を求めたり、アクションを促せる点を伝えました。

また、ストーリーズ広告ではそうしたインタラクティブ性のあるスタンプ機能を駆使することで、それらの機能を使わない場合に比べて、広告の視聴時間が3倍に伸びるデータを示していました。

他にも、ライブ機能で繋がれる人数が4人までに拡張され、ライブ配信をユーザーが見逃さないように事前予約できる機能が搭載されたことも紹介していました。

次に「クリエイティビティ」について。前章の味澤氏も伝えていたように、フィードからストーリー、リールなど表現方法が豊かなInstagram。ここでは各種動画フォーマットの魅力がおもに伝えられていました。

Instagramにおいて、Z世代(1997年以降に生まれた人口層)は動画に関心が高いそうです。91%がストーリーズを毎週利用し、71%が長尺動画(ライブ配信のアーカイブやIGTVを指すと思われる)を視聴するといいます。

また、リールのアップデートにくわえ、リール広告の導入、ARのカメラエフェクトなども事例を交えながら紹介していました。

最後に「カルチャー」について、アシュリー氏はInstagramがカルチャーを生む場であり、「クリエイターがそれぞれのストーリーを語り、活動を発展させ生計を立てる拠点にして欲しい」と言い、関連する仕様変更に触れていました。

現在米国にてテスト中のクリエイター向けアフィリエイト機能や、ライブ配信中の投げ銭機能「バッジ」など、クリエイターを支援する動きを紹介していました。

聞き手として感じたことは、昨今TikTokやYouTubeといったライバルのSNSプラットフォームと投稿フォーマットが似てきて差別化が困難になるなかで、媒体独自のクリエイターを囲い、そこでしか見られないコンテンツを彼らに配信してもらうことこそ、競争優位性になると同社は考えているのではないかという点でした。今後のクリエイターへの活動に注目したいと思います。

Instagramにおけるブランド広告について

同セッションのスピーカー

Facebook Japan 営業部長 宇津井 文子氏

企業担当者がブランド広告について抱きやすい懸念と払拭方法

最後に宇津井氏からはInstagramにおけるブランド広告の考え方や活用事例が語れました。

まず企業のマーケターが、ブランド広告について下記のような感想を抱きやすい点を指摘。

  • ①効果が見えづらい
  • ②効果が出るまでに時間が掛かる
  • ③効果の出る業界とそうでない業界が明確に分かれている

同セッションでは、これらに一つずつ回答する形式がとられていました。

まず「効果が見えづらい」点については、調査次第で可視化できることが示されました。コミックシーモアを運営するNTTソルマーレ株式会社の事例では、会員登録の増加施策を行った際、ブランド広告を出稿した場合とそうでない場合を比較されていました。

同調査では、ブランド広告に予算を投下した場合の方が2.4倍の登録者を獲得でき、獲得単価が約半分になったそうです。また、それによりブランド広告の寄与が確認できたことで、今後でも積極的に配信できると同社担当者から言われたといいます。

次に「効果が出るまでに時間が掛かる」点について。宇津井氏は「正直ある程度はかかります」と前置きしたうえで、投資した分、成果が出やすいことを事例とともに説明しています。

紹介されたデータによると、26週ブランド広告を出稿した場合とそれ以上続けた場合とでは、ROIに1.3倍の差が出るそうです。

また、日本ロレアル社のメイベリンの事例では、ブランド広告を8ヶ月続けた結果、ROIが他のデジタルメディアの3.6倍だったといいます。

最後に「効果の出る業界とそうでない業界が明確に分かれている」点についてです。Facebook社が172ブランドを2年間、マーケティングミックスモデルを使って独自調査した結果、ブランド施策を長期で続けた企業は、図のように幅広い業界でROASが向上したそうです。

後半では、Instagramにブランド広告を出稿するメリットについて、3,300万を超えるユーザー規模や好きなものをリサーチするために積極利用される媒体の特性、獲得広告とブランド広告の重複リーチが少なく潜在顧客への露出の余地が多く残されている点が挙げられていました。

企業様のInstagramアカウントの運用代行や広告出稿のお手伝いをすることも多い筆者は「そもそもInstagramに予算投下して、何を期待すべきなのか」「戦略設計の考え方からよく分からない」と悩まれる担当者の方々とよくお会いするため、ブランディングの観点から、同セッションで学んだことをお伝えしていきたいと感じました。

まとめ

今回は二度目のオンライン開催となったHouse of Instagramをレポートしました。

コロナ禍でライブやショッピング機能が優先的に強化されている点にくわえ、ARやVR分野への投資が進み、クリエイターへの支援も活発に行う背景がよく分かりました。

Instagramの動向を一気におさらいできるイベントでした。個人的には二年続けて自宅での視聴でしたが、リアルに負けず劣らず、大変参考になりました。

告知:「House of Instagram」のイベント動画が一部公開されています。

本記事はイベント全体のほんの一部であり、ご紹介できなかった部分がたくさんございます。ご興味を持っていただいた方へご案内です。

当日の配信にご都合がつかなかった方でも視聴できるアーカイブが公開されています(一部)。

House of Instagram Japan 2021(#インスタ公式セミナー)
https://hoijp2021p.splashthat.com/

特に本記事でピックアップした箇所は全て公開されておりますので、詳しく見たい方はぜひリンクにて動画をご覧ください。

 

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この記事を書いた人:小東真人

ソーシャルメディアラボ編集長。地方や中小ビジネス向けセミナーなどを担当。
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。

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