消費者の隠れたニーズを掘り起こす。ソーシャルリスニングのやり方「インサイト調査」を解説

2021/09/08

今回はソーシャルリスニングの手法の一つである、インサイト調査のやり方を解説します。(*本記事の分析対象媒体はX(Twitter)上の口コミデータです)。

この調査方法を理解することで、ソーシャルリスニングを通じてどのような示唆が得られるのか、実際どのような分析を行えばいいのかが具体的に分かり、日々のSNS運用やマーケティング活動に役立つ示唆を得るための調査方法を身につけることができます。

    ■目次

  1. 以前の記事の復習:X(Twitter)で得られるデータの特徴
  2. インサイトとは
  3. インサイトのマーケティング活用
  4. インサイトの見つけ方:新奇事象に目をつける
  5. インサイト調査の例1:コロナ禍で見受けられたマスクに関する消費者の声
  6. インサイト調査の例2:一見すると意外だが、味を損ねたくない消費者の工夫
  7. まとめ

以前の記事の復習:X(Twitter)で得られるデータの特徴

  1. データの主体がテキストデータである
  2. いいねやリツイートなど口コミを拡散する機能がある
  3. アクティブアカウント数が多く、多様なユーザーからの声を収集できる
  4. 秒単位の時系列データを取得できる

 
X(Twitter)は表現方法の主体がテキストデータであることから、消費者のぽろっと出る本音や嗜好に関して分析できるデータが収集できる可能性が高く、こういった目的のもと調査する媒体として適しているといえます。

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インサイトとは

初めに、そもそもインサイトについて解説します。

私たちはiPhoneのようなスマートフォンが登場するまで、携帯電話でインターネットの便利さには気付いていませんでした。しかし、実際に登場すると「そうそう。これが欲しかった!」と強く感じることがあります。このように、提示されるまで人々に認知されてなかったが、実は、世の中に求められていたモノやサービスが日常生活には多く存在します。

インサイトとは、こういった消費者の中でまだ顕在化していないものの、買ってみたり使ってみたりしたくなる、無意識的な欲求や不満を指します。

インサイトのマーケティング活用

企業が人々のインサイトに響く訴求を行うことで、より認知や購買に繋がるマーケティング施策が生み出しやすくなります。

例えばファブリーズは「手間をかけずに除菌や消臭がしたい」というインサイトをもとに開発され、大ヒットしました。他にも、AKB48は「会いに行けるアイドル」という従来のアイドル像を覆すアイドルファンのインサイトを捉えた訴求を行い、大ヒットしたと考えられます。

こうしたインサイトは特に一般消費財など口コミが出やすい商品、サービスと相性が良く、良質なインサイトが発見できる可能性が高いです。一方で、口コミが出にくい商材は自社の商品に対する直接的な口コミが極めて少ないため、基本的には相性が悪くインサイトの発見が困難です。

ただし、そういった商材であっても、その商材が提供している価値(例えば、飛行機であれば「長距離を短時間で移動する」といった価値)を軸に調査を行うことで、インサイトが発見できる可能性があります。

インサイトの見つけ方:新奇事象に目をつける

上述の通り、インサイトとは消費者の中に潜在的に存在しているものであり、顕在化していません。つまり、ただ口コミを調査し、そこから得られるテキストを機械的に解析しても、インサイトが発見できる確率は一般的に極めて低いといえます。

一方、X(Twitter)を分析していると、目を引く行動を取るユーザーのツイートがたまに発見できます。こうした行動は、まだ一部の消費者しか行っていない場合がほとんどですが、そこから読み取れる心理からインサイトを獲得することができます。これらを新奇事象と呼びます。

新奇事象からインサイトを読み解く際には「ドライバー」「シーン」「バックグラウンド」という3つの構成要素、及びこれらの要素から生じた気持ちや感情(エモーション)を分解して捉えることで、どういったインサイトがあるのかを読み解くことができます。

インサイト調査の例1:コロナ禍で見受けられたマスクに関する消費者の声

実際に新奇事象からインサイトを読み解く例を2つ紹介します。最初の事例は、コロナ禍でマスクをずっとつけている状態であることを逆手に取り、いつでもどこでもマスクの下で表情筋を鍛えるための変顔体操ができるという新奇事象です。

また、この口コミを行っているユーザーの普段の口コミから、この方は中道(女装をしている男性)な生き方を選択していること、愛煙家であること、中道ゆえに人一倍美容意識が高いことが読み解けました。

こうした情報をもとに改めてこの「マスクをつけながら表情筋を鍛える」という事象に注目すると、「自粛生活で油断すると顔の筋肉が衰えてしまう」というバックグラウンドのもと、「マスクをつけている時」というシーンで、「表情筋を鍛える」というドライバーにより、「コロナ禍対策をしながら表情筋を鍛えられて嬉しい」という感情が芽生えているであろうことが読み解けます。

ここから得られるインサイトとしては「ストレスを感じるマスク着用に対してメリットを見出したい」ということが考えられます。

インサイト調査の例2:一見すると意外だが、味を損ねたくない消費者の工夫

次の新奇事象は「果汁100%チューハイにアイスの実を入れて飲む」という事象です。また、この口コミを行っているユーザーの普段の口コミから、この人の趣味は仕事の後のパチスロ、お酒(特に日本酒)であること、ラーメンなどのジャンキーな食事が中心であるといったことが読み解けました。

こうした情報をもとに、改めてこの「果汁100%ジュースにアイスの実を入れて飲む」という事象に注目すると、「氷でチューハイの味が薄まるという経験を多々している」というバックグラウンドのもと、「自宅でのリラックスタイム」というシーンで、「アイスの実を入れてチューハイを飲む」というドライバーにより、「ゆっくり飲んでも味が損なわれなくて嬉しい」という感情が芽生えているであろうことが読み解けます。

ここから得られるインサイトとしては「お酒の味が薄くなるのが嫌だ」ということが考えられます。

まとめ

 

今回はソーシャルリスニングにより得られる示唆について、X(Twitter)上で観測される新奇事象に着目することで消費者のインサイトを分析する手法について紹介しました。

次回は、X(Twitter)におけるプロモーションに反応したユーザーを分析する手法について解説します。

■参考文献:

  • 桶谷 功『インサイト』, ダイヤモンド社, 2005年
  • 大松孝弘,波田浩之『「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~』,宣伝会議, 2017年
  • 松本 健太郎『なぜ「つい買ってしまう」のか?「人を動かす隠れた心理」の見つけ方』, 光文社新書, 2019年

 
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