【インタビュー】価値共創マーケティングの最初の壁は”社内の説得”!?成功の秘訣はブランド全体で共通した価値を持つこと【House of Instagram レポート 第三弾】

2023/01/23


2022年10月5日(水)にMeta日本法人 Facebook Japan主催イベント「House of Instagram(以下、HOI)」が開催されました。第一弾と第二弾の記事では、メインセッション『現代に求められる「価値共創マーケティング」とは』から、現在の消費プロセスの変化やそれがマーケティングにもたらす影響、今後ブランディングに求められることを紹介しました。

第三弾となる本稿では、イベント開催後にデロイトトーマツコンサルティング合同会社の吉沢雄介氏とFacebook Japanの倉迫有沙氏にイベント後のインタビューを行う機会をいただけたので、価値共創マーケティングに関するより詳細な情報や実施するうえでの課題と対策について紹介します。

「価値共創マーケティング」の解説は下記の記事にて行っていますので、ぜひご覧ください。
価値共創マーケティングとは?消費プロセスの変化や今後ブランドが求められることを解説!【House of Instagram レポート 第一弾】
メイベリン ニューヨーク流!価値を共創するパートナーの見つけ方【House of Instagram レポート 第二弾】】

スピーカーの紹介

吉沢 雄介 氏 
デロイトトーマツコンサルティング合同会社/モニターデロイト パートナー

倉迫 有沙 氏 
Facebook Japan/マーケティングサイエンスリード

現場のマーケターは「価値共創マーケティング」に高い関心を持っている

イベント開催後、大きな反響が寄せられた価値共創マーケティング。特にSNS運用を行っている現場のマーケターからの反応が多かったそうで、スピーカーのお二方とも「価値共創マーケティングの重要性を理解してもらえた」と感じたそうです。

一方、実施するにはまず上層部の説得が必要になるため、どのように上層部を説得しようかと頭を抱えていた人が多くいたそうです。筆者もセッションを聞く中で、ワクワクと心が躍るのを感じたと同時に、社内の説得が難しそうだと感じた一人なので、この発言に深く頷いてしまいました。

価値共創マーケティングの最初の壁は「社内の説得」

時代の流れに沿ったマーケティング手法であるのは間違いない価値共創マーケティングですが、なぜ社内の説得が難しそうだと感じるのでしょうか。要因は大きく2つあると考えられます。

①短期的な効果測定が難しい

前回の記事で、セッション内で「消費者のコミュニケーションの在り方が変化している」という話を紹介しましたが、まさにこの変化が効果測定を難しくしている要因です。

デジタルやソーシャルメディアが登場する前は、消費者は自ら発信することができなかったため、企業からの情報発信をそのまま受け入れて購買を行っていました。そのため、閲覧数などの数値がダイレクトに売上につながりやすく、効果を測定しやすい特徴があります。

一方、現在はデジタルやソーシャルメディアの発展により、消費者は自ら情報を発信できるとともに、「ほしいタイミングで」「能動的に」情報を取りに行くことができます。現在は企業以上に消費者の発信が他の消費者の購買行動に影響を与えるようになってきているため、企業内で見れるメディアの閲覧数やSNSのフォロワー数・インプレッション数だけでは効果を測れなくなってきています。

さらに、人々の消費行動にも変化が起きており、従来は消費者が価値を感じる瞬間は商品を購入するとき(交換価値)でしたが、現在は購入後それを体験する中で価値を感じるように変化してきています(文脈価値)。

サブスクリプションサービスなどが分かりやすい例ですが、人々は生活の中での体験に価値を感じ、金銭を払うようになってきています。そのため、企業が消費者に継続して価値を提供し続けるためには、顧客の生活の中に溶け込み、日々変化する多様なニーズを取り込んでいく必要があります。

②従来の分断された組織構造

多くの企業では、開発、製造、販売etc…など役割ごとに組織が分かれています。役割ごとに効率化されているというメリットがありますが、価値共創マーケティングにおいてはこの効率化された組織構造は逆に分断につながり、実践にあたっての壁になる可能性があります。

メインセッション『現代に求められる「価値共創マーケティング」とは』に登壇された鹿毛康司氏の著書「「心」が分かるとモノが売れる」に出てくる「5人の親」の例が分かりやすいため、引用して紹介します。

出典:鹿毛康司 『「心」が分かるとモノが売れる』 (日経BP出版、2021)

ここでは「企業理念」と表現されていますが、価値共創マーケティングにおいては「共通した価値」と表現した方が分かりやすいかもしれません。

従来の組織構造では、「製品としては最高のものを作りました」「ブランドメッセージは最高のものを作りました」と、それぞれの部署は最高のパフォーマンスを発揮するかもしれません。しかし、顧客に対する愛情が共有されていなければ、「5人の親」の例のように、顧客がないがしろにされてしまう可能性があります。

組織構造の変化が必要となれば、マーケティング施策の実行に向けた大きな壁となるのは言うまでもないでしょう。

価値共創マーケティングの効果測定の方法

前述した2つの壁のうち、効果測定の難しさについては解決策もあります。

Metaでは会話量リフト調査やブランドエクイティに対する態度変容を調査できるソリューションが提供されており、価値共創マーケティングによって生み出されたUGCの効果などを数値化することが可能です。

これらの調査には実施に条件があるため、詳しくはFacebook Japan株式会社 営業担当にお問い合わせください。

価値共創マーケティングを行う上での大事な視点

最後に、価値共創マーケティングを長期的に大きな成果へとつなげるために重要な視点を4つお伝えします。

ブランド全体で共通した価値を持つこと

デロイトトーマツコンサルティング合同会社が実施したインタビューによって、価値共創マーケティングを成功させている企業の組織の在り方は、商品や企業文化、ガバナンスによって異なり、様々だということが分かっています。

しかし、共通点として、組織を横断して「共通した価値」を共有できていることが挙げられます。

某企業では、とある商品を企画・販売する際、営業、生産、R&D、マーケティングなど様々な部署から有志が集まってブランドのフィロソフィーやストーリーを作成していました。それぞれ業務での役割は異なりますが、軸になるフィロソフィーをお互い共有できているため、それぞれの担当領域で効率化を実現しながらも、顧客に寄り添った価値を提供できているそうです。

中長期的な視野を持つこと

価値共創マーケティングは短期的な成果は見えづらい特徴があります。企業のマーケティングは計測できるものに寄ってしまう傾向にありますが、計測できないもの = 価値がないわけではありません。近年ブランドエクイティ(ブランドの無形の資産価値)という概念が注目されていますが、先進的な企業の多くはブランドエクイティ向上を重視し、多くの時間やお金を投じています。価値共創マーケティングで生み出される価値や消費者への影響は一見わかりづらいですが、人の心を動かす性質がある以上、蓄積された感情の総量が閾値を超えた瞬間、必ず人々の行動として現れると想定されます。その時は、売上などの数値データとしても測れるようになるため、信じて進んでいくことが大事になってくるでしょう。

顧客を信頼して、寛容になること

顧客と一緒に価値を創り出すには、顧客のインサイトに寄り添う必要があります。それは時に今までブランドが許容していなかったことを許容せざるを得なくなるということです。

例えば、口紅を例に挙げてみましょう。多くの方が化粧をする際、自分の肌の色や肌質に合わせて複数のリップや口紅を重ねて使っているかと思います。その際、特に意図せず異なるブランドの商品を重ねることもあるかと思います。これはリアルな顧客のインサイトですが、基本的にブランドは他のブランドの商品と自分たちの商品を並べてプロモーションするのを嫌がります。化粧品のように肌に触れるものは安全性の観点から敬遠されるというのもありますが、例えばアパレルブランドでも、できれば自分のブランドで全身コーディネートしてもらえた方が嬉しいはずです。

しかし、価値共創マーケティングでは多種多様な顧客のリアルなインサイトの中で価値が創造されるものなので、顧客のインサイトを尊重する必要があります。全てを許容する必要はないですが、今までより寛大に、顧客を信頼して寄り添っていく必要がでてきます。

ブランドに対する「愛」を持つこと

価値共創マーケティングの成功には、マーケターがブランドへの「愛」を強く持っていることが重要です。消費者と同じ渦の中に身を置くこと、世界観に一致するクリエイターを見つけ出すこと、クリエイターを信じて尊重すること。全てブランドへの「愛」があってこそ、成すことができる地道な作業です。

こちらは前回の記事で紹介しているのでぜひそちらをご覧ください。
価値共創マーケティングとは?消費プロセスの変化や今後ブランドが求められることを解説!【House of Instagram レポート 第一弾】
メイベリン ニューヨーク流!価値を共創するパートナーの見つけ方【House of Instagram レポート 第二弾】】

まとめ

本記事では、価値共創マーケティングの実施がなぜ企業にとって難しいのかを解説しました。現場に近ければ近いほど、マーケターは価値共創マーケティングを始められないことにジレンマを感じるかもしれませんが、なぜ難しいのか、大事な視点は何かを理解しておくだけで今後の行動が変わっていくのではないかと思います。

実施にこぎつけたときには、ぜひ前回の記事のメイベリンニューヨークの事例やフレームワークを参考にして、顧客とともに新たな価値を創造していっていただきたいです!

価値共創マーケティングとは?消費プロセスの変化や今後ブランドが求められることを解説!【House of Instagram レポート 第一弾】
メイベリン ニューヨーク流!価値を共創するパートナーの見つけ方【House of Instagram レポート 第二弾】】

告知

本記事はイベント全体のほんの一部であり、紹介できなかった部分がたくさんございます。
House of Instagram Japan 2022のハッシュタグ「#インスタ公式セミナー」で検索いただくと、他セッション内容やイベント参加者のリアルな感想などが閲覧できますので、ぜひチェックしてみてください。

また、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社より「価値共創マーケティング」に関するナレッジレポートが公開されています。

「価値共創」について有識者や企業へのインタビューを通じて展開に向けた種々の仮説検証、調査がまとめられています。「価値共創」とは何か、なぜ今こそ取り組むべきかという問題提起に加え、ケーススタディを通じて取組みに向けた課題と実践アクションにも踏み込んでいます。ぜひご覧ください。

価値共創マーケティング―デジタルが可能にする顧客との新たな価値の創り方―
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/strategy/articles/md/value-co-creation-in-marketing.html

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