いまこそ再評価すべき! 新たな発見と出会えるディスカバリーエンジン「Pinterest」の魅力
2017/08/21
2010年にサービスをスタートし「ビジュアルブックマークツール」として広まった「Pinterest」。ソーシャルメディアラボでも2015年に取材インタビューをさせていただきました。そこから2年、SNSの勢力図はInstagramを中心に大きく変化。個人、企業双方のSNSとの関わり方が変わる中、Pinterestはどのような変化を遂げたのでしょうか。
今回は、以前X(Twitter)Japanに勤務し、2017年からPinterest Japanにジョインされた、ソーシャルメディアに精通する小串良輔氏にお話を伺いました。
Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑
- ■目次
- プロフィール
- プロダクト開発に注力した数年間
- 発見と出会うPinterest
- 他SNSと違う、Pinterestは本当の「インタレストグラフ」
- Pinterestは頭の中をすべて知れるツールになる
- Pinterestを企業やプロが活用する方法
- 話題の画像検索機能「Pinterest レンズ」の日本展開は?
- 人はもっとクリエティブになれる
1. プロフィール
小串良輔氏:ピンタレスト・ジャパン株式会社マーケティングマネージャー
2. プロダクト開発に注力した数年間
大久保:前回のインタビューから数年がたちましたが、その間、Pinterestは主にどのようなことに注力されていらっしゃったのでしょうか。
小串氏(以下、敬称略):ここ数年は地道にユーザーにとってのプロダクト体験の改善を繰り返していました。Pinterestが最初日本でサービスインした際は、言語対応やアプリ対応がまだまだ十分ではなく、正直狙った通りのサービス体験を提供できていませんでした。特に検索は日本語対応の質が低かったため、日本人ユーザーにとって役にたつピンを表示できない。Pinterestが提供したいと考える肝の部分が上手く使えなかったのです。
そこでカントリーマネージャー・定国の判断のもと、日本ではインターナルの整備、およびプロダクト体験の改善に人的リソースを割いていました。ただ時間をかけたこともあり、現在のPinterestはまさに我々の提供したいものを提供できるようになった。定国の言葉を借りると「ようやく人様に出しても恥ずかしくないプロダクトになった」状態が今です。
3. 発見と出会うPinterest
大久保:サービス的にも狙い通りの体験提供できるようになったとのことですが、実際Pinterestはどのようなサービスなのでしょうか。小串さんなりの考えを教えていただければと。
小串:個人的にはPinterestは「ディスカバリーエンジン」という言葉が合っているかなと思いますね。前回の中島のインタビューでもお伝えしていますが、SNSではないと思っています。例え話をしましょう。私はPinterestへ転職する時に髪型を変えたのですが、Pinterestがきっかけでこの髪型にしたんです。
当初はバッサリと切って、金髪ベリーショートみたいな髪型にしようと思っていました。しかしながらPinterestを使って、ダンスや、音楽、グラフィティ、ファッションなどさまざまな好きなものを集めた結果、ホームフィードに徐々にブルーノマーズなどが入ってきはじめたんです。Pinterestからすれば「こっちも好きでしょう?」みたいな感じで。
それに気づいた瞬間、「確かにそうだよな。どうせやるなら、ここまでやってみよう」と思い、現在の髪型のボードを作成。いつも行く美容院に、Pinterestのボード持って行って切ったんです。
大久保:「新たな出会い、発見を生み出すもの」みたいなものでしょうか?
小串:そうですね。Pinterestは良くも悪くもふわっとした提案をします。中島のインタビューではビジュアルブックマークツールと語っていますが、先ほどの「ディスカバリーエンジン」という言葉もたまに使っています。発見って自分で答えがわかっているものではない。答えのないものを見つけるお手伝いができるツールって意外とないんです。
4. 他SNSと違う、Pinterestは本当の「インタレストグラフ」
大久保:小串さん自身X(Twitter)からPinterestに移られたなかで、プロダクトの考え方や思想の違いなどを特に感じるポイントはありますでしょうか。
小串:私は興味関心で繋がる仕組みを表す「インタレストグラフ」という思想が結構好きで。Pinterestは「Pin」と「Interest」をくっつけたまさに「インタレストグラフ」ですが、前職のX(Twitter)も同じくインタレストグラフです。
根底は変わらないはずなのですが、僕ははじめてPinterestを使ったとき、この「インタレストグラフ」であることを強く感じたんです。はじめてPinterestを使ったのは2013年頃だったのですが、Pinterestで興味のあるスニーカーやダンス、音楽のボードを作っていると「X(Twitter)で全然こういう話していないな」と気づいたんです。
当時のX(Twitter)はプロフィールエリアに好きなものを書いて「なになにが好きな人つながりましょう」という全盛期。そこに私は、スニーカーや、ダンス、音楽ともちろん書いていました。ただ、自分のタイムラインには、それらに関わるつぶやきはなく、ほとんどが仕事柄関係のある人のエンタメ業界やメディア、映画、テレビの話ばかり。特にそういった業界の人は発信する量も多いというのもありますが、X(Twitter)はインタレストグラフになっていなかった。
大久保:確かに、アカウントを使い分けないとそうなっていきますよね。
小串:その時改めて「Pinterestはまさにインタレストグラフだ!」と思ったんです。フォローするにしても、X(Twitter)などだとその人のすべての情報が流れてきてしまいますが、Pinterestでは、好きなボード、共通で興味のあるボードだけをフォローできる。つながりのためでなく、本当に「好き」のためのツールなのだと感じました。
5. Pinterestは頭の中をすべて知れるツールになる
大久保:その違いを適切に理解し、使い分けている方はいらっしゃるのでしょうか。
小串:過去に見た印象的な例ですと、音楽ファンの方がとても面白いことを言っていました。音楽ファンといっても、好きなアーティストが使っている楽器に関するコミュニティの人で、私が出会ったのは、ベースのサンダーバードが好きな人が集まるコミュニティの人でした。その人は「アーティストもやってほしい」と言っていました。
アーティストがどんな楽器を使っているかはもちろん、どんな楽器が好きで、どんなアーティストの曲を聴いているかといった音楽にまつわる様々な考えや情報がそこに集まってくるから。簡単に言えば何を考えているのかを知りたい。頭の中をのぞいてみたいというわけです。
この人はどんなものに影響されたのか。どういうものに触れているのか。どういう人ファションに興味があるのか。ファンはそこまで知りたいんです。ただその人が言っていたことはとても示唆的で、Pinterestってその人の頭の中をのぞくツールになりうるんです。これはソーシャルメディアでは絶対に再現できない面白い見方だと思いますね。
6. Pinterestを企業やプロが活用する方法
大久保:ソーシャルメディアラボでは5月に「Pinterest女子が語る、Instagramとの使い分けのススメ」という記事をアップしました。まさにInstagramとPinterestをうまく使い分けているという話だったのですが、Instagramと比較した場合Pinterestはどのような役割になると思われますか。
小串:Instagramは良くも悪くも等身大なコンテンツを提供する場だと私は考えています。ユーザーが増えいろんな人が気軽に投稿するようになったからこそ、投稿の質は等身大なものが多い。無論、ファッションやブランドの人は作り込んだコンテンツを出していますが、Instagramの場合Instagram内で完結する必要がある。そこは他のSNSと比べ大きく異なるポイントだと思います。
大久保:なるほど。Pinterestはそういった、企業やブランドが活用するといった使われ方はあるのでしょうか?
小串:今後ユーザーが増えていけば、かなり可能性のある分野だと思います。例えばフォトグラファーのように発信するものがある方であれば、画像だけでなくURLもつけてトラフィックを彼らに返すこともできる。逆に一般企業のように発信するものがそこまでない場合も、アカウントを持つだけでも価値が出てくると思っています。運用は必要ありません。サイトにピン保存ボタンを付けていただくだけでいい。
自分でコンテンツあげなくても、「この商品いいな」「この家具いいな」と、ユーザーが自分ボードにピンしていけばいい。するとその企業にまつわるコンテンツがどんどんPinterest上へ増えていく。それがアルゴリズムで最適な人に流れ、再度ピンされ……という流れが自然と生まれ、コンテンツが一人歩きしてくれる。企業はサイト上のコンテンツをピンしやすいように作るだけでいい。それだけで、企業サイトへのトラフィックを生み出せるのです。
大久保:なるほど、これまでのソーシャル運用とは異なる企業との関わり方ができそうですね。運用負荷なく、コンテンツが一人歩きしてトラフィックを集めるというのもとても魅力的だと思います。
小串:今、ほとんどのソーシャルメディアはユーザーと情報の接点にタイムラインを用いています。すると、ユーザーがログインした瞬間に、最新のコンテンツが見られるよう、企業は毎日コンテンツを出していかなければいけない。Pinterestはそんな必要がない。アカウントを作って、1週目に5個ピンをしたけれど、次の週は何もしなくても全然問題ない。
Pinterestはタイムラインという形ではなく、その人のインタレストに基づいて情報を提供するからです。
7. 話題の画像検索機能「Pinterest レンズ」の日本展開は?
大久保:Pinterestといえば、今年の2月にベータ版をリリースされた画像検索機能「Pinterest レンズ」が注目を集めましたが、その後ベータ版に対する反応はどうなのでしょうか。
小串:Pinterest レンズは現状Android, iOSアプリを米国内でリリースさせていただいており、幸いかなり好評いただいています。画像検索ツールなどで類似画像を検索することに力を入れはじめている会社さんもありますが、Pinterestはサービスリリース時からイメージに基づくインスピレーションのプロダクトに特化してきた、画像を扱うプロでもあります。精度面でもまだまだ向上は必要ですが、頭一つ抜けているのではないかと思いますね。
大久保:とても魅力的ですし、Pinterestの強みも発揮されそうです。日本で展開するご予定は?
小串:残念ながら、現状未定としか申し上げられません。Pinterest レンズがあれば、Pinterestがリアルの中でも存在感を発揮しますし、あらためてPinterest内にピンされている画像が価値を発揮することになる。正直中にいる我々としても、早く日本でも出したいという気持ちで一杯です。
8. 人はもっとクリエイティブになれる
▲オフィスの様子
大久保:数年間の開発期間や、日本でのSNSの普及、そしてPinterest レンズの期待を含め、改めてPinterestは日本で大きく価値を発揮できるのではないかと感じました。今後が楽しみだなと思うのですが、目指していきたいことなどを教えていただけますでしょうか。
小串:改めて、もう一度Pinterestの価値を発信していかなければいけないと考えています。前から使ってくださっている方も、初めての方も含め、今だからこそ伝えられる価値があると思っています。日本の方々はもともと集めるという行為が好きな人がとても多い。ちょっと失礼な話かも知れませんが、好き人が多いですし得意でもあるので、Pinterestはとても相性がいいはずです。
Pinterestのミッションには「Help people discover and do what they love」という言葉があります。つまり、「人々が好きなものを発見したり、やってみようと思えることをお手伝いしよう」ということ。好きなものややってみたいこととの出会うことで、人はもっとクリエイティブになれる。そのためにPinterestがもっとお手伝いできることを増やしていきたいと思いますね。