Pinterestにみる、企業とユーザーの関わり方の未来

2017/10/02


今回は、PinterestとX(Twitter)を活用してギターのファンコミュニティを運営するもじょさん、そして先日お話しをお伺いしたピンタレスト・ジャパンのマーケティングマネージャーである小串良輔氏にお話を伺い、これからのビジネスにおけるPinterest活用の可能性を探りました。

Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑

    ◼︎目次

  1. 企業のPinterest活用事例
  2. 企業にとってはボードの中身以上にラベリングも大切になってくる
  3. モデルやタレントもポートフォリオにPinterestを
  4. 企業が発信するのではなく、ユーザーに発信してもらうための情報を提供する
  5. コアな層に強く刺すことで、界隈での認知度を上げる
  6. Pinterestがアプローチするコアな強いコミュニティ

1. 企業のPinterest活用事例

大久保:現在企業でPinterestを活用されていらっしゃる事例はあるのでしょうか?

小串氏(以下、敬称略):徐々にですが、登場してきています。たとえば「FLYMEe」というオンラインの家具屋さん。FLYMEeでは「インダストリアル」「白」といったテーマごとにボードを作り、商品一覧としています。家具業界はたくさん商品があっても物理的にすべてを見せることが難しく、オンラインでどのようにすべての商品を見せられるかが重要になる。そこに一覧性のあるピンタレストはとても相性がいいんです。

また家具の場合、世界観を言葉で説明するのが難しい。たとえば「インダストリアル」や「ブルックリン風」といっても考えるイメージが人によって異なる。そこでボードを作ることで「FLYMEeが定義するインダストリアルはこういうもの」と伝える意味も持つんです。



 

▲「FLYMEe」の様々な切り口のボード

もじょさん:その点はファッションなども近いかもしれませんね。たとえば「ノームコア」と言われても「どこまでがノームコアなのか」「究極のシンプルとは」と定義が曖昧になる。

普通にGoogleで「シンプル」とかで調べても人によって感じ方が違うので狙ったシンプルさを見つけづらい。その点、定義づけられた世界観をブランドだったり企業だったりが提案してくれると、ユーザーも「これがこの企業の考えるシンプルなのか」と理解できますよね。

2. 企業にとってはボードの中身以上にラベリングも大切になってくる

大久保:それは興味深いですね。言語化できていないものもビジュアルだと把握しやすい。逆にビジュアルが並ぶことで徐々に言語化される。どのように言語化するかによって意味づけや価値も変わってきそうですね。

小串:私は「言語化されること」と「ビジュアライズされること」は一連のものだと思っています。はじめに言語化できないけれど、好きなものを集めていくフェーズがあり、そのあと集めたものを並べる中で言語化していくフェーズがある。家具の場合は言語化されるフェーズにいまきているのだと思っています。

自分の中で「同じ」だと思うものを整理していくと、ある程度共通項が見えてきて、それを誰かに知ってもらうために言語化が必要になってくる。この言語化するプロセスはとても大切で、大久保さんのおっしゃるように名前一つでそのものの認識は変わりますし、外部からの見られ方も変わってきます。

企業にとってはボードの中身を作り上げていくことも大切ですが、ボードのラベリングもとても大きな意味を持つのです。

3. モデルやタレントもポートフォリオにPinterestを

大久保:現在導入されていないものでも構わないのですが、他にもPinterestを事業として利用すると価値を出しやすそうな事業などはあるのでしょうか?

小串:私が最近考えているものですと、タレントさんやモデルさんなどがポートフォリオとして活用されるのも1つの手だなと思っています。タレントさんやモデルさんの写真って、世の中に出ていない写真がたくさんあるといいます。撮影はするけれど、提案する相手に合わせて使い分けるので、使わないまま終わるものがたくさんある。

それらをすべてPinterestに置けば良いと思うんです。ファンはその写真を欲しがりますし、ビジネス的にはPinterestのレコメンド機能を通して、今までリーチしていない層にもリーチができる。ポートフォリオのすべてがPinterestにあれば、企業や代理店なども自分達の雰囲気に合うタレントなどが言語化できていなくても、ビジュアルで探すことができる

訴求したいポイントごとにボードを切り分けていけば世界観が崩れることも無い。一度作っておけば、あとは勝手にどこかでマッチングされていくんです。PinterestはSNSのように運用し続けなければいけないわけではないので、タレントさんとしてもとてもいい場所だと思いますね。

4. 企業が発信するのではなく、ユーザーに発信してもらうための情報を提供する

大久保:もじょさんのインタビューでは、PinterestはX(Twitter)と相性がいいという話がありました。小串さんはその点どのように考えられますか?

小串:基本的には私も同意見ですね。Pinterestはコミュニケーションを効率化しよりリッチにするツールです。ですからコミュニケーションありきのX(Twitter)のようなツールと一緒に使うことで機能しやすいと思いますね。

たとえば、企業には眠っているコンテンツがたくさんあるはずです。それを発信するとなると、どこで誰にリーチするかを考えなければいけなくなりますが、アーカイブするだけなら企業サイト内でもPinterestでもいいわけです。Pinterestであればユーザーがいて、自然に拡散していく土壌がありますから、最初少しだけ手間をかけてアーカイブしておけば、後は勝手に好きな人が発信してくれるはずです

もじょさん:本当その通りだなと思います。僕の場合、PinterestはX(Twitter)で発信するための素材探しをする場としても活用しています。ただ普段は情報量が多くないので、新しい情報が来れば絶対発信したいと思っています。そのために企業側にはもっと情報発信ほしいですし、企業がボードに情報をまとめてくれたら、間違いなく片っぱしからX(Twitter)で発信していきます。

僕のようなコアなファンがいる分野であれば、企業自ら発信しなくてもアーカイブしてくれれば、後はファンがファンに向けて発信してくれるんです。その発信の方が広告や企業のSNS投稿より確実に盛り上がる。発信するための活用では無く、発信はユーザーやSNSに任せてPinterestはアーカイブする場としてだけ活用しても十分に価値を発揮するんです

5. コアな層に強く刺すことで、界隈での認知度を上げる

大久保:コアなコミュニティがあれば、情報だけ提供し発信は任せてしまうというのはソーシャルメディアマーケティングならではですね。

小串:コアなコミュニティ活用するという意味では、先日X(Twitter)上で話題を呼んだ資生堂ANESSAの事例は本当に上手いと思います。コスプレイヤーという特定のコミュニティに深く刺さるコンテンツを上手く作り出したんです。

これまでニッチな層へのアプローチはあまり見向きされなかったのですが、アプローチにそこまでお金がかからない上、エンゲージメントが高いこともあって、ここは狙い目だと気づいてアプローチして行ったんだと思いますね。

もじょさん:彼らは写真を撮られ慣れているので、その写真を使えばかなりそれっぽいものができる。割と色が白い人も多いので、彼らが使っているなら本当に焼けないだろうなというイメージを持たせやすい。そして、彼らのように本気で好きな人たちはコミュニティ化しているので、どこかに引っかかれば、その界隈では一気に有名になるんです。

一般的には爆発的なバズを生むようなキャンペーンがいいものと思われがちですが、ピンポイントなアプローチでもその界隈には一気に広げることができる。趣味の尖った所の人は、とがっているからこそリーチされる情報が少ない。そこにリーチしてくれれば自然と発信・拡散されていくことを証明したような企画でしたね。

6. Pinterestがアプローチするコアな強いコミュニティ

大久保:最後に、Pinterestをビジネスに活かせるのではないかと考える人にメッセージをいただけますでしょうか。

小串:X(Twitter)と使い分けることで相性がいいという話にもなったように、PinterestはあくまでSNSではありません。だからこそ既存のSNSと上手く組み合わせることで価値を増しますし、役割もはっきりとしていく。

そして、Pinterestは深くとがったコミュニティほど相性がいい。SNS単独では深すぎてコミュニケーションをとる上でもそれなりに努力が必要だったところにも、Pinterestを入れ込んであげることで、円滑につなげることができるんです。

これからは企業さんなどがこれまでリーチするのが難しかった人々へリーチするマーケティングの舞台にもできると思っていますし、その余白もまだある。コアに使いたい個人も、そこへアプローチしたい企業もPinterestを今後さらに活用していっていただきたいですね。

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この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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